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53、クローンの行先

 銀行から宿泊施設に戻った俺はキラー討伐軍の基地に連絡を入れた。


先程呼んだ一条からの手紙によると新しくキラーが五体出現しているようだった。


そして俺であれば討伐する事が簡単だと言う。


とは言っても今度キラーを討伐した時に自分の身に何か起っても義体を作ってくれる一条はいない。


だが一条が憎しみによってキラーを新たに生み出したのだとしたらそれを止めるのも俺の役目だと思ってしまう。


電話を鳴らすと高城オペレータが出た。


「マツダさんですね、お疲れ様です」


「あの、新しくキラーが発生したと聞いたのですが、俺に出来ることはありませんか?」


「あると言えばあるのですが・・・色々と事情が複雑で」


「キラー討伐用の新兵器はちゃんと稼働できそうなんですか?」


「んー・・・私からはなんとも言えないわ。少佐に繋ぎますので少し待ってください」


高城はそういうとよくあるクラシックな音楽の保留音を鳴らす。


ほんの少しだけ待って赤石が電話に出た。


「マツダさん、おひさしぶりです」


「お久しぶりです。俺に何か手伝えることがあればと思ったのですが」


「それに関してですが、色々と事情が複雑で。もし可能でしたら基地までご足労願えますか?」


「わかりました、すぐ行きます」


そして俺は電車で基地に向かった。


電車の中では出入口上部に備え付けられているモニターに最近のニュースが映し出されていた。


そのモニターには<キラー消滅間近に謎の大量発生>という表題と共に<再び五か国で同時発生>という文字が横に流れていた。


(やはり一条の言う通りだったか)


なぜ自らの報復をこのような形で行ったのか事前に相談をしてくれれば何か変えられたのではないかという無念だけが募った。



 基地に着くと真っ直ぐに執務室へ向かった。


恐らく作戦室からも監視カメラの映像で確認されていると思ったが特に声を掛けても話題が見つからず気まずい思いをするだけだと思ったからだ。


ノックをして赤石の返事を待って扉を開ける。


既に応接用の椅子に腰を掛けていた赤石が律儀に一度立ち上がり平手で着席を促してきた。


そして先に椅子に腰かけた俺に対し、腰を深く曲げて頭を下げた。


「マツダさん、一条君の事、大変申し訳ありませんでした」


「頭を上げてください。赤石さんは自分の役目を果たしただけなのでしょう」


「私の目から見てあなたは一条君の事を少なからず大切に思ってくれていたのだと思います。マツダさんと会ってからせっかく明るくなってきた彼女の目を再び曇らせてしまいました」


「俺もちゃんと話を聞いて間違った方向に進まないように説得するべきでした。今回のキラーは一条さんによるものです。俺が責任をもって全て討伐したいと思ってここに来ました」


「そうでしたか、やはり一条君が・・・ですが再びキラーを発生させることができません」


「なぜです?」


「我々はキラー討伐の為にマツダさんのクローンを生み出しました。マツダさんのDNAをもつ生体でキラーに対抗することで反撃無く討伐出来ると一条君からの提案があり、軍でもその案を採用することになったからです」


「でも、そうはならなかったと?」


「いえ、実際にはそうなったのでしょうね。私がマツダさんの事を見捨てなければ」


「見捨てる?」


「そう、以前にお伝えした命を懸けてでもキラーの討伐を行って欲しいという事です。マツダさんが自分自身と決着を付けなけらば終わらない。私はそう考えていました」


「俺も同じです。全て自分で倒す事でけじめになると思っていました」


「一条君は違ったのです。何としてでもあなたを死なないようにとクローンの開発をしたのでしょう。ですが私が必ずマツダさんに討伐してもらうと言ったばっかりに彼女を怒らせてしまったようです」


「それが彼女の言っていた<許せない>という言葉なんですね」


「一条君と会えたのですか?」


「いえ、手紙が来ていました。たぶん、もう、会えないんじゃないかと思います」


「そうですか・・・それで、一条君の作り上げたクローンの事なのですが、実は米国に引き渡さなければなりません。これを拒否することは米国からの侵攻を許してしまう事になるのです」


「なぜそんな事に・・・」


「当初マツダさんの身柄の引き渡しを強く要求されていましたが、我々としてはマツダさんに最後のキラーを討伐してもらわなければなりません。そして何度も断わっているうちに武力行使を行ってでも引き渡してもらうと言い出しました。そしてマツダさんと同じDNAを持つクローンをキラー討伐用の兵器として引き渡すことになってしまいました」


「なぜ、俺を米国に引き渡さなかったんです?」


「米国に行ってもキラーの討伐、という目的は変わらなかったでしょう。しかし、全てのキラーを討伐した後にマツダさんの体に残された義体の技術を奪われるわけにはいかないのです。それと、私はやはりマツダさんが全てのキラーを倒すというけじめが必要だと思っています」


「俺も自分でやるつもりでしたから、けじめには同感です。それよりも、この義体はそんなに凄い技術なんですか?」


「何を言っているんですか。マツダさん、あなたは拳を振るうだけでコンクリートの壁に穴を開けられて石を投げれば砲弾のような威力で投擲することが出来ます。それを考えればどれだけ凄いかがわかるでしょう」


「まあ確かにそうですが」


「一条君はその作成から施術までを全て一人でこなせています。そんな事が出来る人物を軍が放置している訳がないのです」


「だから一条さんが追われているんですね?」


「そうです。米国がマツダさんを獲得するのはキラー討伐という名目で義体技術の獲得が主な目的なのでしょう。そして一条君はマツダさんのクローンに怒りの感情を植え付けてからここを去ったようです」


「そのようですね」


「ですので、クローンを起動した瞬間にキラーが発生してしまいます。これは我々の意志で好きな時にキラーを発生させられるという事です。キラーが発生するという事は必ず被害者が出ます」


「キラーを発生させるスイッチを握っている以上、自分からスイッチを押せないって事ですね」


「そうです、クローンの起動イコール殺人行為と同じだからです」


「それで、米国には引き渡す事になっているんですか?」


「そうです、明日の正午には米国の輸送機が到着する予定です」


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