クレイスの憂鬱 -王と王-⑩
『暗殺』や『麻薬』といった長達はマルタゾンに居を構えているそうだが今回の会合によって全員がこの地に集まっているので一網打尽という意味では打って付けだ。
クレイス達は『賭博』の長ハークートゥを捕えに向かうと一緒にいた『酒』の長マハムも同時に拘束、ジェリーマの居場所やその素性について簡潔に質問するが大した情報は得られなかった。
「やはりカーテルかマッドメンに尋ねるしかないようです。行きましょう。」
本当は酒の仕入れ先や『悪魔族』との関わりについて詳しい事情を知りたかったがそこは後でじっくりと聞き出そう。
2人の長を速やかに影へ落とした4人は次にサニアの都市長が住む邸宅へ向かう。どうやらマッドメンも国家に携わる地位を得ているらしく、文官としてここで働いているという。
なのに犯罪行為などに走るのか・・・クレイスは不思議でならなかったが人とは常に欲望と隣り合わせなのだ。
ショウがアンとタッシールの名が連なる許可証をひらひらとちらつかせながら押し入ると事前に調べ終えていたのだろう。館内を迷う事無く先導して行き着いた部屋には確かに見覚えのある人物がいた。
「あら?何だか騒がしいと思ったら・・・あらあらぁ?あぁたは確かアミールぅ・・・よねぇ?」
「はい。貴方からジェリーマの居場所を聞き出したくて出向きました。教えて頂けますか?」
最初こそ多少取り繕うような様子も見られたがすぐに不気味で不快な本性を現すと周りの人間も初めて見たのだろう。目を丸くしてマッドメンとこちらを凝視している。
「なるほどなるほどぉ。まさかぁたしの職場にまで乗り込んでくるなんてぇ命知らずねぇ?」
「ヴァッツ、やっちゃってください。」
それはショウにも我慢出来なかったらしい。早々に影に落とすよう小声でお願いすると相手の下半身は腰まで沈んでしまった。ところが驚いてはいたものの特に慌てる素振りも見せず、楽しそうな笑みを浮かべた事でクレイスは警戒を強める。
「おらおら、こっちは急いでんだ。さっさと知ってる事を全部吐け。」
「え~?それじゃぁ情報交換しましょぉ?このおかしな状態になってるのは誰の力なのぉ?」
「うん?それはオレ・・・というか『ヤミヲ』の力だよ。」
そんな雰囲気を読み取ったのか、カズキが急かすとマッドメンから意外な質問が返って来た。更に素直なヴァッツが即答する事で相手が口を大きく歪ませたのだから嫌な予感しかしない。
それでもどうにかなるとは思えなかった。
ヴァッツだけでも破格の強さを持っているのに『闇を統べる者』が一緒なのだ。例えマッドメンに奥の手や秘策といったものがあったとしても絶対にこの状況が覆る事はないと断言出来る。
「それじゃあぁたにだけは教えてあ・げ・るっ!こっちにいらっしゃぃ?」
「うん!」
「え?!ヴァッツ!気を付けてね?!そいつは危険だから・・・っ?!」
しかし怪しい手招きに応じて軽い返事と足取りで無防備に近づく様は少し気になった、ので慌てて止めに入ったのだが遅かったらしい。
「はぃ、じゃぁ耳を貸してぇ~~~~~?・・・どぉお?気持ち良くなってきたぁ?」
「へ・・・ぇぇ・・・な、なにこれぇぇぇ?」
「「「ヴァッツっ?!」」」
何とマッドメンはいつの間に用意したのか、『麻薬』の煙らしいものをヴァッツに優しく当てると彼が見た事もない表情を浮かべてその場に倒れ込んだので3人は驚愕の声を漏らしてしまった。
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