クレイスの憂鬱 -王と王-⑨
「こんにちは、アンナースさん。」
「あら?あんたは確かアーへラの男娼・・・まさかこんな場所に現れるなんて。あ、もしかして私に囲われたいのかしら?」
早速4人は『闇を統べる者』の力を借りて先程忍び込んだ学校に出向くと今度は真正面から対峙する。
「いいえ、今日はジェリーマさんの居場所を教えて貰いに来ました。他に『人身売買』について知っている事を全て教えて頂けると助かります。」
「・・・・・ふぅん。妙な雰囲気を纏ってるからおかしいとは思ってたのよ。あんた、何者だい?」
「僕はクレイス=アデルハイドと申します。現在『リングストン』に巣食う犯罪組織の摘発、及び壊滅に向けて動いています。」
そう伝えるとアンナースはカズキやヴァッツに目をやり、赤毛のショウを確認して全てを察したのか、静かに笑いだした。
「そうかいそうかい。私達は踊らされてたって訳かい。しかしジェリーマの率いる組織は強大だからね?!私一人を捕えたって何も変わりゃしないよ?!」
「・・・ヴァッツ、彼女を腰の辺りまで影の中に落としてもらえますか?」
そして早々に説得が難しいと判断したショウは速やかに耳打ちすると彼女は指示通り、己の足元にあった影に下半身が吸い込まれてしまったので慌てて抜け出そうとするが当然何も出来ない。
「な、何だいこれはっ?!」
「それが大将軍ヴァッツの力です。それはさておきジェリーマは今どこにいますか?彼の拠点は?」
「はっ?!誰がしゃべるか!!」
「では仕方ありません。ヴァッツ、少しずつ彼女を沈めて行って下さい。口元だけを残してね。」
実際そのような効果はないのだが確かに体感だと水の中に沈むような錯覚に囚われるのだ。つまりショウはアンナースに溺死を迫って自白を引き出そうとしているらしい。
「ちょっ?!わ、私は何も知らないよっ?!と、止めてっ!止めてくれよぉっ?!」
「教えて頂ければ止めます。」
「・・・私は何も知らない!!本当さ!!でもカーテルかマッドメンならもしかすると・・・」
その二人はクレイスも会合で確認済みだ。確かに彼らだけは他と違って強さと特別な権限を与えられていたように思える。
「・・・わかりました。ではヴァッツ、彼女を闇の中で捕らえておいてください。次に行きましょう。」
「え?!ちょ、ちょっと?!約束が違うじゃないかっ?!」
犯罪組織相手とはいえこれは酷い。流石にクレイスもやや眉を顰めていたがショウにも言い分はあるらしい。
「はて?何を止めるか、までは言ってませんよ?」
「こ、このやっ・・・」
死ぬ訳でも痛めつける訳でもない上に逃がすという選択肢もないのだから仕方がないのか?
しかし彼らしい切り返しにカズキでさえ少し引くような表情を浮かべていたにも拘らず、闇の中が怖くないと良く知っているヴァッツが逆に笑顔ですとんと落としたのでクレイスはそちらに唖然としてしまった。
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