51、一条の置き土産
高城が再びキーボードを操作するとモニターに映し出された世界地図に五つの点が光っている。
「なんで?なんでまた増えたの?」
高城はキラーの情報を集めるためより一層早くキーボードを操作する。
各国のキラー発生現場の映像が映し出されるがどれも今まで同様黒い塊が人々を殺戮していく様子が映し出されているが先日まで現れていたキラーと違い動きは遅く黒い塊も人並の大きさだった。
赤石が
「まさか!」
と思い出したように声を上げ受話器を取って研究室を呼び出す。
「斎藤君!<MK,ONE>の状態はどうなっていますか!?」
普段から作戦中でも役割の無い斎藤は警報が鳴っても研究室に籠ったままだったが赤石の指示もありマツダのクローン体<MK,ONE>のインターフェース変更の為起動実験を行っていた。
「先程丁度起動を行って作業を始めた所です。どうしました?」
「<MK,ONE>の脳ホルモン分泌状況はモニターできますか?」
「ええ、出来ますが、先程起動させたばかりでまだ意識のようなものは・・・ありますね・・・なんだこれ、大量のアドレナリンが分分泌されています!」
「今すぐ起動停止してください!」
「りょ、了解です!」
斎藤は受話器を放り出すとコンピュータに向かって操作を始めるとすぐに停止という文字が現れモニターにも先程まで大量に表示されていたアドレナリンの数値もゼロに戻っていた。
「なんだったんだ一体・・・」
作戦室ではモニターを監視していた高城も急に消えたキラーの反応に手が止まる。
「キラーの反応、消失しました・・・少佐、これは一体・・・?」
「一条君なのか・・・」
「えっ?」
「私は軍と政府への報告で席を外します。暫く執務室から出られないでしょうから集めたデータをまとめたものを執務室のコンピュータへ転送してください。斎藤君にも同様の指示をおねがいします」
「りょ、了解です」
ドアの前で固まっていた大塚も目の前を通り過ぎる赤石を黙って見送る。
「どうなってんだよ・・・」
「知らないわよ!」
研究室では倉庫奥の培養室で培養カプセルにケーブルを繋いだコンピュータで斎藤が情報の分析を行っている。
「俺は技術屋なの!こんな、クローンとか畑違いだっての!インターフェイスの変更くらいなら簡単だけど生体情報なんて知らないっての!一条みたいな変態と俺を一緒にしないでくれよなぁ!どんな情報が必要なんだよもう!」
一人で半ば自棄になりながらキーボードを操作している。
奥の<MK,ICHI>と看板が掲げられたカプセル内には一条の子らしき幼体が入っていて少し前に見たばかりなのに成長が著しく既に薄らと人の形を作り始めている。
一番手前の<MK,ZERO>は未だ両手両足から管のようなものが伸び血管のような束のようなもので繋がっている状態だ。
カプセルに顔を近付けてよく見てみると血管のような管が細胞分裂を繰り返し少しづつではあるが伸びているのがわかった。
斎藤は苦い顔をして舌を出し再びコンピュータに戻り作業を再開する。
「はぁ~」
数分に一度、深いため息を培養室に響かせながら。
赤石は執務室で片手に電話を持ったままだ。
一度通話が終わっても次の報告先に連絡を入れる。
それだけならまだ良いが、通話が終わった瞬間に電話が鳴る事もしばしばだった。
「ええそうです、彼のクローンですので可能性はゼロではなかったのですが事前に脳は機能しないようプログラミングを・・・はい、はい、え?引き渡しですか?はい、それは可能ですが現段階で起動させるのは危険かと・・・了解です」
技術的な問題があったのではなないか、クローンなどという確立されていない技術を使ったせいだ、米国への引き渡しはどうするのか等の問い合わせが多く、その対応に追われていた。
クローンは元々外部から指示を入力しその指示通りに動くよう設計されており、火器を持たせてヘリやドローンでキラー出現地区へ輸送した後火器にて討伐する流れを考慮して作られており、自ら脳を動かす事は出来ない仕組みになっていたはずだった。
今度は高城と斎藤からそれぞれまとめ上げられたデータが送られてくる。
流石の赤石も電話に出続けて説明を繰り返すうちに疲れてしまったようで背もたれに体重を預け頭の後ろで両手を組んで天井を眺める。
Prrrrr...
暫くの間執務室に電話の着信が鳴りび引いた。




