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69、マツダサイクロン、発進

 大塚との訓練で改めてわかった事があった。


人の動きは予測不可能だがキラーの動きは単調だという事だった。


これはクローンのキラーが意志のようなものを持っていないからなのではないだろうか。


俺のキラーは俺の意志によって動かす事も出来る。


しかしクローンには意志が無く、感情も起動した時に怒りの感情が与えられているだけだ。


一人でもなんとか勝てそうな戦況を想像できるができればもっと確実に倒せる必要がある。


万が一体が破損してしまった場合斎藤では修復不可能なのだそうだ。


普通の人間と違って傷がつくと自然に治癒する作りにはなっていない。


丈夫な作りになっているお陰で腹に銃弾を食らっても皮膚だけの傷で済んでいるがキラーの攻撃を受けた時にどうなるか想像できる。


可能ならば先日のようにキラーを制御しつつ自らも戦闘に参加できる程の集中力が必要になるだろう。


こちらが二体で攻める事が出来れば勝利することも容易になる。


一度部屋に戻りクローゼットに入った軍服に着替えると滑走路に向かう事にした。



 高城に滑走路の使用をお願いする必要があったが先程の件がある。


怒られるのか、滑走路を使わせてもらえない可能性もあるのではないかと心配した。


作戦室に入るとコーヒーを片手に高城がコンピュータの前で作業している。


「あの、高城さん」


「・・・」


俺の声だと気付くと置きかけたマグカップを再び持ち直し、聞こえないふりをする。


どう考えても先程高城に行った俺の行為が原因なのは間違いない。


むしろ、こうならない方がかえって不安だ。


「あの、訓練のために滑走路の使用をお願いしたいのですが・・・」


「言いたい事はそれだけ?」


あからさまに不機嫌な声でようやく返事をしてくれる。


「さっきはすみませんでした。どうかしていたみたいで・・・悪意があったわけじゃないんです」


「さっきは私も少し言い過ぎたかもしれない、あなたも大変なのはわかるけどしっかりしてもらわなきゃ困るの。皆の命を背負ってるって事、忘れないで」


「すみませんでした」


ようやく振り返ってくれた高城に下げられるだけ低く頭を下げて再び謝罪をした。


「滑走路は手配しておくから、ちゃんとするのよ」


「わかりました、ありがとうございます」


暫く口も利いてもらえないと思っていたがどうやら遊び過ぎていた俺に注意してくれていたのだろう。


しかし今はキラーの制御という明確な目標が出来た。


遊んでいる場合ではない事もわかっているし、作戦が始まるまで一か月も無い。


それまでにキラーの制御を行えなければ厳しい戦いになる事は自分でもわかっている。


部屋を出る時に俺と高城の話を耳にしてこちらを向いていたオペレータ達が一斉にモニターに向き直った。



 高城に話を付けてきたので今度は斎藤の元へ向かう。


ドローンで滑走路のある基地まで向かうという話だったからだ。


研究室に入ると斎藤が妙なものを作っている。


「こんにちわ、斎藤さん、何作ってるんです?」


「やぁマツダ君。丁度良かった。このビーカーの中に手を突っ込んでくれないか?」


斎藤が指差す場所には火であぶられたビーカーの中に黒い液体が入っている。


「嫌ですよ・・・なんですか?それ」


「キラーの残骸を溶かしてみたんだ。これを手にコーティングしておけば少しは丈夫になるんじゃないかと思ってね」


「思って、って。どの位の衝撃に耐えられるんですか?最初は俺のサバイバルナイフも通してましたよね?」


「そうか、うん。もう少し実験してみてからにするよ」


ゴムのような作りだとは聞いていたがせめて衝撃実験などをしてからでも遅くはない。


逆に義手が黒い塊のせいで動作不良にでもなったらどうするつもりだったのだろうか。


それとも科学者というのは仮説を立てて実験を行うものだからこれも実験のうちという事なのだろう。


「そんな事より、ドローンをお借りしたいのですが今手を借りれますか?」


「そんな事って・・・まぁ、マツダ君が言うならそちらを優先させよう。早速ドローンに乗り込んでくれたまえ」


「了解」


俺は軍人っぽい敬礼の真似をして倉庫へ急いだ。


床のパネルを踏み、ハンドルを引くと快適に天井裏の隠し部屋に行くことが出来る。


これも技術者斎藤の遊び心なのだろう。


「搭乗部の扉は手動で開けられる、横に付いたボタンを押してくれ」


壁に取り付けられたスピーカーから斎藤が話しかける。


ほんのりと人型の搭乗部は前後を隔てるように赤い線が光っていてその一部がボタンのようになっている。


(軍用の搭乗機にこんな派手な装飾いるかな?)


装飾の色は心配になったがボタンを押すと前後に割れて頭の部分を中心に羽のように広がり、赤い光の線を残した枠だけが残った。


足元には足の置き位置、枠からは手の位置にハンドルが付いている。


「じゃあ早速乗ってくれ、足はガイドの通り。手の平が後ろになるようにハンドルを握って」


「わかりました」


言われるまま足を足の形に掘られた場所に乗せ、ハンドルを握った。


「じゃあハッチを閉める時は左手のハンドルについているボタンを。ハッチが閉まってから右手側のボタンでここに帰って来られる」


「了解です。自分で操作することはできないんですか?」


「残念だが空の問題もあって勝手に飛ばれては困る。一定のルートだけを行き来、緊急時はこちらで誘導する仕組みにしかなっていないんだ」


なるほど、斎藤の言い分も一理ある。


「では、向こうに行くときは斎藤さんが操作してくれるんですか?」


「いいや、既に滑走路の往復はボタン一つで切るようにプログラムしてあるから安心してくれたまえ」


「了解です。出は出発しますね。ありがとうございます」


「うむ、気を付けたまえよ」


俺は先程から度々語尾が博士っぽくなっている斎藤の事を指摘してあげられなかった事を後悔しながらハッチを閉め、右手のスイッチを押した。


するとプロペラが回り出し、天井が開く。


前は見る事が出来なかったがまるで特撮物のワンシーンのようで悪い気はしなかった。


そしてその雰囲気を壊すようにスピーカーからプロペラ音をもかき消す勢いの叫び声が鳴り響く。


「マツダサイクロン!はっしーーーーん!」


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