75、キラーとの合同演習
斎藤の発明は思っていたものよりも良い内容だった。
キラーに使用されていた素材を利用して溶かした樹脂のようなものに無数の空気孔から空気を出しながら膨らませ、同時に冷やす事で機械の中に素材さえ入っていればいくらでも人型の風船を作り出すことが可能なのだそうだ。
しかも自走させることが出来、スピードはそこまで早くないものの不動で単調な訓練にはならないだろう。
そして一度破壊しても数秒で再び人型の風船を作り出すことが出来る為遠慮なく破壊することが可能だ。
時間をかけて平凡な物を作られるよりも少し時間がかかったが非常に楽しみだった。
「斎藤さん、色々と急かしてしまいましたがこんな良いものを作って頂いて本当にありがとうございます」
「なぁに、仕組みを作り出すまでに色々試行錯誤が必要だったんでね、時間がかかってしまってすまなかった」
「これ、軍の訓練用にも使えるんじゃないか?自分で会社を作って軍に売り出してみたらどうだ?」
大塚も興味を示したようで軍としての利用方法だったりキラーの素材を使っているので商用に出来ないなど様々な意見のやり取りに広がる。
「ところで、この装置はドローンに乗りそうですか?」
俺の最もな質問に斎藤が固まる。
「乗らないねー。これは困った」
「俺が車で運んでおこうか?」
「いいや、それはありがたい話だがキラーの素材は討伐軍の機密になっているからね。簡単に向こうにおいて帰ったりはできないんだ」
「箱に入れて鍵を付けておけば良いだろう」
斎藤と違い大塚の方がこういう場合の機転が利くのだろう。
消極的な斎藤と違い大雑把だが最もらしい意見が出てきた。
これには斎藤も納得できたようで結局大塚の意見が採用された。
赤石に事情を話し、鍵付きの箱は空軍で一度預かってもらい、俺の訓練時に滑走路に運んでおいてもらう約束をした。
「じゃあ、明日滑走路に行けば箱が用意してあると思って良いのでしょうか?」
「ああ、後は我々が用意しておくから今日はもう休んで明日に備えておくといいい」
「わかりました。ではまた明日」
一礼して帰ろうとすると
「マツダ!防弾ベストと面は置いて行った方がいいぞ!」
大塚が防具を着けたまま帰ろうとしていた事を指摘してくれた。
恐らく、ゴルフボールを避ける訓練で疲れていたのだろう。
防具を射撃訓練所に置いて部屋に戻ると死んだように眠った。
次の日、皆の出勤時間に合わせて作戦室に向かい高城に滑走路の使用をお願いすると直ぐにドローンに向かった。
「マツダ君、おはよう」
「おはようございます」
「今日は向こうに着いたら既に箱が用意されているはずだからこの鍵で箱を起動して欲しい。箱を起動するだけでマシンが自走し始めて同時に的を作り始めるから直ぐに訓練を始める事が出来る」
「わかりました。ありがとうございます」
「それと、破壊した後の破片だが、悪いんだけど回収して箱の中に専用のごみ箱を作っておいたからそこに回収してくれないかな?」
「素材が機密なんでしたよね。わかりました、小さい破片まで全て回収しておきますよ」
「面倒だが頼むよ」
そうして俺はドローンに乗り込み滑走路に到着した。
そこには既に箱が用意されていて先程貰った鍵を差し込む穴がある。
暫くの間野次馬が減ったと思っていたら新しい箱が現れた事で再び多くの野次馬で壁が出来ていた。
あと3日。
野次馬の事など構ってられる程余裕はないのでいっそ見せつける気持ちでやるしかない。
呼吸を整え的が現れてからの動きをイメージしながら鍵穴に鍵を差し込み横に捻った。
すると下部の蓋が開き中から昨日見た装置が勢いよく飛び出し自走しながら人型の的を作り上げていく。
走行速度はおよそ50キロ程だそうで、世界最速の短距離走走者よりも少し早い位だそうだ。
そのくらいの速度ならば全身義体の俺にとっては大したことは無い。
問題はその速度で動く的をキラーと同時行動を行いながら破壊していく必要がある事だ。
的が高速移動を始めると野次馬からはどよめきが起きていた。
まずは的の性能を試すようにキラー単体で破壊できるかを試す。
キラーの攻撃は的を捕らえて大きな風穴を開ける。
すると穴が開いた的を装置が切り離し、新しい的を生み出した。
次にゴルフボールの時に出来ていた事を試す。
破壊するイメージを維持したまま体を動かしてみると体を動かす事を意識せずに目的の場所までたどり着くことが出来た。
だが、キラーと同時に的に攻撃をしようとした所でキラー側が消えてしまう。
ゴルフボールの訓練の時はキラーで破壊、俺は回避と行動が分かれていたから成り立っていた。
ならば俺は的を掴んで動きを止めれば良い。
そしてついに俺が的の動きを止めてキラーで破壊するという流れが出来上がる。
これを実戦で行うとすれば、俺がガード、キラーが破壊という方法でかなり有利に討伐することが出来る。
俺は時間を忘れて様々なパターンで的の破壊を試すうちに辺りはすっかり暗くなっていた。




