クレイスの憂鬱 -王と王-④
「・・・・・だってショウより身長が低いからね。」
そうだ。姿形はそっくりだったのに違和感を覚えたのはその背丈と僅かな成長の差だった。自分の知るショウと違い、眼前で不敵な笑みを零す男は明らかに背が低く、やや童顔なのだ。
切羽詰まった所でやっと明確な答えに辿り着いたクレイスは自信満々に答えるとショウに化けた男は目を丸くした後笑みを浮かべて何度も頷く。
「そうかそうか。確かこの姿は13歳の時のものだったな。今のお前達は15,もうすぐ16か?流石に成長期の人間を模するには無理があったか。」
「・・・ショウに化けて僕達に近づき、アーへラさんを暗殺するつもりだったんだね。姑息な手段もそうだけど僕の友人を馬鹿にするような行為はちょっと許せないな。」
「ではどうする?戦ってみるか?」
「もちろん。」
変化の理論は全く分からないが奴を逃がせば他の人間が犠牲になりかねない。
一先ず詳しい事情を聞きだす為にもまずはある程度痛めつける必要があると感じたクレイスはアーヘラが傍にいるのも忘れて水の魔剣を顕現するとショウの方も何とイフリータの力に似た炎の魔術を展開し始めたではないか。
「・・・君は一体何者なの?」
「私に勝てたら教えてやろう。」
まさか本人の力までも真似る事が出来るのか?半信半疑ながらこちらも警戒の為、更に5本の魔剣を展開すると一瞬で全てを放つ。
すると力の差からか、偽物は多少の動きを見せるもこちらの攻撃が全て突き刺さったのでそのまま床に撃ち付けた。
「ぐはっ?!ま、まさかこれ程とは・・・っ」
「自信の割には実力が伴ってないね・・・でも魔術自体はショウのものに似ている。さぁ答えて、君は何者なの?その姿形はどうやってるの?」
「・・・フフッ。それは力尽くで聞き出してみるがよい。」
ばきゃきゃんっ!
すると次の瞬間、偽物の姿は濃い煙に覆われると信じられない姿に変貌したのだから驚きが追い付かない。ただその姿になったという事はその者の力も保持しているのだろう。クレイスの魔剣をものともせずゆっくり上半身を起こし、立ち上がる姿には唖然と当然が入り混じる。
「・・・流石はその名が轟く大将軍だ。お前の力では痛痒すら感じなかったぞ?」
「・・・・・な、何でヴァッツの姿になれる、の?」
「まぁ理解が追い付かんのも無理はない。私は一度見た人間の姿に化けられるのだ。といっても信じられないか?」
まさかそんな、と返したいがこれも13歳の時のものだろう。ヴァッツの姿となって絶対に彼が見せる事のない不敵な笑みを浮かべていたのだから不安と不快で胸が張り裂けそうだ。
「さて、こうなると私の勝利は揺るがないな。なので冥途の土産に教えてやろう。私はジェリーマだ。アーへラ、貴様を処分しに来た。」
「ひっひぇっ?!ま、まさか・・・ジェリーマ!わしは何も話しておらんぞ?!カーテルのように赦してはくれぬか?!」
「駄目だ。あいつとお前では価値が全く違う。諦めるんだな。」
そしてジェリーマから見た事がない程の威圧感を纏う拳が放たれるとクレイスは決死の覚悟で土の魔術を使い大盾を展開しつつ、アーへラを担いで勢いよく上空に飛び上がった。
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