68、敵の戦闘パターン
高城に打たれた頬をさすりながら今日の目的だった赤石の執務室をノックする。
今日はここに来る事を言っていなかった為、少し間を置いてから返事が聞こえた。
中に入ると机に向かっている赤石が座ったまま俺の着席を促す。
しかし今日は昨日の事の報告と謝罪をしに来ていた為椅子に座らずに赤石の机の前に向かう。
まずは頭を下げて昨日の不始末を詫びる。
「赤石少佐、昨日キラーが出てしまい人を数名殺す形になってしまいました。申し訳ありません」
頭を下げたままで赤石の返事を待つが直ぐに返事は無かった。
少し経ってようやく赤石が重い口を開いた。
「まず頭を上げてください。朝から警察から報告が入っているので今はその後処理を行っていました。誘拐されていたようですね?」
俺は一度頭を上げて状況の説明をした。
気絶させられてチェーンで巻かれていた事、腕を落とされそうになった後に斧で襲われた事。
殺意がキラーを発生させて目標を殲滅した事などを包み隠さずに正直に言ったつもりだった。
俺がその時どう思っていたかという所は伏せて事実のみを詳細に。
「なるほど、警察の調査と概ね一致していますね。よく殺されずに無事に戻りました。我々もマツダさんが強過ぎるので安心していた所がありました。今後は妙な輩が出ないよう注意します」
もう少しお咎めがあるのかと思ったが状況を把握していてくれたお陰で俺の無罪を獲得することが出来た。
「ですが」
赤石が手に持ったペンを強めに机に置きこちらを睨みつけてくる」
「殺しは良くない。誘拐されて拘束された怒りはわかりますが、あなたならただ逃げてくる事も出来たはずです。これ以上は庇いきれないので次このような事が起こった場合は人道的な対応が出来ないという事を覚えておいてください」
「わかりました」
誘拐されたのは俺のせいでもないし自分を守っただけで怒られた気がして面白くなかったが文句を言っても軍の対応が変わる事はないだろうと黙って執務室を出た。
一条ならば何と言ってくれるだろうか。
俺は悪くないと言って抱きしめてくれるだろう。
しかし、高城といい赤石といい俺の昨日の行動をかなり把握されている。
今後の行動は注意して屋外を歩かないようにした方が良いのかもしれない。
色々考えたい事もあったが大塚と約束した通り仕方なく訓練場に向かう事にした。
訓練場に着くと黙々と懸垂をしている大塚が目についた。
俺が扉を開ける音を聞いてすぐにこちらに向かってきた。
「案外早かったな、昨日の事で絞られてきたんだろう?」
口元に笑みを浮かべながら俺の肩を軽く殴ってくる。
「えぇ、まぁ」
深刻に聞かれるよりいっそすがすがしくて悪い気はしなかった。
「気にするなよ、相手の力がどの程度なのかしらずに攻めてきた奴が悪いんだ。戦争と一緒で相手の戦力が上ならば勝てる策を考えなければ全滅するのは当然だからな。それより、案外いい度胸してるってもんで俺は誇らしく思うがな!」
どうやら大塚とは気が合いそうだ。
「それで、今日は何をするんですか?」
俺に顔にも少し笑みが戻る。
大塚の言葉に大分救われたようだった。
「今日は俺の全力の攻撃を受けきってもらう!」
「え!やられっぱなしですか!?」
「食らえって言ってるんじゃないさ、避けるなり捌くなりしてもらっていい。お前の方が俺より早いしタフなんだからいいだろう?他の連中じゃ少しも本気が出せなくて体が鈍っちまう」
「わかりましたよ。俺が本気出したら大塚さんを挽肉にしてしまいますからね」
「はっ!言うようになったな」
「冗談ですよ!手加減してください!」
大塚が両腕を勢いよく回して目が戦闘色になったのを見て軽くなだめた。
リングに上がると大塚は一応グローブを付けてくれ、一応俺にもグローブを投げてよこす。
シャツを脱ぎTシャツ一枚になりグローブを付けてリングに上がる。
「相変わらずその腕は恐ろしいな」
大塚がロープに寄り掛かり、袖から露になった無機質な腕をしみじみと眺める。
「よし!やろうか!」
そういうと大塚はステップを踏み戦闘態勢をとる。
俺も軽く頷いて戦闘態勢をとったがその瞬間に大塚が踏み込んでくる。
先日戦闘したクローンのキラーよりは随分と遅く感じた。
避けるのも容易で避けながらでもこちから間合いを詰めていく事も出来る。
しかし近づくと膝が飛んできて後退させられる。
大塚の動きに慣れた頃今度は突きと突きに間が出来る。
フェイントというやつだろう。
今までは大塚の動きを見てから避けられていたが間合いをずらされる事で体を先に動かしてしまう俺の方が一気に不利になった。
この短時間で大塚の腕の動きよりも先に体を動かしていた事を逆手に取られたのだ。
これはキラーには無い動きだった。
それならばと今度は避けるのではなく大塚の突きを全て受け止める。
グローブとグローブがぶつかる度にパーンと高い音を鳴らし鼓膜を揺さぶった。
そして、
「もうだめだ!ギブだギブ!」
大塚の体力が無くなったのか大の字になってリングに倒れ込む。
暫くの間本気で攻撃をし続けた為大塚は全身で息をしている。
「いやぁホント強くなったなぁ」
「そうですね、強く改造されましたよ」
「ははっ!違いねぇな!」
リングを下り冷蔵庫から水を取ると大塚に投げて渡した。
水を受け取った大塚は顔に水を掛けてながらそのまま口を開けて水を飲む。
「マツダよぉ、たまにやこうやって俺の練習に付き合ってくれよ?避ける練習だとでも思ってさ」
「わかりました、今日は色々と参考になりましたよ。キラーの動きはただ早いだけで単調でした」
「ならよかった。俺はもう少し休んでいくから先上がっていいぞ」
「そうですか、ならお先に。お疲れさまでした」
大塚はリングに倒れ込んだまま手を振る。
単調なキラーの動きのパターンさえ覚えれば一人でもやれるという自信を持てた事が大きな収穫だった。
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