表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/87

74、冷たいファーストバンプ

 斎藤を急かしてから二日経った。


それでも俺は毎日滑走路へ訓練に行く。


その間に大塚から目で追う動作と別に他の動作を行う訓練を同時に行っていた。


予め戦闘能力をプログラムされた義体のお陰で一度身に付いた行動は二度目以降は今まで当たり前に出来ていたかのように行う事が出来た。


寸止め前提で訓練をしていて大塚を破壊しようなどとは微塵も思っていないので当然キラーは現れない。


戦闘技術だけが向上していったがキラーとの同時行動を数多くこなすには斎藤にお願いしている装置が必要だった。


(あと五日か)


残りの時間は少ないが一度会得してしまえば恐らく体が勝手に動いてくれるのだろう。


問題は体の動きとは別に目標を破壊するという強い意志が薄れる事でキラーの動きが途切れてしまう事。


こればかりは何度も訓練しておく必要があった。


そして三日目、滑走路の的を全て破壊し終えて基地に戻り、黙々と作業している斎藤の後ろを静かに通り過ぎて訓練場に出向いて大塚との訓練を始める。


そして今日は射撃訓練場に呼び出された。


一度体に身に付いた行動は覚える必要が無いため、今日は大塚がわざわざ用意してくれたゴルフボールを一球毎に回避と受け取る行動を繰り返すというものだ。


しかも斎藤が十分で作り上げたという高速射出機まで用意されている。


「俺が考えるにお前の目は普通だろう?」


「目、ですか?」


「ああ、頭部はまだ未改造だろう」


「そうですうね。あんまり改造されたくは無いですが」


「体の動きに目と頭が付いて行っていないんじゃないか?」


「そう言われればそうかもしれません。目で追える範囲が俺の最高速度だとばかり・・・そうか、そういう事ですか」


「ああ、そういう事だ。この射出機は一秒間に最大六発射出できる。キラーの動きが単調ならば目で見たものを追うのではなくて予測して先に体を動かす。そのための訓練だ」


「これはなかなか恐ろしい訓練ですね」


「そうだろう!だから、これを被っておけ」


大塚は剣道の面を投げてよこす。


訓練用の特注ではなくどう見ても剣道用だ。


これならば頭部へ直撃して命を落とすこともないだろうが、体に当たればまた大切な皮膚が失われてしまうのではないかという不安が残る。


「胴は無いんですか?」


「あー。そうだな、ちょっと待ってろ」


そう言って火器の並んだ壁際の棚を物色して一枚の防弾ベストを投げてよこした。


「これがあれば絶対に致命傷にはならない。なんせゴルフボールだからな」


「怖いですが、いいですよ、やってみましょう!」


俺は覚悟を決めて本来ならば的があるべき場所へ向かう。


胴と頭さえ覆われていれば恐らくどこに当たっても痛くない。


はずだった。


だが、訓練が始まった途端に最初の球を受け止める事が出来る。


しかし次の球は避け無ければならない。


最初の球を受け止める行動を行った事で次の球を見失い避ける事が出来なかった。


胸の辺りに当たった球が防弾ベストと金属質の筋組織に衝撃を伝えて骨まで衝撃を与える。


部分的にハンバーで殴られたような鋭い痛みだ。


(やばい、これは死ねるな)


一度球に当たって動揺してからは避ける事が出来ずに受け止める一方になってしまった。


「休憩だ!」


俺の異変を感じ取った大塚が一度手を止めた。


「今ので球の速度はわかっただろう?落ち着いてからもう一度やれるな?」


「もちろん、球の速度を覚えているうちに始めたいです。今すぐお願いします」


「よし、いい気合だ」


今度は最初の球を避けて二球目の球から受け取る。


集中すべきは球の射出部分。


打ち出す瞬間の軌道さえ確認できれば自分の元へ到達する位置が予測出来、目で追うだけで体を無意識に動かす事が出来るようになる。


一度できてしまえばその後は難なくこなす事が出来、気持ちにも余裕が出来た。


そして受け取るという動作の代わりに球を破壊するというイメージを強く持つ。


案の定キラーが現れ、受け取る動作の代わりにキラーがゴルフボールを粉々に殴り潰す。


「おいおいおいおい!ちょっと待ってくれ!」


大塚がマシンを止め、壁に掛けられた火器を取りに走った。


「はははは!そうか!これなんだ!」


俺は自分の体の動きとキラーの動きを別々に制御出来た感覚を掴む事が出来ていた。


あとは大きな空間でどう生かすかが今後の訓練で補う必要がある。


「そうか、じゃない!話には聞いていたがいきなりキラーを出すんじゃねー!」


俺にとっては既に見慣れたキラーでも大塚にとっては見慣れているが恐怖の対象であるキラーが現れた事に困惑している。


「すみません。でもこれで滑走路訓練の大きな進歩につながりました、大塚さんのお陰です」


「くそっ!久々に冷や汗が出ちまったよ」


俺と大塚はくすくすと二人で笑い合い今日の成果について称え合った。


「おーい!マツダ君!ついに完成したぞ!」


訓練の成功を祝福するかのように下の階から斎藤の吉報が聞こえ、大塚と冷たい拳をぶつけ合わせた。


11月22日日曜日は定休日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ