恩義 -姦しい諜報-③
実は人間というのは痛みよりも痒みの方が我慢できないらしい。
「ったく・・・おいノヴァ!二度とこいつらに諜報活動なんて任せるんじゃないぞ?!城内で変な噂になってるんだからな?!」
「あら?私がお願いした訳じゃないわよ?ね?ルサナ?」
この時どう答えればよいかわからなかったルサナは苦笑いを浮かべるに留めるがとにかく任務は達成されたのだ。一応チュチュが逃げ出さないよう警戒しつつ成り行きを見守っているとハルカは勝ち誇った表情で自白を急かし始める。
「さぁさぁ、そんな事より早く反対派の人間を教えなさい。言っておくけど出まかせだったら後からもっと激しく責め苦を与えるわよ?」
「はいはい。でも1つだけ教えてくれ。それを聞いてどうするんだ?」
いよいよ目的が達成される、その嬉しさに心を弾ませていると最後の最後に意外な質問をしてきたので3人は顔を見合わせた。
「・・・穏便に?」
「・・・説得して?」
「・・・反対するのを止めてもらう?」
「何でそんなにふわっふわなんだよ?!さては何も考えてないな?!」
恐らくそんな感じだろう。そう思って周囲に合わせるとハルカはもちろん、ノーヴァラットでさえも疑問形で答えてしまったのだからチュチュの突っ込みにも返す言葉がない。
「でもでも!!クレイス様の王位継承に反対されると国内外で不和が生じるから何とかしなきゃって思ったのは間違いないの!!ね?!ノーヴァラット?!」
「そ、そうよ!彼は『トリスト』の王になる事で絶対的な力を手に入れるのよ!!そうすればきっと・・・」
「ほう?きっと何だ?言ってみろよ?」
そういえば何故彼女はクレイスに仕えているのだろう?確か彼女の夫?恋人がバルバロッサでその敵討ちの為に近づいてきたような記憶はある。
だがそれ以上詳しい事情を知らなかった為、2人のやり取りを見てふと思い出すとチュチュに睨まれたノーヴァラットはバツの悪そうな表情で顔を逸らしてしまった。
「・・・バルバロッサ様が、喜んで下さるわ。自分以上の魔術と魔力を扱う彼の栄達をね。」
「・・・ふ~~~ん?」
何だろう?自分より10歳以上年が離れているのもあるのか、大人びた雰囲気が漂うとルサナは口を挟めなくなっていく。それは自分と同い年のハルカもそうである筈なのだが『暗闇夜天』の下でしっかり修業をしてきた彼女はあえてそれを押し殺したようだ。
「チュチュ?今はそういう話じゃないよね?さっさと下手人を教えないと笑い死にするまで拷問するわよ~?」
「・・・ワミール様だよ。」
「「「えっ?!」」」
しかしチュチュもそれ以上追及してくる気配はなく、さらりと名前を上げると流石に3人は驚愕の声を漏らさずにはいられなかった。
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