クレイスの憂鬱 -王の号令-③
『ボラムス』が本格的な対策を打ち出す中、最も近くで悪感情を感じ取っていたボーマは有り得ない程の快楽に身を委ねていた。
(信じられん。まさかこれ程の悪感情が芽生え続けるなんて・・・『リングストン』というのは一体どのような楽園なのだ?)
聞いた話では最近王都が壊滅、国王も崩御した事で新たな国王と体制を建てたそうだがそれにより彼の国は地獄のような環境が出来上がったらしい。
補佐として出向いたアンは相当優秀な元女王だと聞いていたので彼女は『悪魔族』の為にわざわざ動いてくれたというのか?それならば是非フロウにもこの吉報を伝えねばと考える。
「あれ?フロウじゃねぇか。何か約束とかしてたっけ?」
ところが普段大人しい『悪魔族』の王は王たる力を保有しているのだ。例え遠くに居を構えていても『リングストン』の異変には早くから気付いていたのだろう。
ショウとクレイスが再び『ボラムス』へやってくると同時に彼も姿を見せるとガゼルは不思議そうな声を漏らしている。
「やはり相当な悪感情が生まれていますか?」
「うむ。しかし納得はいかんな。これらは我らに向けての恐怖ではない。」
それにしても流石は王だ。自分は悪感情に酔い痴れて気が付かなかったがその本質は悪魔の望むものではないのを既に見抜いていたようだ。
そしてそれが気に食わないのか、珍しく苛立ちや怒りといった感情が読み取れるとボーマは浮かれた気持ちを抑え込み肝を冷やす。
「・・・つまりそれを正す為にお前はやってきた訳だ。」
「うむ。今回『リングストン』という国家に蔓延る犯罪組織を殲滅すると聞いた。ならばそこに我ら『悪魔族』の一軍も加えてはもらえないだろうか?」
つまり悪魔達が直接人間を狩猟する事で恐怖をこちらに向けようという事らしい。
「・・・フロウ様。残念ですが今回は我々だけの力で解決したいと考えております。」
「えへぇっ?!」
既に彼らとも懇意の仲であり魔王自らの申し出に断る道理などある筈がない。そう決めつけていた為余計に驚いたボーマはやり取りを前に思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
こんな大事な場面で王より目立ってしまうとは。慌てて取り繕うが彼らもショウの言葉にびっくりしていてこちらの粗相など気にも留めていない。
「・・・ふむ。では約束しよう。人間を虐殺はするが食しはしない。これで我々も陣営に加えてくれるか?」
「慈悲深い提案は誠に痛み入ります。しかし今回はクレイスの為に退いては頂けないでしょうか?」
「えっ?!」
名前を出された本人が驚いているという事はその真意を聞かされていない、もしくは気付いていないのだろう。ガゼルやフロウが再び目を丸くしている中、ショウはクレイスに視線を向けると詳細を語り始める。
「今回の『リングストン』国内に蔓延る犯罪組織掃討作戦は彼の名声を高めるのに千載一遇の好機なのです。もしフロウ様率いる『悪魔族』の御力が混じるとそれが霞んでしまいます。」
「・・・・・なるほど。」
つまり彼らは手柄を独り占めしたいという事らしい。人間とは強欲だと知ってはいたもののまさか悪魔を前に悪魔以上の悪知恵を告げられるとは思いもしなかった。
「・・・でも折角フロウ様がこうやって足を運んで下さったんだよ?僕は是非ご一緒してもらいたいな。」
だが王が大変懇意にしている影響もあるのか、クレイスから共闘の申し入れがあるとフロウの機嫌はとても良くなり、ショウも苦笑を浮かべつつ浅く頷いている。
「はい。ですのでフロウ様の部隊は表立つ事無く暗躍という形で協力して頂く、という訳には参りませんか?」
「ほほう。面白い。その話、是非乗らせてもらおう。」
「では決まりですね。皆様、よろしくお願いします。」
最後はずっと見守っていたアンが申し訳なさそうに深く頭を下げる事で会議は幕を閉じたのだが、自身の王が裏方に回された事に納得のいかなかったボーマはその夜気分を落ち着かせる為にかなりの深酒を呷ってしまうのだった。
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