クレイスの憂鬱 -王の号令-⑩
「ば、馬鹿な・・・わしの体にはあの大将軍ラカンと同じ秘術が使われているのだぞ?!」
意外な名前が出てきたのでショウと顔見合わせるがかの大将軍の名前を出すのは流石に失礼な気がする。
「そうなんですか?でもとても遅い動きでしたし今も力負けする気はしません。その辺りの衛兵数人相手なら勝てるかもしれませんが過信は禁物かと。」
軽く答えていたクレイスも己がとんでもなく力をつけている事実に未だ気が付けていない。というのもやはりカズキやヴァッツといった破格の存在が身近にいる為どうしても自信を過小評価してしまうのだ。
「では早速商談なのですが・・・」
「ちょ、ちょっと待て?!こ、こんな姿勢のまま始める奴があるかっ!!」
確かに小剣を握っていた右手は後ろで組み伏せられており、つぶれた蛙のようなアーヘラの上にクレイスが遠慮なく体重と力をかけて乗っている状態で話し合いを進めるのは少し無理があるか?
しかし相手は犯罪組織の責任者なので自分的にはこのままでも十分だと思っていたのだが珍しくショウが慈悲をかけるとクレイスも拘束を解き、アーヘラは冷や汗と脂汗を流しながら軽く息を整えて椅子に座り直す。
「全く・・・言っておくが『商談』だぞ?脅迫には一切屈しないからな?」
「おや?その命を握られているのにですか?」
こういう時のショウは本気なのか冗談なのかよくわからないのだが少なくとも相手は脅しと捉えたのだろう。部屋の外から護衛でも呼びそうな仕草を見せたのでクレイスも風の魔術で周囲に探りを入れるが『味見』を公言していたお陰か、駆け付けそうな人物はいない。
「・・・早く要件を言え。」
「はい。では他の犯罪組織の詳細を洗い浚い教えてください。」
うん。やっぱりショウはこうでないと。前置きもなく核心も核心、最も欲しい情報を聞き出そうと最短距離で突っ込むとアーヘラも一瞬だけ驚いたがすぐに不敵な笑みと浮かべて吐き捨てる。
「出来んな。わしが仲間を売るとでも思ったか?」
「ええ、条件をお伝えすれば何でもお答えして頂けると考えております。」
「ほう?言ってみろ。」
「他の5つある犯罪組織は全て壊滅します。しかし『売春』組織だけは残しても良い。如何ですか?」
(これ絶対誰にも相談してないやつだ・・・)
いや、もしかするとザラール辺りには左宰相の権限を行使するくらい伝えているのかもしれないが大丈夫だろうか。クレイスも部屋の外を警戒しつつアーヘラの答えを待っていると彼は不敵な笑みを浮かべてみせた。
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