クレイスの憂鬱 -王の為に-②
出自が出自の為か、テイロンは正式な軍人として雇用された後もさほど過去を言及されなかった。
故に今回『トリスト』から送られてきた書状には目玉が零れ落ちる程驚き、そして全ての任務を放り出してモレストの下へ向かう。
「おおテイロン。どうした?お前が火急などと言ってくるなんて珍しいではないか。」
普段寡黙な性格も影響したのだろう。テイロンからの話とあって重臣達も何事かと小さな執務室に集まっていたが今は気にする場面ではない。
「はい。実は俺の出身も『ウラヴィ大陸』なのです。」
「ほう?」
なのでまずは最も伝えたかった事実を告げると国王達は驚いた様子で顔を見合わせる。
「・・・つまり今回『トリスト』から送られてきた書状の内容について詳細を知っている、という事かね?」
「仰る通りです。直接会った事はありませんがここに書いてある人物について是非お伝えしたく馳せ参じました。」
「おお~これは有益な話になりそうだ!」
相変わらず『シャリーゼ』の人間は人が良いというのか朗らかというのか。こちらが詳しい情報を知っているとみて喜びを浮かべていたのだが火急の意味を失念しているらしい。
「ふむ。してテイロンは私達に何を伝えたくて急いたのだ?」
「はい。中でもファーンという男、これは恐らく私が所属する組織と繋がっており、最も警戒する人物でございます。」
「「「ほほう?」」」
恐らくという言葉を使ったのは自分が下っ端だった為確証がなかったからだ。しかし『シャリーゼ』に仕え、様々な知識を得てから改めて考えるとその仕組みは見えてくる。
ファーンの治める『ヴォーダ=ムン=ヴァーレー』は無法という名の法治国家だった。彼の国には様々な犯罪組織が跋扈しており、常に抗争状態で国民が巻き込まれる事など日常茶飯事だった。
そんな中テイロンの所属していた組織『ジェリーマ』も生き延びる為に様々な悪事を働いていたのだが自分達を含めて何故か国家が殲滅に走る事はなかった。
何故か。それは彼らが裏で全て繋がっていたからに他ならない。
麻薬、酒、煙草に女や人身売買に暗殺等々、全てが莫大な利益を得られるからこそファーンはそれらの行動をある程度黙認し、見返りとして各組織から賄賂を受け取っていた、筈だ。
「ふぅむ・・・まさかそのような国家が存在するとは・・・」
知識を使って理論を立てる、更にそれを言葉に変換して相手に伝えるというのは本当に難しい。特にテイロンのようにあまり賢くない男が実行するのは戦う時以上に体が悲鳴を上げる。
「話を聞いた印象では搦め手を好みそうな男だ。」
「つまりこの世界に現れていると仮定して、小さな噂や事件に目を光らせれば異変に気が付けるやもしれませんな。」
しかしそれでも彼らは信じてくれるのだ。未熟ながらも国家の軍部を担うテイロンの言葉を。
「よかろう。テイロン、些細な事でも良いのでその特徴を教えてはくれぬか。すぐ『トリスト』に報せようではないか。」
「ははっ!」
やはり自分で選んだ道は間違いではなかった。嬉しくてつい大きめの声で答えると彼は早速特徴について饒舌に語り始めるのだった。
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