クレイスの憂鬱 -王の号令-⑪
「断る。では今度はわしの問いに答えてもらおう。お前達は何者だ?『リングストン』にここまでふてぶてしい輩がいるとは聞いてないぞ?」
ふてぶてしいとは失礼な。だが一方的な交渉内容からそう判断されても仕方はない気がする。
「それはそうでしょう。我々はアン様の腹心ですから。」
うん。半分は本当だ。故にその自信満々な答えから真偽を見抜く事は出来なかったらしい。アーヘラは眉間にしわを寄せつつも一応は納得した様子で頷いている。
「あの女狐か。確かにジェリーマから注意するよう聞かされていたが・・・」
この場面で漏れ出たという事は相当な重要人物なのだろう。聞いた事のない名前をしっかり記憶したクレイスは気取られないように振舞っているとショウは静かに圧力を強めていく。
「アン様にはご本人の御力だけでなく周辺国との強い協力関係もございます。『リングストン』に巣食う犯罪組織がどの程度のものかは未だ不明な点は多いですが壊滅への道が閉ざされる事はございません。」
「ぐほほっ?!何だ何だ?要するに虎の威を借る狐だろう?そんな立場でわしらをどうこうしようなどと片腹痛いわ!」
ぴっ!
「・・・んぎゃぁっ?!」
悲鳴が一瞬遅れたのは神経の伝達が間に合わなかったのか。ショウが目にも留まらぬ速度で円卓の上にあった書類をアーヘラの指の爪の間に鋭く走らせたのだからその激痛は容易に想像出来る。
「私はアミール程優しくはありません。もし今度アン様を愚弄するような言動が見受けられた場合、容赦なくその首を飛ばしますのでそのおつもりで。」
やはりこれは脅迫ではないだろうか?自由な言動を制限され、いよいよ彼の希望しか飲み込めなくなってきたアーヘラはそれでも憎々しい表情を浮かべて口を開く。
「こ、答えは同じだっ!!例えこの首を刎ねられようとも組織の情報を渡す訳にはいかん!!わかったか?!」
「ふむ・・・それなりに気骨もあるようで。では勝手に調べさせてもらいましょう。」
という事はまず彼を拘束して『売春』組織を潰してしまうのか。それから拠点をしっかり調査して堂々と犯罪組織と正面からぶつかっていく。そう考えたのだがどうやらクレイスの認識不足だったらしい。
「ではアミール、しばらくアーヘラの側近を務めて下さい。」
「・・・・・ええっ?!」
「もう少しわかりやすくお伝えすると監視ですね。その上で彼が勝手に殺されないよう護ってあげて下さい。」
「・・・まぁ勝手に居座られるのは癪に障るが・・・しかし何も協力はせんぞ?」
この時アーヘラはクレイス程の美青年を侍らせる優越感を選択したようだがこちらとしては非常に不満が募る任務だ。しかしこれも『リングストン』に巣食う犯罪組織を撲滅する為だと小声で囁かれると仕方なくため息で了承を示すしかなかった。
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