クレイスの憂鬱 -王の号令-⑬
ショウからの数少ない指示として側近に付く間は毒殺を防ぐ為に食事を自ら用意するよう伝えられていた。
故にその日の夕食も炊事場に立ち腕を振るっていたのだが料理というのは基本的に戦わない者、つまり女性や高齢者が手掛けるものなのだ。特にクレイスのような猛者と美形という2つの才能を保持している者なら自ら動く必要などない。
そんな考えが根底にあるからこそアーヘラも気になって彼の作った料理を頂くと驚愕と追考に至った訳だ。
「まさか強さや容姿だけでなくこのような特技まで持ち合わせているとは・・・アミールよ。アンの配下など辞めて正式にわしの側近とならんか?給金は弾むぞ?」
「ありがとうございます。しかし僕には使命がありますので。」
まさか自分を監視している人物を雇おうとするとは。それくらい美味さに感動を覚えたという事らしいがそのお陰で先程芽生えた猜疑心もすっかり霧散したらしい。
「そうか・・・いや、いつでも良い。気が変われば言ってくれ。わしは本気だからな?」
「・・・でしたら我々の求める情報を提供して下さい。そうすれば前向きに検討します。」
「ほほう?中々に小狡い提案じゃないか。いいぞいいぞ。もっとこちら側の色に染まるが良い。」
こういう切り替えの速さというか打たれ強さも犯罪組織に与する人間の特徴なのかもしれない。割と本気の提案を軽く流されたクレイスはまたも溜息に沈んでいったのだが『リングストン』を一瞬で飲み込んでいった犯罪組織の行動は早かった。
「ふむ・・・突然の会合か・・・」
翌日、アーヘラの下に緊急の呼び出しがかかると彼もクレイスに見せなかった難しい表情を浮かべる。どうやら自分達が犯罪組織に接触したのがもうばれたらしい。
『味見』の件からいきなりクレイスが彼の側近になったのを誰かしらが怪しんだのだろうがそれにしても早い。早過ぎる。
「・・・アーヘラさん。もし良ければ犯罪組織の情報をお聞きしますよ?その真偽さえ掴めれば僕もショウも退散します。」
なので彼を助ける意味でも交渉を持ち掛けてみるとアーヘラからは不敵な笑みが垣間見えた。
「ぐふふ。そんな事をすれば余計に立場が悪くなるだろう。なのでアミール、この会合にはお前も側近として参加してもらう。」
「えっ?!」
どうやら下手な言い訳をするより実際クレイスを引き連れる事でいらぬ嫌疑を晴らそうという事らしい。確かにその方がアーヘラを護りやすくもあるし、何より各組織の責任者を直接確認出来るのはとても大きい。
まさかこんな好機が転がり込んでくるとは。なのにショウは何処へ行ってしまったのだ?
静かに風の魔術を展開して建物内をくまなく探すも友人の姿はなく、仕方がないと覚悟を決めたクレイスは件の会合で何をすべきかを熟考し始める。
「・・・僕が彼らを斬り伏せる可能性も考慮しておいてくださいね?」
「ぐふふふふ!長の代わりなどいくらでもいるからな?わしらを殺した所で組織の壊滅は不可能だぞ?」
そして嫌悪感からついカズキのような物言いをしてしまうがアーヘラはむしろそれを望んでいるのか、とても楽しそうに答えて来たので再び冷静さを取り戻すと己の任務を改めるのだった。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




