クレイスの憂鬱 -王と王-⑦
「聞いたぜ?!何でもヴァッツに化けられる人間がいるんだって?!」
「・・・・・イルフォシア、流石にこれはないんじゃないかな?」
「おい?!折角助っ人として駆け付けたってのに随分じゃねぇか?!」
簡潔ながらも理由は聞いたのだろう。高揚感からおかしなことになってるカズキが目を輝かせているとアルヴィーヌにヴァッツまでもがどん引きした様子で見護っている。
「・・・まさか『剣撃士団』のカズキまで呼んでくるとは・・・『リングストン』を滅ぼすつもりか?」
『トリスト』でも無類の強さを誇る2人がこの場に現れたのだからアーヘラもこちらの正体はわかっているのだろう。ただ詳細まで踏み込まないのは最後の一線を越えないように立ち回ろうという魂胆らしい。
「さぁな。犯罪組織とやらの規模にもよるんじゃねぇか?」
そしてカズキも犯罪組織の人間から受けた指摘に我を取り戻したのか、冷酷に言い放つとアルヴィーヌは心の底からどうでも良いといった様子で溜息をついて見せる。
「それじゃ私は帰るね。黒い竜達も心配してるだろうし。」
「うん!ありがとうね!アルヴィーヌ!」
逆にヴァッツの方はこれから犯罪組織を壊滅するという事実を理解しているのだろうか?あまりにも普段通りなので少し不安になるが最近では彼も大将軍として、国家を護るという責務を学んでいる。
「クレイスは次期『トリスト』国王になる身。こんな場所で散るのはもちろん、怪我を負う事すら許されないのです。ヴァッツ様、何卒彼をよろしくお願い致します。」
最後はノーヴァラットが保護者みたいな態度で深々と頭を下げると3人は頷き、早速サニアへ向かって出立しようとしたのだがここで珍しくヴァッツから提案が上がった。
「そういえばショウも向こうで調べもの?をしてるんでしょ?合流する?」
「・・・そうだね。ここ数日会ってないし、ヴァッツ、彼が今どこにいるかわかる?」
「うん。それじゃ行ってくるね~!」
そう言うと彼は『闇を統べる者』の力を発動させたのだろう。クレイス達の体はいつものように一瞬で足元の影へ落ちると次の瞬間にはショウの眼前に揃って姿を現したのだから隠密行動中だった彼も声こそ漏らさなかったものの目を見開いて驚愕を現していた。
「・・・・・何故ヴァッツやカズキまでもがここに?」
「ふっふっふ。訳あって助太刀に参った次第ってとこよ。ところでここ何処だ?随分と暗いし狭い・・・」
「何だ?妙な物音が・・・」
どうやら現在進行形で隠密活動中だったところに舞い込んでしまったらしい。念の為小声で話すも観察対象がこちらに気が付いたようなのでショウが急いでヴァッツの耳元で指示を出すと4人は郊外にある林の中へと移動する。
「ごめんごめん!でも今の場所って学校でしょ?あんな所で何してたの?」
そこでやっと顔を見合わせた4人はまず再会の喜びから笑いあった後、彼が何故そんな場所で諜報活動を行っていたのかを静かに語り出した。
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