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65、誘拐

 色々なお店を見て回りたかったが自分の格好が軍から支給された格好で高級クラブに入るにはあまり相応しくないと思われているのだろうか、満席という理由で断わられるばかりで中に入る事も出来なかった。


中には扉の隙間から見える店内に明らかに暇そうにしている女性が立っているお店もある。


俺も自分の格好がどのようなものか位わかっているので特に文句も無く引き下がる事にした。


仕方なく帰宅しようと歩き出した時、すぐ横に車が止まったと思うとスライド式のドアが開いて中から黒ずくめの男が数名襲い掛かって来た。


当然掴まれても引きずり込まれる事は無く、数名をいなしたり足をかけて転ばせたりしてやり過ごそうとした。


「一体なんなんだあんた達は」


「誘拐だ、命が惜しければ同行してもらう」


「断わる」


リーダーのような男とほんの少し短い会話をしたのが仇となった。


後ろで倒れていた一人が俺の首筋にスタンガンを食らわせてきた。


流石に生身の場所を狙われては無傷という訳にいかなかった。


「くそっ!」


一瞬よろめいて片膝をつくと今度は数人から首筋や背中にスタンガンを浴び意識を失った。



 目が覚めると足元から胸元までをチェーンでぐるぐると巻かれた状態で床に放り投げられた状態だった。


恐らく大した時間は経っていないだろう俺の生体情報を基地の誰かが監視していてくれてGPS情報から救援を出してくれないかとも考えたが生体情報の監視は一条が主に行っていたらしい。


部隊の出撃が無ければ誰もみない、というのが普通なのだろう。


周りを見渡すとどこかの倉庫のようでコンテナや木箱が並べられていて外からは並みの音が聞こえてきた。


随分遠くまで連れて来られてしまったと溜息を吐く。


すると大きな扉が開き、先程襲ってきた数名が入ってきた。


「おい、このカードの暗証番号を言え」


男の手には例のクレジットカードが握られている。


恐らくATMから沢山金を引き出せたり高いものを買ったりできると思ったのだろう。


残念ながらこのカードは俺の義手と関連付けられているようで、右腕を一緒に切り離して持っていくしか使い道が無い。


「1111だよ」


「嘘だな」


「本当だ。ただ、俺が近くにいないと作動しない。残念だが諦めてくれ」


「それも嘘だな」


「最初に手術された右腕にリンクされているから俺がいないとエラーになるらしいんだ、まだ死にたくないだろう?今なら何もせずに帰してやるから諦めてくれないか?」


「右腕だな、誰か!腕落とせる物持ってこい!」


リーダー格の威勢のいい男が一人を遣いに出させる。


助かるのはあいつだけだろう。


「俺達を返り討ちに出来ると思っているんだろうがチェーンに巻かれた状態でよく言う。右腕の情報を吐いた事でチャラにしてやるよ」


「そうか、お前らみたいな屑なら練習に丁度いいな」


「はっ、せいぜい強がってな。おい、扉閉めておけ!」


そして腕を切り落とすための道具を探しに行った男が来るまで扉を閉めてくれたのだろう。


こちらとしても万が一誰かに見られては困るので好都合だ。


スタンガンのせいでしびれた首元やリーダー格の男の気に入らない話し方、今まで怒りを抑えていたが爆発させるには好条件が揃っているし、こんな屑ならば遠慮なく殺意を向けられる。


俺はチェーンに巻かれたままありったけの怒りと殺意を目の前の男たちに向けた。


思惑通り目の前にキラーが現れた。


先日戦ったクローンのキラーよりもはるかに大きく今日に限っては頼りになる。


「おい、なんだこいつは!」


丁度リーダー格の男の前に現れてくれたおかげで直ぐに気付かせることが出来た。


滑走路で試した通り直接殺意を向けた場合は適当な場所ではなく殺意を向けた相手に対して向かって行くのだろう。


キラーは目の前に屑のような男に一撃を見舞うと胸元から頭の広い範囲に渡って吹き飛ばし、壁に血飛沫を残す。


その後も他の男たち数名も真っ二つに割られる者や地面に叩き付けられてトマトのように大きな飛沫を上げる者、ハンマーのように殴られて潰れる者。


俺は怒りで高揚していたのだろう。


「はははははは!」


という笑い声と肉が打ち付けられる重低音が絶妙な和音を奏でているように思えた。


全て倒し終わりただ佇むキラーを前に俺は暫く笑い続けていた。



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