クレイスの憂鬱 -王の号令-④
高官から村人までをも掌握しつつある犯罪組織はアンが『ボラムス』に入った事などとっくにお見通しだった。
しかし彼女が、正確には『リングストン』が迷う事無く他国の武力介入を受け入れるまでは想定していなかったらしい。
「驚いたな。大国故の誇りが邪魔をして他者への救援は求めないと思っていたが・・・流石は商業国家の前女王、素晴らしい決断力だ。」
届いた情報に目を通したファーンが感心していると長机の末席に座る幹部達も頷く。
「であれば早速アンを暗殺して参りましょうか?」
その中でも暗殺組織を束ねる非常に強面のカーテルが静かに提言すると他の面々からは殺気のような気配が滲み出る。
「ふむ。しかしコーサが厄介だな。奴の家族を人質に取ればそれも可能かもしれんが・・・」
「そういう事でしたら是非私めにお任せください。必ずや手に入れて御覧に見せましょう。」
彼らはファーンに選ばれ、育てられた精鋭であり主への忠誠心も高い。故に今回のような今後訪れるかわからない好機に何とか功を立てようと必死なのだ。
今度は麻薬組織の長である不気味な雰囲気と鋭い目つきのマッドメンが補佐役を買って出ると他の面々から再び殺気、いや、焦りが漂い始めた。
「よかろう。お前達に任せる。だが他の面々も気を緩めるな。奴らは無能ではないのだ。更なる掌握の為、人々に快楽と幸福を与え続けるように。」
こうして犯罪王とその幹部6人との会議は幕を閉じたのだが彼らは1つだけ見誤っていた事がある。それがショウの存在だ。
知識として持ち合わせてはいたものの犯罪組織を壊滅させる為にはかならず部隊を派遣するだろうという思い込みも良くなかったのかもしれない。
「ここが『リングストン』の村か。やっぱり建物の作りからして違うんだね。」
アンやフロウとの話し合いを終えた翌日、ショウの策略により2人で小さな農村に侵入したクレイスは野暮ったい衣服に手ぬぐいを頭に巻くという変装であたりを見回す。
「あまりきょろきょろしないで下さい。私達は諜報活動の最中ですよ。」
そう、今回の犯罪組織壊滅については情報と時間が少ない為まずは潜入捜査をしたいとショウが言い出したのが原因だ。最初こそ彼一人で乗り込むという話だったがもし犯罪組織に相当な猛者がいた場合や実際どういった集団なのかが気になったクレイスも同伴を申し出る。
もちろん次期国王候補が部隊も引き連れず敵地に潜り込むなど強く反対されるがそれを表明したのはショウだけであり、ガゼルは面白がっていたしフロウも敵を知るという意見に賛同してくれた。
結果『トリスト』や『悪魔族』の部隊を近くに待機させる事でこちらも奇襲を主軸に動く形へと収まった訳だ。
「とにかく『煙草』にだけは手を出さないように。シーヴァル様もそれでかなり苦労されていたので。」
「だね。でも内部調査か・・・上手くいくかな?」
タッシールやアンの協力があるので『リングストン』国内の村人という立場を得るのは容易かった。後はどうやって犯罪組織に接触するかだ。
事前情報では6つの組織が動いており、出来れば『人身売買』や『賭博』といった命の危険が少なそうな所から潜入したい。
だが彼らは自分の容姿がとても目立つという自覚に乏しかった為、その思惑とは遠く離れた『売春』が早速水面下で動きを見せるのだった。
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