クレイスの憂鬱 -王と王-⑫
「・・・悪い事は言わないわぁ。ジェリーマを詮索するのは止めてぉきなさぃ・・・」
闇に消える前、何も情報を漏らさなかったマッドメンが唯一喋った内容に不安を覚えながら今度は軍部の詰め所へ足を運ぶ。
というのもカーテルも将軍の位についており、現在はこの場所に滞在しているらしい。犯罪組織は『リングストン』に相当深く根を張っているという事か。
「ところでヴァッツ、『麻薬』ってのは吸うとどんな感じになるんだ?お前みたいにぶっ倒れるようなもんなのか?」
ショウが再び国王とアンの名が記されている証書を見せびらかすように先頭を歩く中、ふとカズキが意外な質問をしていたのでクレイスも不思議と興味から黙って見守っているとヴァッツは少し悩みながら答えてくれる。
「えーっとね、あれはオレの体がびっくりしちゃっただけで普通は頭と体が切り離されたような感じになると思うよ。」
「ほう?意識を失うとかはないのか?」
「・・・一応聞くけどカズキ、まさか『麻薬』に興味あったりするの?」
かなり詳しいやり取りをし始めたのでつい気になって口を挟むとこれには更なる意外な理由が隠されていたらしい。
「ねぇよ。でも俺ってすぐ妙な術に嵌っちまうからな。『麻薬』ってのもある程度知っておこうと思ったんだよ。なぁヴァッツ、これを吸い込んじまったらどうすればいい?」
とても説得力のある答えにはこちらも頷くしかない。そして彼と一緒にその対処法もただただ我慢するしかないという話を聞き終えるとカーテルがいるであろう部屋に到着する。
ところが都市長の邸宅と違い、今回は周囲に警戒した衛兵達が距離を置いてずっとこちらを見張っているのだ。彼らはカーテルの命令と国王の証書の軋轢に迷った挙句、中間として今のような形を取っているらしい。
「失礼します。貴方がカーテルさんですね?」
「・・・赤毛か。それにアミール。王に取り入ってこの国を滅ぼそうとする反逆者達め。全軍、こいつらをひっ捕らえよ!」
「お~面白れぇ。やってみろ。言っておくが俺達に危害を加えようってんなら無傷じゃ済まさねぇぞ?」
犯罪組織の長という立場を併せ持つから余計にややこしい。カーテルは将軍らしく『リングストン』を盾に命令を下すとカズキも狂喜を放って警戒する。すると衛兵達は再び困惑から武器を構えるだけに留めるのだから埒が明かないと考えたのだろう。
「カーテルさん、貴方が『暗殺』組織の長だというのは後ほど詳しく聴取します。今はジェリーマの居場所と彼の力について知っている事を全て教えてください。」
そこでショウが衛兵達にもわかりやすいよう彼の正体を告げつつ本題を尋ねると周囲の視線はカーテルに集まる。ただ彼もそれなりの期間を将軍として過ごしている為誰もが真偽を判断しかねている様子だ。
「・・・知らんな。そんな名前は聞いた事もない。」
だから当然のようにとぼけてきたのでこちらもヴァッツに耳打ちして彼の下半身を足元の影に落とすがやはりマッドメンと同じように動揺する素振りは見せない。
「・・・これが大将軍の力か。しかしこの程度では・・・」
それどころか気になる発言をこぼした事でショウとカズキが突然雰囲気を切り替えると彼への本格的な尋問が始まった。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




