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82、クローンキラー掃討作戦3

 帰りのドローンの中で俺は焦っていた。


二体目まではある程度余裕で戦えていたものの三体目になるとキラーのパターンを掴めるまでは受け流すので精いっぱいだ。


まだ義体に損傷はないが生身である心臓や首、頭部に渡ってかなりのダメージを負っている。


今の所死ぬ程の損傷は無いにしても次の討伐で無事に倒せるかどうか自信がなかった。


モニターに薄らと映し出される目は真っ黒に見え、自らの動きに生身の体が悲鳴を上げているのは明らかだった。


基地に着くとドローンから下りその場で横になった。


誰にもこの目を見られたくなかった。


これくらいの事で作戦が中断される事はないと思うが、今は誰からもどんな言葉であったとしても聞きたくなかった。


「マツダ君、大丈夫かい?」


なかなか下りてこない俺を心配して斎藤が様子を見に来てくれたようだが俺は顔を腕で多い疲れているふりをする。


実際に心臓の高鳴りは収まらず肩で息をしている状態なので疲れているふりというのも少し違うが、この位であれば少し休めば落ち着くだろう。


「息切れしているだけです、ここで少し休んでいますね」


「そうか、厳しそうだったら言ってくれ」


「了解」


横になったまま斎藤に手を振り早い事退散してもらおうとした。


だが、先日訓練の時に使っていたキラーの素材で表面を覆うと斎藤が言っていたのを思い出す。


「斎藤さん」


「どうした?」


「この前言っていた、キラーの素材を俺に塗るみたいな話ありましたよね?あれって、今試せますか?」


「試せるが、効果はまだ調べられてないぞ?」


「早く動き過ぎて目が乾燥してしまうんです。あれで覆えば丁度良い風よけになるんじゃないかと思って」


「まぁまだ時間はあるから試せるが、やってみようか?」


「お願いします」


俺は起き上がり、斎藤の方を見た。


「マツダ君、その目」


「えぇ、だから乾燥が激しくて。目を閉じてる余裕もないんですよ」


「わかった、もしコーティングして、真っ暗で前が見えなかったらすぐに破れよ?」


そして俺達は研究室へ行き、予め斎藤が準備しておいてくれた水泳帽を受け取った。


「溶けているがちょっと熱めの風呂だと思ってくれていい、ほら、鼻栓だ。全身使ったらすぐに出ていいからな」


そう言って斎藤は黒い液体が入った人が入れるくらいの容器を押して部屋の中央へ移動させる。


「一度固まるとまた溶かすのに時間がかかるから温めたままにしておいてよかったよ」


俺は服を脱ぎ捨て水泳帽を耳まで被ると鼻栓をし、ゆっくりとキラー溶液に浸かった。


そして起き上がり手探りで容器から出るとすぐに体の表面に付いた液が固まるのがわかった。


確かにゴム質のようで首の動きには問題が無い。


そして目を開けても何にも遮られていないようにはっきりと見え、口元から息も吸う事が出来た。


「表面が固まったようだけど、どうかな?」


「外も問題なく見られますし息も出来ます。これはかなり快適かもしれません」


「それはよかった!良かったけど、これじゃ見た目がキラーそのまんまだな」


「間違えて俺に攻撃しないように気を付けてくださいよ?」


「ははは!まさかそんな事・・・」


「斎藤さん?」


モニターを見た斎藤が急に黙り込む。


本当に俺を攻撃する可能性がある何かを見つけたような顔だ。


「マツダ君の生体反応がモニターできなくなっている。GPS反応も同時にだ」


「じゃあ、本当に狙われる可能性が?」


「いや、臨時でGPS装置を取り付けよう。二の腕辺りなら邪魔にならないだろう?」


そう言って二の腕辺りにGPS装置を結び付けられる。


「ただ、この作戦が終わったら二度とこのコーティングはしない。色々と危険すぎる。いいね?」


「わかりました。俺も攻撃されたくないですからね」


「ああ、約束だ。この事は俺から少佐に話しておく。そろそろ時間だ、マツダ君は次の出撃に備えてくれ」


「了解」


俺は黒い体のまま大げさに敬礼して倉庫へ向かう。


だが、どういうわけか先程まで激しく鼓動していた心臓も落ち着き、義体の動きも過敏になっている。


いつも通り歩いているつもりだがいつもよりも早く屋根裏の格納庫に着いた。



 「時間です。次の作戦を開始します」


赤石の掛け声と共に皆が一斉に動き出す様子が聞こえてくる。


「クローン起動しました」


「了解。アラームの反応を待ちます」


聞きなれたやり取りが再び始まり、基地内にアラームが鳴りび引く。


残り二体という事もあり、今度はなかなか近郊に現れない。


次第に通信内容も簡略化されたものに変化していき、


「クローン起動」


「了解。アラーム反応を待つ」


といった具合に最低限の言葉のみが繰り返されていった。


そうして数十回と繰り返し、ようやく近郊にキラーが現れる。


「近郊にキラー発生!港地区別島です!」


「了解!発進します!」


俺は場所を聞くとすぐに発進ボタンを押す。


発進が早すぎたせいで一度前回向かった繁華街の方へ進むが直ぐに方向転換して海の見える方へ向かう。


少ししてすぐに大きな橋の上を通り、巨大ロボット像の前へ降り立った。


「こんなでかいロボットに乗って戦えたら楽なんだろうな」


そう言いながら周りを見渡す。


「マツダさん、大きな公園の方です!」


「了解!」


今回は目立つ目印があるお陰ですぐに向かう事が出来る。


そもそも、方角を見る事の出来る道具を持ってくるのを忘れているので方角で指示されなくて助かっている。


公園の方へ走ると、先程感じた体の動きの過敏さが顕著になる。


どう考えても以前よりも早く走る事が出来ている。


そして前回よりも明らかに大きくなったキラーが見えたと同時にキラーもこちらへ向かってくる。


(くそっ!見た目が同じになっても来るのかよ!)


先程と同じく先ずはキラーの動きを受け流すが前回よりも大きくなったはずのキラーが二度目に戦った時位の余裕をもって討伐することが出来た。


「討伐完了。帰還します」


このスーツを着て初めて義体の本当の性能を発揮できる。


よく考えれば筋繊維がむき出しになっているような義体自体が異常だったのだ。


俺はこのキラーのスーツが俺の為に作られた物なのではないかと確信した。


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