クレイスの憂鬱 -王の侵略-⑨
「俺は国に戻らねばならん。何とかならないか?」
翌日に畑の修復作業を終えたソーダは至極当然な訴えをみせるのだがその当然を見た事が無かったカズキは少し驚いていたようだ。
「・・・そうだな。お前にも故郷があるんだもんな。ちょっと友人を呼んで来るよ。」
未だ怪我は残っているものの彼の国『サピール』は貧困にあえいでいる上に小国なので少しでも早く帰国したいという。カズキも約束を果たしてくれた彼の真っ直ぐな気持ちに応えるべくオンプの背に飛び乗るとすぐに『トリスト』へ戻っていったのだがここに疑問を呈するのはもちろん彼女だ。
「・・・そういえば貴女達は帰らないの?」
ルマー達やタシンは別世界の人間というのもあるが何よりカズキへの想いが関係しているのだろう。最近では気持ちを素直に表すだけでなく、恋敵を何とか排除しようという動きもみられていたのでその質問にはある種の納得さえしてしまった。
「私は嫌だね。滅んだ世界に未来はない。だからカズキ君と一緒に歩むんだ~だから邪魔しないでね?」
自分もタシンのような状況であれば強く出られるのだがあいにく故郷は健在の筈だ。であればフランセルの言う通り戻った方が良いのか?両親くらいは自分の帰りを待っているかもしれないが冒険者になった瞬間からいつ死ぬかわからない立場は既に伝えてある。
「う~ん、私も『剣撃士団』の一員だからな~。しかもかなり気に入ってるんだ。帰るつもりは無いよ?ね?ルマー?」
「・・・そうね。私も・・・」
カーヘンからそのような同意を求められるがルマーの言い分はそこまで誇れるものではない。窮地に陥った所を助けられてほんの少し心が動いただけなのだ。
「ん?私は罪を償うまではここにいたい?だってさ。」
故に言葉に詰まった時、しっかりした返答で割り込んできたのはもう一人の友人にして同郷のアナだ。しかし彼女は口をきけないのでいつも筆談でやり取りしているのだが今日は少し勝手が違った。
「・・・アナさんの刑期はどれくらいなのでしょう?」
「さぁな?アルヴィーヌ様の匙加減ってとこじゃないか?アナは何か聞いてるか?」
フランセルの質問に今度は直接首を振って答えている。うん、その姿は以前のままだ。
しかし詳細なやり取りが必要な時にはさも当然のようにフランシスカの背中に指で文章を走らせて彼が答えるのだからカーヘンと顔を見合わせてしまう。
ボトヴィといた時でさえそんな仕草は見せなかったというのに何があったのだろう。
「アルヴィーヌ様って大胆だけど基本優しいからな。頼めば帰国もすんなり許されるんじゃないか?うん?そ、そうか・・・」
「あの、フランシスカさん。アナは何と?」
「え?ああ、刑に服するとはいえ黒い竜の御世話や皆といる事が気に入ってるから出来れば続けていきたいってさ。」
しかし彼の説明に納得いかなかったのか。背後から多少力強い拳が広くたくましい背中にどんどんと打ち込まれるとフランシスカも苦笑を浮かべている。
「・・・まぁ立場の違い、はあるのかもしれませんね。ソーダ様は国に仕える将軍ですから。貴女達より故郷を気に掛ける気持ちも強いのでしょう。」
「おいフランセル。ちょっと言葉に棘がないか?」
最後はそんな彼が兄らしい諫め方をするとこの話はここで終わるのだが確かにこのままではいけないだろう。せめて自分が納得の行く形に収めるべきだ。そう決意したルマーはフランセルの思惑とは裏腹に強く前進する事を誓うのだった。
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