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77、ぬか喜び

 基地に到着すると倉庫で大塚と斎藤が出迎えてくれた。


「マツダぁ!やったな!」


俺と大塚は再び作り物の冷たい拳をぶつけ合わせた。


気分が常に高揚した大塚が強く拳をぶつけてきたお陰で最近ご無沙汰だった肩への衝撃が心地よい。


「マツダ君!お疲れ様!俺のドローンの誘導最高だっただろう!?」


「斎藤さん!」


俺は無意識に斎藤に抱き着く。


斎藤の言う通りドローンの誘導が無ければ厳しい戦いになっていた可能性があった。


感謝してもしきれないほどの功績だったと思っている。


「マヅダ君!痛い˝よ˝!」


感情に任せて抱き着いたせいで力加減を考えていなかったようでもう少しで斎藤を抱き潰してしまう所だ。


「すみません!でも、キラーの直上に着陸しそうになった時は冷や汗が出ましたよ!討伐出来たのは斎藤さんのお陰だと言ってもいい位です!」


「おい!俺の訓練も役に立っただろう!忘れるなよ!」


大塚の訓練も斎藤のドローン誘導よりも十二分にクローンキラーとの戦闘に役立っている。


二人には感謝してもしきれない程だ。


俺は何も言わずに大塚に歩み寄って抱き着いた。


もちろん斎藤と同じくらいの力で。


「ははは!こんなので痛いって言ってたのか!まだまだあま˝い˝な˝!」


斎藤に対応して我慢しているようだが生身の体で受け止められる程優しい抱擁では無かったらしく、大塚も言葉を濁す。


大塚を解放すると斎藤がにやけた顔で奥の培養室の前で片手を上げている。


「それより、見て欲しいものがある」


神妙な面持で俺達を呼ぶ声にはしゃいでいた空気も一瞬で冷め、大塚と二人で培養室へ向かう。


消毒液を浴びて中に入ると前に見た時と同じ培養室だったが赤石と高城も揃っていた。


「一体何なんです?」


普段集まらない場所に主要メンバーが集合している所を見るとかなり大事な用事のようだ。


「マツダさん、今日は本当にお疲れさまでした。初日から成果が出て本当に鼻が高いです」


「大塚さんと斎藤さんのお陰ですよ。一人で挑んでも負けていたかもしれません」


改めて言うと大塚と斎藤は照れた表情を浮かべた。


「マツダさん、こちらをご覧だください」


赤石が手をかざした方向には以前見たクローンの入っていた大きなケースだった。


ケースの中には前に見たクローンが入っているが右腕が肩から断裂している。


どういう構造になっているかわからないが特に内部が血液で濁った様子はない。


「やっぱり、俺の時と同じなんですね」


「そう、だが腕が断裂している状態で無ければ起動して自立させることが出来たのですが、今の状態ではこの培養カプセルから出した時にどうなるのか想像が付きません。そのため、一条君無しでは我々も手を出すことが出来ずにいます」


確かに一条がこのクローンを作ったのだろうが他に扱える人がいないのだろうか?


「各国へもこの件を相談中ですが人型のクローンを作り腕が切れた状態の個体を培養液から出した時のストレスを計算できる人物がいないのです」


「じゃあ、このクローンはどうなるんです?」


「培養液の中に入った状態だともう一度腕が繋がる可能性がある」


斎藤が前に出て培養ケースをコンコンと小突いた。


「元々人の形を形成させるために作られているせいでこのまま放っておけばもう一度胴体と腕が繋がるだろう。歪な形になるだろうがな」


「では一度ケースから出して腕を取り除いてはどうです?」


「それでも、この中にいる以上腕は再生される」


「じゃあ、ケースから出したままにしておきましょう」


俺は一同を見渡すが大塚以外は暗い面持だ。


誰もが沈黙する重い空気のなか赤石が口を開く。


「ケースから出すという事はクローンを起動しなければならない。起動するという事はキラーが発生してしまうという事です。クローンの起動を維持するという事はその間キラーの活動を許すことになります。それだけは避けなければなりません」


「そんな・・・」


再び沈黙が訪れる。


先程倉庫で交わした大塚と斎藤とのやり取りも完全にぬか喜びだったという事になる。


そもそも一条しか扱えない代物を扱おうとしていた事に問題がある。


だからこそ一条が軍から追われて姿を隠さなければならない要因になったのだろう。


「各国との約束もあります。まずは様子を見て来週改めて討伐作戦を行います。その時までに腕が繋がる事がなく、現れたキラーの数が四体で済めば良しとしますが、来週までに腕が繋がってしまい、キラーが再び五体に増えていた場合、作戦を変えましょう」


「もし、五体に増えていたらどういう作戦になるんです?」


「毎日討伐を行い、五日間以内にすべてのキラーを討伐します」


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