80、クローンキラー掃討作戦1
掃討作戦が開始と同時にドローンの内部で待機した俺はキラーが近郊に現れるのをただ待っているだけだった。
詳細はキラーの発生アラームが四か所揃った時点で近郊への出現が無ければクローンを停止し、再起動を繰り返すというものだった。
ドローンの中では作戦室の中で繰り広げられているやり取りが聞こえてくる訳でなく、斎藤もクローンの再起動の為に培養室に籠りっきりだった。
近郊に発生した時のみ作戦室から連絡が来るとの事だったが、ただ待っているだけだと気が滅入ってしまう。
次に赤石と話す機会があれば作戦室との通信を常時接続してもらい、不発だった場合でもこちらで把握し、次の起動に備えて気持ちを切り替えておきたい旨を伝えておかなければならない。
そして、何も起こらずに暫く経った後スピーカーから赤石の声が鳴り響いた。
「マツダさん!近郊にキラー発生!場所、神奈川方面!直ちに出動してください!」
「了解!」
向こうに聞こえているかわからないが威勢よく返事をして発進のボタンを押す。
通常このボタンを押すと滑走路へ向かう設定になっていたが斎藤の事前準備で一番近くに発生したキラーの目撃情報を元にそちら方面に移動するよう変更を掛けられているようだった。
(まずは一体目!)
一度飛び立ってから基地からの微調整でキラー発生現場に座標を微調整してくれるらしく、俺はただドローンに運ばれるだけだ。
近郊とはいえ他県への移動がどの位かかるのかわからなかったが100キロ近く速度の出るドローンで直進すると少ない時間で到着できるのだろう。
少しして大きな競技場と駅が見えた頃ドローンが下降を始め、俺の心拍数は跳ね上がった。
ドローンは駅の方へ向かい駅前のバスターミナル横の少し広めの空間に着陸した。
「ちょっと待ってくれ!キラーがどこにいるのかわからなかった!」
ハッチを開いて外に出るがキラーの居場所が把握できなかった。
上空からも視認出来ずに辺りを見渡すと周辺のホテルの窓から多くの人が指を指してキラーの居場所へと誘導してくれた。
バスターミナルを抜けて片道三車線の大通りに向かうと道路の真ん中にキラーは居た。
俺がキラーの姿を視認すると同時にキラーからも認識されたようでこちらに向かってくる。
前回同様俺が守りに徹してキラーの一撃で撃破する。
しかし、前回と少し違う事がある。
明らかに前回のキラーよりも大きさが増している。
前回は俺と同じ程度の高さに感じたが今回は顔の半分程大きくスピードもわずかに上昇していたように思える。
そう考えながらドローンに戻り発進ボタンを押し、基地への帰路についた。
(それにしても、通信環境が少なすぎてキラーの位置が把握できない。これは問題だぞ・・・)
基地に着きドローンから降りるとすぐに作戦室へ向かった。
「赤石少佐!」
作戦室の扉を空けてすぐに赤石に声を掛ける。
今回の問題点を指摘する為だ。
「マツダンさん。一体目討伐お疲れ様です」
赤石に握手を求められ応じるがこちらとしてはそれどころではない。
「赤石少佐、今回の出撃で問題点が」
「どうしました?」
「基地との連絡手段が無くキラーがどこにいるのかが全く分かりません。何か通信手段が必要だと思うのですが」
「なるほど」
<なるほど>などと言っているが顔はとんでもない失敗を隠す子供のようになっている。
「ちょっと、研究室へ行ってきます」
現在俺は十分程度の休憩を与えられている身なので作戦室に留まり赤石の動向を見守る事にした。
「マツダ君、大丈夫?」
高城がささやかな労いの言葉をかけてくれたのが意外だったが正直一体目は場所がわからなかった事に苦労した程度で大した体力を使っていない。
「全然大丈夫ですよ。この調子で残り三体やってしまいましょう」
俺は理髪店店主のように親指をびしっと立てて作戦室にささやかな安心を提供した。
そして俺は10分が経過した頃、倉庫へ向かう。
「マツダさん、これを耳に付けてください」
研究室に着くと赤石にイヤホンを渡された。
言われるがまま耳にイヤホンを付ける。
すると斎藤の声が聞こえた。
「マツダ君、聞こえてるかい?」
「聞こえています。こちらの声も聞こえているんですか?」
「あぁ、急遽作ったが問題ないようだな」
声の主は同じ研究室の中にいたがイヤホンから聞こえる声もはっきりと聞こえた。
「次からはこれでキラーの位置へ誘導します。こちらの準備が悪く申し訳ないです」
赤石から謝罪を受けたがきっと斎藤の準備不足といった所なのだろう。
斎藤の表情はどこか居心地が悪そうだ。
「では、次の出撃に備えます。よろしくお願いします」
赤石と斎藤が頷くと俺は再びドローンに乗り込んだ。
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