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49、一条の陰謀

 マツダが遠くへ移動したことは一条の報告によりすぐに基地に知れ渡った。


直前に話をしていた赤石は最善の方法としてマツダの移動を称賛した。


一条はマツダが死んでしまわないようキラー対策にと開発したマツダと同じDNAを持った人形を使った討伐を提唱したが、赤石はあくまでもマツダが最後の一体を討伐する事にこだわっている。


「少佐、納得がいきません。マツダさんが死なない方法があるのだからその方法でキラーの討伐を行うのが当然だと思います。そのための開発でもあったはずです」


執務室で一条は赤石の机に両手を叩き付けながらマツダが死なない方法でキラーを討伐するよう訴えかけにきていた。


「違います。彼が万が一失敗してキラー消滅への道筋が無くなった時の予備です。一条君、少し私情を挟みすぎです。このままではキラー対策の技術者から外れてもらわなければなりません。キラーは無からず彼に討伐してもらう。これは絶対条件です」


一条は机に両手を付いたまま俯き泣いているのか怒っているのか、小刻みに震えながら声を絞り出した。


「理由を・・・理由を教えてはもらえないでしょうか?」


「彼がキラーを発生させたのですから彼の手で終わらせてもらわなければなりません。もし生き残ったとしてもその後彼を処分する事になるでしょう。これは各国から彼の身柄を引き渡せと圧力を掛けられている政府の意向でもありますし、軍としても最終的には発生源を討伐した実績を残さなければなりません」


「では!私たちの身勝手で彼に死ねと言うのですか!?」


顔を上げた一条は目に溜まった涙を震わせながら赤石を睨みつけた。


「私たちの勝手ではありませんよ。彼の為に命を落とした人が何人いるか一条君も十分わかっているはずです」


「違います・・・。マツダさんがキラーを発生させたんじゃない。私達や周りの人間がキラーを発生させたんです!欲ので満たされた奴らの餌食になって苦しんで、我慢できなくなってしまったのがたまたまマツダさんだっただけの事です!周りの人間が追い込んでおいて責任をマツダさんにだけ押し付けるなんて許せません!」


少しの間赤石と一条の睨み合いが続き、赤石が険しい表情で口を開く。


「では、今日限りであなたを解雇します。元々軍人ではなかったので解雇が私にできる最も重い処分です。既にキラー討伐の目途は付きました。今までご苦労様です」


一条は勢いよく執務室の扉を開けると


「きゃぁ」


という声がする。


扉の後ろに高城が潜んでいたのだろう。


「ちょっと!一条ちゃん!?」


高城が呼び止めるが一条は振り返る事も無く研究室へ向かった。



 勢いよく研究室の扉を開けると作業台にいた斎藤が手に持っていた工具を机に落とした。


「おいおい!びっくりさせないでくれよ!」


一条はまっすぐ斎藤の隣の椅子に座り真っ直ぐ斎藤の方に向かい神妙な面持で斎藤をじっと見つめた。


「なんだよ・・・俺には嫁さんがいてだな・・・」


「違いますよ馬鹿じゃないですか?」


「冗談だろう?で、なんだ?」


一条の眼差しに尋常ではない何かを感じ、斎藤も工具を置き一条に向かって座りなおす。


「私は今日で解雇されます」


「はぁ?なんでまた?」


「少佐のやり方は間違っています。私は許す事が出来ません。なので、解雇されます」


「マジかよ!で、<あいつら>はどうするんだよ?」


「ゼロワンの二体は意思を持つ事はありません。ですのでそのまま軍事利用していただいて構いません。ただ、イチの方だけはある程度育ったら保護してもらえないでしょうか?」


一条が椅子から立ち上がり斎藤に頭を下げる。


「確かにあれは持って帰れる代物じゃないがな・・・」


「多分私は色々な組織に狙われて消される事になると思います。消される気はないですが逃亡生活にあの子は連れて行けません」


「わかった。わかったが、いつか迎えに来てやれよ」


「生きていたら」


「必ず生き残って来い」


「自信ないよ」


一条が声を震わせながら俯く。


膝に涙が零れ落ち


「うわぁぁぁん」


と声を上げて泣いた。


斎藤が優しい笑顔になり一条の頭を撫でる。


普段口の悪い斎藤だが、一回り年の離れた一条の事を可愛い妹のような上官として可愛がっていたつもりだった。


「それにしても少佐は冷たいなぁ!」


研究室に暫くの間一条のすすり泣く声が続いて落ち着いた頃、斎藤が陽気に話始めた。


「よく考えたら話し方も少し冷たいよなぁ?上官なのに常に敬語で俺たちに壁作ってさ!」


「そうです、きっと最初から私達と仲良くする気が無かったのかもしれません」


落ち着きを取り戻した一条も斎藤の愚痴に加勢する。


「まぁ?上官だからな、最初からそうだったのかもしれないけどな?特に俺らみたいな技術者科学者なんかは畑違いだもんな」


再び二人に沈黙が訪れる。


少しして一条が立ち上がった。


「では、私は行きます。お土産にキラー避けの腕輪を貰っても良いです?」


「ああ、いくらでも持っていけ」


一条が斎藤に笑顔で頷いて見せると倉庫奥の培養室へ向かう。


中に入ると一般に配布されてるものよりもDNA入りのガラスケースが大きい腕輪を腕に身に着け、奥の培養カプセル前のコンピュータに腰掛ける。


キーボードでプログラム画面を開きコードを入力しエンターキーを押すと


<computer program start>


と画面に表示される。


そのままプログラム画面を閉じると一番奥にある<MK,ICHI>の培養カプセルを抱きかかえる。


中には臍の緒の代わりにチューブで繋がれた半透明な胎児が繋がれていた。


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