67、歓迎と拒否
昨日の出来事は直ぐにニュースで取り上げられていた。
<港地区での惨劇、キラーが暴力団関係者を狙った殺戮劇>
見出しを見る限り俺を狙ったのは暴力団関係者だったようだ。
組織で狙う位なので恐らく俺が金を持っているという情報を掴んでいるという事になるが義体の性能や俺がキラーを制御できる事は知らないのだろう。
知っていればわざわざ狙ってくるような下手は打たないはずだ。
暴力団関係者の目的とキラーが狙った背景は不明、との事だ。
これまでに赤石から追及の連絡が無いのも俺が拉致された事を知らないからなのかキラーの制御を行える事を知らないからなのかわからなかったがいづれは問い詰められる事になるだろう。
先日キラーの制御を行うという事を話したばかりなので恐らくは感付いているだろう。
隠しておく方が後の信頼関係に傷がつくだろうと俺は一度基地に行って昨日の説明をすることに決めた。
基地に着くと大塚に熱烈な歓迎をされた。
「マツダぁ!久しぶりだなぁ!」
腕を首に回して腹をいくらか拳で小突かれる。
「大塚さん!痛いですよ!」
腹にはまだ皮膚組織が残っていて大塚の硬い義手の衝撃が響く。
「最近キラーが出なくてなーんにもしてないから体が鈍っちまったんだよ、今日久々にちょっとやろうや!」
「平和で良いじゃないですか、噛み締めておきましょうよ」
「一条がいなくなっちまって今の体の維持をするのが大変なんだよ、今の俺の部隊じゃ練習相手になる奴もいないからな!」
「わかりましたよ!赤石少佐に話をしてから訓練場に行くので少し時間をください!だからもう放して!」
首に回した腕を無邪気に締め付けてくる大塚には敵わなかった。
振り解こうと体を動かす度に深く締め付けられ命の危険すら感じる。
ただ、嬉しそうに歓迎してくれているようで苦しいが嬉しかった。
「早く話を切り上げろよ!少佐は話が長い時があるからな!はっはっは!」
最後に赤石の悪口を残し、手を振りながら訓練場の方へ去って行った。
「はぁ」
赤石の無邪気さに溜息を吐きながら顔が綻んでしまう。
少しだけ時間を食ってしまったが本来の目的である赤石の執務室へ向かう途中の廊下で高城に会う。
「あ、マツダ君じゃない!ちょっと来て!」
最近では赤石と斎藤としか会っていなかったのでここでも足止めを食らった。
「高城さん、お久しぶりです。今から赤石少佐に話があって」
「少佐なんて後でいいからちょっとだけ!ね!?」
そう言って強引に手を引かれてミーティングルームへ連行された。
話題は案の定一条の話だった。
「最近一条ちゃんと連絡とってる?」
「いえ、最後に手紙を貰ってから一度も話せていないですね」
ミーティングルームに入るなり一条の質問をされありのままの話をした俺に高城に胸倉を力いっぱい捕まれる。
「あんた、あの子の事どう思ってる?」
普通の質問のように聞こえるが今の俺は胸倉を力いっぱい捕まれて腹を露出した状態だ。
これは一種の<脅し>なのだろう。
返答次第では命を奪われるのかもしれない。
「心配ですよ。何かに狙われていると言うし、俺が守ってあげられるなら近くにいたいと思ってますよ。でもどこにいるかもわからない以上俺にどうすることも出来ないんですよ」
ややひきつった顔になっていた事だろう。
高城の顔は鬼気迫るものがある。
「あの子、キラー討伐軍の技術面で中心人物だったから今各国から狙われているって話じゃない。何も悪い事はしていないのにだよ?あんたが守ってあげなきゃ駄目じゃない!なんであんたは遊び歩いてんの?」
最後に平手打ちを食らい、涙目な高城に力いっぱい睨まれる。
「昨日沢山の女の子と飲み歩いてたでしょう?何考えてるの!?」
ようやく高城が怒っている理由を把握した俺は額に汗を浮かべる。
「いや、なにかしようとしたわけじゃないんですよ。少しちやほやされて調子に乗ってしまいましたすみません」
パァン!と大きな音と共に再び高城の平手打ちが俺の頬を打った。
「調子に乗ってんじゃないわよ!あの子がどれだけ君の事を想っていたか知ってる!?もっとあの子の事を考えてあげて!」
胸倉を掴んでいる高城の手をそっと握り冷たい両手で握りえもいえぬ気持ちになる。
「高城さん、俺は多分政界で一番一条の事を思っていますよ。思っているというよりは思想が全く一緒なんです。彼女の意志を継ぐ事が俺にできる精一杯の想いだと思ってます。安心してください」
「今あの子は何してるの?」
今度は潤んだ目で訴えかけられられるが高城の問いには答えられそうにない。
俺自身が彼女の行方を追っているのだから。
「何かやりたいことがあるようで、お金が必要だという事なのでキラー討伐の報酬を大量に振り込んでいます。今の所なんとか生きているんじゃないかと思っていますよ。俺は彼女を愛していますし今後裏切るつもりもありませんよ。この先短いですからね」
「あんたが死んだら意味ないじゃない!ちゃんと生きて支えてあげて!」
「安心してください!俺は一条も皆も全員守りたい!この腐った世の中の恐怖から!」
言い終わっると同時に体が勝手に動いたのだろうか高城を抱きかかえる形になってしまう。
特に気があったわけでも無くおれは高城の唇を奪った。
再びパーン!という平手打ちの音が響き、高城はミーティングルームから去って行った。




