クレイスの憂鬱 -王の侵略-⑧
「まずはお前の名前から教えてもらおうか。」
やはりカズキの怒りは未だ収まっていないらしい。珍しく荒い口調で問いかけると異邦人も部屋の中を見渡してから口を開く。
「・・・ソーダだ。俺からも質問させてくれ。ここは何処だ?」
「『ネ=ウィン』だよ。それじゃ次の質問だ。お前の国や住んでいた大陸の名前は?」
「ちょっとカズキ。」
しかしこれには国務という意味もあるのだ。未だに機嫌の直らない彼では支障をきたすと思い、諫める意味で口を挟むと腕を組んでそっぽを向いてしまったのでフランセルは傍に座る。
「はいは~い。カズキ君、お昼まだでしょ?買ってきてあげたからこっちにおいで。」
美味しい役目をタシンにかすめ取られたが仕方ない。ただカズキも大人げないとは気が付いたようだ。逆にタシンを自分の隣に座らせると包んでもらったお弁当箱を覗き込んで軽い笑みを零していた。
「・・・失礼しました。私は『ネ=ウィン』の将軍フランセル、彼も同じく将軍のカズキと申します。ソーダ様、もしや貴方は強王ムチャカと戦っておられたのでしょうか?」
「はい。彼の傲慢王が配下のダム=ヴァーヴァと共に都から姿を消したという情報を得ましたので王の命により探索と出来れば黄金の入手をと考えておりました。しかし道中でムチャカと遭遇してしまい戦う羽目に・・・」
それでいきなり現れたと同時に激しい攻撃を放ってきたのか。納得はいくものの尋問しなければならない内容はまだまだ残っている。
「ところで『ネ=ウィン』という国はどの辺りにあるのでしょう?我ら小国の知識には覚えがないのですが。」
「遠い所だよ。あんたの国がある『ウラヴィ大陸』よりずっと離れた場所の大国だ。」
不機嫌だったのは空腹の影響もあったのかもしれない。カズキが舌鼓を打ちながら質問に答えるとソーダも困惑しつつ頷いていた。
「ソーダ様はどちらの御出身なのでしょう?」
「俺は『サピール』ですね。貧しく小さな国なのでご存じないかもしれませんが。」
存じ上げないのは別世界だからという説明を省き、手元にある書類と照らし合わせてもそのような名前はない。という事はさほど警戒する必要はないのか?話が通じるという部分も考慮して質問を続けようとした時、またカズキが動きを見せる。
「ところでムチャカってとの戦いはどうだったんだ?倒せそうだったのか?」
如何にも戦闘狂らしい質問だが、フランセルも気になったので様子を窺っているとソーダは軽く首を振る。
「いいや、あのままでは俺が散っていただろう。襲われたので立ち向かうしかなかったが・・・そういえばムチャカは何処へ行ったのだ?」
「お前を置いて黄金城に向かったんじゃないか。あの場所にはもういなかったぜ。」
「そうか・・・」
気を使ったのか言及を避ける為か、珍しくカズキが返答を濁すとソーダも安堵でこの話を切り上げる。それでも彼が別世界に迷い込んだ事はいずれ伝えねばならないだろう。
「そういやお前が壊した畑、怪我が治ったら修復してくれよな。」
だが何よりも優先されるのはやっぱりその部分らしい。これには相手も思う所があるのか、カズキの言葉に頷くと事情聴取は幕を閉じるのだった。
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