クレイスの憂鬱 -王と王-⑬
「おいカーテル、その言い草だとジェリーマを知ってるな?しかも詳細に。」
何故彼らが緊張した空気を作り出したのか。少し遅れて気が付いたクレイスも切り替えると影に半分沈んだカーテルは笑みを浮かべて語り出す。
「だったらどうする?」
「力尽くで聞き出す。」
「ちょっとカズキ?!」
放っておけば何が起こるかわからない。それを察してすぐに制するがカーテルの挑発は止まらない。
「ではこの拘束を解け。そして戦って口を割らせてみろ。」
「おっしゃ!ヴァッツ、そいつを戻してやってくれ!!」
「ぇぇぇ・・・いいの?」
ヴァッツでさえ戸惑う程の思う壺だったがショウも止まらないと判断したのだろう。仕方が無いと言った様子で頷くとカーテルは影からせり上がって両足をしっかり床に付ける。
「ここでは狭すぎる。ついて来るがよい。」
「いいぜ。がっかりさせんなよ?」
本当に大丈夫だろうか?クレイスは念の為奴が逃げないよう警戒しながら後に続くと一行は小規模な訓練場へと辿り着いた。
「ところでクレイス、カーテルはそれ程の猛者なのでしょうか?」
そして2人が中央で向かい合い、戦いが始まる直前にショウが不思議そうに耳打ちしてきたのでクレイスも改めて彼の様子を観察する。
「・・・弱くはなさそうだけど・・・カズキに勝てるとは思えないよね。でも武人なら戦って散る事を考えたりしてるのかも?」
「ふむ・・・・・」
もしくは口を割る前に自害でも考えているのか。しかしそれならもっと隙をついてくるはずだ。ショウもカーテルの狙いがいまいちわからなかった為カズキに任せる形を取ったようだがそれはある意味大正解だったらしい。
「では・・・最初から全力で行くぞ?」
「・・・あっ?!?!?気を付けて!!!そいつがジェリーマだっ!!!!!!」
何故なら彼の体は一度見た事のある白く濃い煙に包まれると次の瞬間には現在のヴァッツと同じ姿へと変貌を遂げていたからだ。
「何ぃっ?!大当たりじゃねぇかっ!!ヴァッツ!!手を出すなよ?!」
なのに戦闘狂は喜び勇んで声を弾ませているのだから呆れて顎が外れそうな程口を大きく開けてしまった。
「良いのか?私はむしろお前達4人全員を相手にしても良いのだぞ?」
不味い。先程の邂逅と違い、今度は現在の4人に変化する術を身に着けたジェリーマに太刀打ち出来るだろうか。そう思ったクレイスは考えるよりも早く助太刀の構えに入ったのだがカズキからは余計なお世話と言わんばかりの怒気が放たれた。
「あのねぇ?!ヴァッツ相手に一人で何とかなる訳ないでしょ?!」
「ばっか野郎!!今回は相手を殺していいんだぞ?!立ち合い稽古とは違う所を見せてやるぜっ!!」
「ぇぇぇ・・・オレ、殺されるの?」
「う、う~ん・・・そ、そうですね。でしたら後ろを向いておく、というのはどうでしょう?」
そのやり取りに誰よりも衝撃を受けたヴァッツがとても気落ちしていたのでショウも苦肉の策を提案しているが今は後回しだ。
「さて、戦う準備は良いか?私も早く力を振るいたくてうずうずしているのだ。」
未だに素性も素顔もわからないジェリーマがヴァッツの力を模した時、どれだけの強さを発揮するのだろう。カズキ程ではないにしても気になっていたクレイスも深呼吸を2度繰り返した後、静かに構えて様子を探るのだった。
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