クレイスの憂鬱 -王と王-⑯
「ジェリーマさん、少しお待ちください。カズキ、クレイス、ちょっとこちらへ。」
ショウも限界を迎えたのだろう。手招きしてクレイス達を呼ぶと4人は犯罪組織の長を前に堂々と相談を始めてしまう。
「カズキ、今回ばかりは言わせて下さい。無茶が過ぎます。ヴァッツですら不可能だと判断しているんですよ?」
「馬っ鹿野郎。俺達の攻撃で相手に手傷は与えられるんだ。だったら後は当てるだけだろ?」
「それが難しいんだけどね・・・僕はカズキの事だから何か策があるのかなって思ってたんだけど違うの?」
「おう。これにはクレイスはもちろん、ショウにも協力してもらおうと思ってたんだ。いいか?」
こうして敵前で即興の作戦会議が始まるとヴァッツも耳を傾けながら不思議そうに小首を傾けている。
その内容はざっくりいうとカズキが囮に、ショウが一瞬の横槍を入れる事で生まれる隙にクレイスが魔力を全て乗せた最高速の一撃を放つという滅茶苦茶なものだ。
「えぇぇぇ・・・行き当たりばったり過ぎない?」
なのでつい本音を漏らしてしまうがカズキは至って真面目に諭してくる。
「何言ってんだ。あのヴァッツもどきに唯一触れそうな可能性がこれなんだ。もちろん俺も囮を演じつつ一撃は狙っていく。ショウもそのつもりで頼むぜ?」
「・・・私はあまり戦いに参加したくないのですが・・・」
だがそこまで戦いをかき回してもこちらの攻撃を当てる自信はほとんどない。もし先程のようにジェリーマが油断していて、尚且つクレイスもありったけの魔力を解放して飛べば無くはない、のか?
「ねぇオレは?オレも何か手伝えない?」
更にそこへヴァッツが目を輝かせて口を挟んでくると3人は顔を見合わせる。どうやらクレイス達が協力して相手を倒そうとしている雰囲気にあてられて参加したい、自分も仲間に入れて欲しいといった様子だ。
「・・・ヴァッツが加わるとそれだけで終わりそうだしなぁ。ショウ、何かいい方法はないか?」
それでも彼を退け者扱いしたくないカズキはとんでもない無理難題を押し付けるとショウも顔の傷をわかりやすく歪めながら思案に暮れる。
「そう、ですね・・・・・いっそのことヴァッツにジェリーマの片足を掴んでもらうのはどうでしょう?3人だけの動きではかなり可能性は低そうですし。」
しかし投げやりとも呼べる内容にはクレイスですら唖然としてしまった。確かにそれなら相手の動きを確実に止められるし、こちらの攻撃も絶対に当たる筈だがそれで良いのか?
「うん!わかっ・・・」
「待て待て!それじゃこうしよう!!」
やはりこの提案には賛成できなかったのだろう。
カズキが慌てて止めに入ると同時に修正した作戦を立案するとショウは甚く気に入ったのか、非常に陰のある笑みを浮かべたのでクレイスも苦笑いを浮かべつつ妥協点としては申し分ないなと心の中では感心するのだった。
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