クレイスの憂鬱 -王の為に-③
ファーンについては黒く短い髪に凍るような双眸、体は細いながらもしっかりとした個の強さを持つという情報を告げるとテイロンは『ジェリーマ』の活動についても説明を始める。
「基本的に金の為なら何でもやっていました。それしか稼ぐ方法と生きる方法を知らなかった。お恥ずかしい話です。」
ここで自身の過去を語ったのは具体例を知ってもらいたかったからだ。もし奴がこの世界に迷い込んだ場合、必ずこういった組織が暗躍する筈だと。
「ふ~む・・・テイロンよ。1つだけ気がかりな点がある。お前は麻薬とやらには手を出さなかったのか?」
これについても詳しく説明したのでモレストを始め、重臣達も警戒すべきだと理解してくれたのだがそこは確かめておくべきだと判断されたらしい。
「はい。私には縁のないものでした。」
「何故かね?酒に酔う以上の多幸感を得られるのなら・・・生きる以外に目的を得られないのであれば麻薬とやらに逃げてもおかしくなかったのではないか?」
「仰る通りです。しかしあれはかなり値が張るのです。私などは食べていくのに精一杯だったので運よく手を付ける機会はありませんでした。」
あわせてその依存性や中毒性も説明すると彼らも深く頷いて納得してくれる。
「もし一回でも使用すればそれを欲してたまらなくなる、そうです。そして飲食よりも優先する事で最後はやせ細り、やがて廃人となり死んでいきます。『ヴォーダ=ムン=ヴァーレー』の裏路地ではそんな死体をいくつも見てきました。」
「何と恐ろしい・・・」
「つまりテイロンは問題ないという事だな!それを知っただけでも一安心だ!」
その意見にはテイロンも頷かざるを得ない。もしあれに手を出していたら今の自分は存在しなかっただろう。
「この世界にそんな危険な代物があるとは思いたくないが・・・テイロン、もし麻薬を使用している者がいた場合、見分ける方法はあるだろうか?」
「そうですね・・・白目や歯が黄色くなったり、後は手が異常にやせ細ります。手指の関節を見てもらえればわかりやすいかと。」
「ふむふむ。よし、これらもまとめて『トリスト』に送ろう。」
正直『シャリーゼ』に雇われて以降、今日が一番お役に立てたのではないだろうか。それが妙に嬉しかったテイロンはこの後自分への褒美として悪魔の酒を楽しもうと考えていたのだが彼の情報は思っていた以上に重要なものらしい。
翌日には『トリスト』からの使者が現れると再び詳しい話をお聞きしたいという申し出と共に、もしかすると『リングストン』に件の人物が潜んでいる可能性を告げられたのでテイロンは冷や汗を流す。
「そこでテイロン様には是非アン様やタッシール様に御協力して頂ければと考えております。」
「し、しかし俺は・・・」
「行ってきてくれ。頼むテイロン、アン様を御護りする為にも。」
思えば最初から妙な高評価を受けていたがそれは未だに続いているようだ。しかし彼女は『シャリーゼ』の基礎を築いた人物でありモレストも敬愛している。
そして現国王に命じられたとあらば断る選択肢などある筈もない。
「・・・わかりました。力の限りご協力致します。」
まさか新たな世界において忌まわしい過去と向き合わねばならないとは。最近知った業という言葉がこれなのかと内心面白く感じていたがもしファーンがいた場合は躊躇などしていられない。
その時に斬り伏せる許可も頂くと早速彼は単騎で『リングストン』へ赴くのだった。
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