恩義 -姦しい諜報-④
「ワミールって今『ボラムス』を護ってるワミール?何であの人が?」
ハルカの疑問ももっともだ。ルサナもほとんど接点がないので言葉に表すのは難しいがクレイスだって彼との関わりはそれほどない筈だ。
つまり反対される原因が全くもってわからないから3人とも困惑してしまった。
「・・・だから言いたくなかったんだよな~。おいノヴァ、これはお前の責任だからな?」
「・・・・・だったら責任を全うする為に詳しく教えて貰えるかしら?」
「・・・その喋り方腹立つなぁ。おらっ!!」
「ぎゃああぁっ?!」
時折彼女達がじゃれ合う姿は何度か目撃していたので今もチュチュがノーヴァラットの大きすぎる胸を鷲掴みした点に驚きはない。ただ手指が思いの外めり込んだのを目の当たりにしたのでその柔らかさと重量は少しだけ気になるところだ。
「チ、チュチュさんっ?!わ、私達は本気なんですよぉっ?!」
確かにこっちの方が話しやすい、というか可愛げがある気はする。ルサナは気弱なノーヴァラットが頑張って意見を述べる姿に少しだけほっこりするとチュチュも満足そうに頷いた。
「ああ、わかってる。でもワミール様も本気なんだ。恐らくあの御方は全力でクレイスの王位継承に反対するだろうな。」
「そんなに?何か恨みでも買ったっけ?」
この話にはハルカも違和感を覚えたのだろう。大いに小首を傾げているがチュチュもそれ以上口を開く気配はなさそうだ。ならばもはや迷う理由はない。
「・・・よし!それじゃ早速向かいましょう!!ノーヴァラット、何かあったら『ボラムス』に呼びに来てね?!」
そう言ってルサナはハルカの手を引くと部屋を後にする。そして空の見える場所にやってくると腰の後ろから鮮血にも似た刃を左右から生やした後、蝙蝠の翼のような形に整えて黒く固めた。
「おお~!そういえば飛べるようになったのよね?楽しみだわ!」
「ふっふっふ~!任せて!それじゃいくよ?!」
ちなみに翼を顕現させるとどうしても腰の後ろが破れてしまう為その部分には隙間が作ってあり、普段は蝶結びの帯で隠れている。これはアルヴィーヌやイルフォシアの背中が大きく開いた衣装から発想を得てルサナ用に仕立て直してあるのだ。
最近ではすっかり飛び慣れているので問題はない筈だった。人を担いで飛んだことがないという事実以外は。
自分の翼ではあまり長距離や速く飛ぶのは難しいので最初はまず両足でしっかりと地面を蹴り、高く跳ぶ事で高度を稼ぐのだ。そこから翼と体勢を整えて『ボラムス』のある西南西に舵を切る。
うむ。脳内では完璧だ。
「・・・あれっ?!ハルカちゃん・・・重っ?!」
「嘘っ?!私そんなに太ってないわよっ?!」
だがルサナの翼は薄く『天族』が持っているものより一回り以上小さかった為、浮力の不足は辛うじて滑空とよべる落下に姿を変えていく。
それはまるで流れ星のようだったとたまたま目撃していたシャルアは後ほど語ったそうだが2人も強者なのだ。地上へ激突する前にハルカが高い木に目がけて飛び降りると制御を取り戻したルサナも旋回して再び彼女を抱きしめる。
そうして互いの勢いを殺しつつ地上へ近づくと最後は2人でしっかり大地に着地を決めていた。
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