クレイスの憂鬱 -王の号令-⑧
あれから何事もなく日を跨いだ翌日、『売春』組織直属の人間アイムビーが宿に現れるとマスクル立ち合いの下で面通しが行われる。
「ほう?確かに雰囲気が違う。君達はもっと上客の相手をしたいという話だが・・・いいだろう。では本部へ向かおうじゃないか。」
王族の血や女王の下で育てられた気品というのはしっかり伝わるものらしい。大した言い訳をせずとも相手が納得した事で早速2人は街へと移る事になったのだが同時にマスクルへ紹介料が支払われるのを目の当たりにする。
『売春』とは男女ともに様々な要素を求められるがやはりその中でも容姿は極めて重要なのだ。だから彼もこんな小さな村で薄い儲けを継続させるより本部に上納して得られる実績と報酬を選んだという事か。
(そう考えたらどんな世界でも基本は変わらないのかな。『売春』っていう所を除けば、だけど。)
感心と軽蔑を抱いたクレイスは納得しつつ小さな村を後にするとそれから三回野宿を挟んで目的の街に辿り着く。
そこは『リヤマーヴ』領内であり二番目に栄えている都市サニアだ。まさかこんなお膝元で犯罪行為が行われているとはと少し驚いたがそれくらい勢力を伸ばしているのだろう。
「長は気が短いからな。問答には気を付けるがいい。」
それから酒場らしい場所へ入った3人は三階にある大部屋に通される。そして後から姿を見せたトドのような男にアイムビーが深々と頭を下げたのでクレイス達もそれに続いた。
「ぐほほ。アイムビー、そいつらが自分を高く売り込みたいという男娼か。ふむ、確かに面白い雰囲気を持ってるな。容姿も申し分ない。」
「ははっ。ではこちらでの労働を許可願えますか?」
「よろしい。一応味を知っておくか。君達、構わないね?」
「はいよろこんで。」
ところがそこからの流れに全くついていけなかった。
何やら責任者らしい男とアイムビーがこの街で働く許可をまとめると次に味を知っておくという話になったのだが、そこにショウが無感情な声で即答したから開いた口が塞がらない。
(味を知っておく・・・っていうのは味見だよね?え?僕がこんな男の慰み者に?)
想像しただけでも恐ろしい。何が恐ろしいかといえば自分でも感じた事がない程の嫌悪と怒りが体内を駆け巡った事だ。
それでも我慢せねばならないのだろうか?ここに来るまで常にアイムビーが傍にいたため詳しい話し合いも出来ていないクレイスは強い不安を抱いたがそこはショウも抜かりなかった。
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