83、クローンキラー殲滅最終戦
基地へ戻るとすぐに斎藤の元へ向かった。
基地に戻ってから一番先に会う事が出来る人物が斎藤という事も俺にとっては好都合だった。
こんな格好で基地内をうろついたら誰に撃たれるかわからないからだ。
「斎藤さん、いますか?」
俺は倉庫から研究室に向かい斎藤に声を掛けた。
「うわぁ!マツダ君かぁ、知っていても流石にビックリだな、どうした?」
ビックリしたと言いながら顔がにやけている所を見るととんでもない大根役者だ。
「キラーの素材を使って俺を覆う案って、もしかして一条の案だったりしません?」
「えっ、まぁそうだが、急にどうしたんだい?」
「このスーツが良い意味で異常なんですよ。力があふれ出てくるような感じで、前回よりも今回のキラーの方が強かった。けどこのスーツのお陰でかなり余裕があったんです」
「そうか・・・一条は常に俺らの先を行っていたからね。こういう事も既に予想済みだったのかもしれない」
「確かに一条さんの手紙には俺なら簡単にクローンのキラーを倒せると書いてありました。もしかするとこれが簡単に倒す為の鍵だったのかもしれませんね」
「そうだといいんだけどね・・・」
俺も斎藤も一条の事を想いぼんやりとしていると赤石が研究室にやってきた。
俺を見るなり銃を構え距離を取る。
「斎藤君、これは一体どういう事ですか?」
「大佐!マツダ君ですよ!先程説明したやつです!」
斎藤が間に入って赤石をなだめる。
だが、今の俺なら拳銃程度の弾丸ならば避けられる気がして撃たれなかった事にがっかりした。
「マツダさんでしたか。話は聞いていましたが警戒させて頂きました。申し訳ありません」
そう言って深く腰を折る。
「所であと一体となりましたがこれまでの戦況はいかがですか?映像で見る限りキラーの質量が増しているようですが」
「確かに一体倒す毎にキラーは強くなっています。ですが、このスーツを着てから多少余裕があります」
「そうですか。万が一の話ですが、マツダさんがクローンのキラーに敗れてしまった場合、脳だけでも強制的に蘇生して冷凍保存をするという案が政府から降りています。それと同時にクローンも永久的に凍結されるでしょう。そうならない為にもどうか最後の一体の討伐をお願いします」
再び深く腰を折ると一度敬礼して作戦室へと戻って行った。
俺はその言葉に頷く事しかできず、敬礼をして見送った。
「それで、最後の一体はやれそうなのかい?」
「どうでしょうね?最後の一体だけものすごく強かったらって考えると正直自信無いですね」
「正解平和はマツダ君の手に掛かってるんだ!頑張ってくれよ!」
どういうつもりかわからないが急に明るくなった斎藤に肩を平手打ちされる。
恐らく先程の赤石の言っていた話をごまかすつもりなのだろうが正直自分がやられてしまった後の世界には興味がない。
ただ、俺の子供が平和に暮らせない世界になってしまうのも心残りだ。
「何とか勝ちますよ。斎藤さんのためにね」
心の内を見透かされないうちに俺はドローンへ向かう。
次のキラーは恐らく今までで一番強い。
勝てたとしてもスーツを纏う前のようにかなり厳しい戦いになるか、最悪腕の一本くらい持っていかれるんじゃないだろうか。
これまで四体のクローンキラーとの戦いで戦闘パターンが躰にしみ込んでいるはずだ。
俺はドローンに乗り込むと自ら作戦室に呼びかける。
「出撃準備完了。いつでも行けます」
「了解」
そして、最後のクローンキラー討伐が始まった。
今までの待機とは違いキラーの数が一体のみの状態で近郊に出現するのを待つ事が主な作戦内容となる。
前回も長かったがクローンの起動と再起動の回数は既に数えきれない程になった。
作戦室からの声も覇気がなくなり、残り一体と言って盛り上がっていた時の賑やかさが今ではお通夜のようだ。
俺もドローン内部で立ち続けていた為義体を支える生身の体に疲労がたまっていく。
「斎藤さん!今、クローンの再起動少し遅れていましたよ?ちゃんと起きてます!?」
「ちゃんとやってるよ!そっちのアナウンスが聞こえずらいんだ、もっとはっきり言ってくれなきゃ!」
「作戦中ですよ、私語は慎んでください」
高城と斎藤が喧嘩を始め、赤石が割って入る。
正直言ってこの狭い空間に立ちっぱなしの俺が一番疲れているに違いない。
足で立ったりハンドルを握って体を浮かせたりしながらなんとか持ちこたえている。
そしてついに一番最悪な自体が起こる。
「クローン再起動」
「了解。アラームの反応を待つ」
その瞬間大きな破裂音と高城の悲鳴がイヤホンに轟いた。
「キャー!」
直感的にキラーが作戦室に現れたのだろうと確信した俺はハッチを蹴破り作戦室へ急行した。
恐らく悲鳴が聞こえてから数秒で到着出来たはずだ。
全ての扉は開かずに蹴破っている。
作戦室は既に数人のオペレータが殺害され、皆キラーの視界に入らないように机の下に入っている。
そして一番恐ろしかったのはそのキラーの大きさだった。
前回のキラーで俺よりも頭一つ大きかった程だったが今回は見上げる程大きい。
「来い!」
とっさに叫ぶとキラーはこちらに飛び込んできた。
もっと広い場所に誘導しなければまずい。
俺は今出せる一番の速さで駆け、基地前の道路へ出た。
振り返ると同時にキラーの攻撃が放たれ、頭部をかすめた。
頬の肉をスーツごと削ぎ落されたようで激しい痛みが走る。
さすが今までで一番大きいサイズなだけあって速さも桁違いだった。
避ける事もままならず、義手によってかろうじて受け流す事が出来る程度でスーツの表面は破れてどんどんキラーの攻撃を受け流す事も出来ずに一方的にやられるようになった。
攻撃を食らう時に後ろに飛び退いたりして何とか致命傷を避けられているが左腕の手首から先が既にどこかに行ってしまった。
(もう駄目か!)
そう思った時
「こっちだ!」
基地から出てきた斎藤がキラーを呼ぶ。
その手には腕が握られている。
恐らくクローンの腕だろう。
声に反応してクローンキラーは斎藤の方へと駆け出す。
そして斎藤に一撃を浴びせようと拳を振りかぶった時、俺のキラーがクローンキラーの頭部を捉えた。




