クレイスの憂鬱 -王と王-①
「まさかあれ程の手練れを引き込んでいるとは・・・よし。各組織を総動員して『売春』の人間を締め上げろ。」
血の気が多い訳ではない。『暗殺』組織の長として、同じ猛者として放置する訳にはいかないと判断しての指示だったがこれに異議を唱えたのは他でもないファーンだ。
「お待ちください。」
「「「「「?!」」」」」
「これはこれはぁ?!ジェリーマさまぁの側近ダ=クリプ様ではございませぇんかぁ?いつの間に来られてたのですぅ?」
「皆様が揃う前から待機しておりましたよ。それよりジェリーマ様からの御命令をお伝えします。アーヘラの件は主自らが手を下すので他の者は勢力の拡大に勤しむように、との事です。」
「・・・わかった。では俺は引き上げる。」
アミールとはまた違う妙な雰囲気を持つジェリーマの側近にそう告げられたカーテルは短く答えると部屋を後にする。
「あらあらぁ?随分と素直に引き下がるのねぇ?豚の殺処分なんて『暗殺』組織の範疇でしょぅ?手柄を上げる好機でもあるのにぃ?」
それから続けて退室してきたマッドメンが不思議そうに声をかけて来るので振り向く事無く肩で大きなため息を見せた。
「お前はまだ組織を理解していないな?全ての長を束ねるジェリーマがそう判断したのだ。俺が食い下がった所で心証を悪くするだけだろう?」
「あらぁ~?残念、昔に比べると随分丸くなったのねぇ?」
そう言われるとぐうの音も出ないし言い訳するつもりもない。過去にリリーという優秀な暗殺者により相当荒稼ぎしていたのも事実でジェリーマがそれをよく思っていなかったのも事実だ。
だからスラヴォフィルが奇襲をかけてきた時も全く手を貸してくれなかったのだろう。一応は暗殺組織の一部を切り離した事で全滅は免れたがその後の立て直しには随分と苦労したものだ。
自業自得とはいえカーテルはその時処分されてもおかしくなかったのに継続して『暗殺』組織の長を任されていた部分には一定の恩義が存在する。素直に引いたのはそれを少しでも返す為でもあった。
「・・・俺は同じ轍を踏まんだけだ。」
しかし滅多に姿を現さないジェリーマが直接アーヘラの処分に動くとは珍しい動きを見せるものだ。
自分で言うのもあれだが犯罪組織の中でも最も重要な『暗殺』組織を任されていたカーテルは私欲に走り、見事な汚点を残してしまった時でさえ大きなお咎めがなかった。
もちろんアーヘラよりも強く、有能だと評価されているとも考えられるが時期も時期なのだろう。
前々から静かに、だが確実に組織の勢力を拡大してきたのには理由がある筈だ。恐らく未だ国勢が落ち着いていない『リングストン』を乗っ取る。数度だけジェリーマと対面した事のあるカーテルはそう思わずにはいられなかった。
あれから屋敷に戻ったクレイス達は犯罪組織とは思えぬ指揮系統の完成度に目を白黒させる。
「ま、まさか誰もいなくなっている・・・だと?」
「・・・・・凄いですね。会合が終わって間もないのに。」
何と大きな建物には人っ子一人いなくなっていたのだ。どうやらアーヘラの裏切りは周知の事実として認められているらしく、彼の配下達も全員が本部か他の組織に引き取られていったらしい。
本当に犯罪組織なのだろうか?クレイスはその鮮やかな動きに心を打たれていたのだが渦中の本人は玄関口でただただ呆然と立ち尽くすだけだった。
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