表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/87

48、一条との別れ

 病室に戻ると一条は相変わらず寝たままだった。


この流れも最後なのだと思うと感慨深い。


一番最初は誰かもわからなかったが二度目になると床に寝ていた事に驚いたものだ。


ベッドに腰掛け一条の頭を撫でる。


前のように起こしてしまわないように撫でるふりをしていたのかもしれない。


優しく撫でようにも手の感触がなく、圧力が無ければ肩で重みを感じる事もない。


ベッドが揺れないようゆっくりと立ち上がりいつもの服に着替える。


そしていつものように丁寧にクリーニングされた包み最後の思い出として持っていく事にした。


テーブルには持ち物として携帯電話が一つ。


今日からホテルを転々とするのだから鞄の一つでも持っていた方がよさそうだ。


静かに病室扉を開け一条の最後の姿を目に焼き付けて基地を出た。



 赤石の言う通りならば基地にはキラー討伐用の兵器があり、俺がいなくても基地から十五分以内の場所であれば対応可能なはずだ。


それならば基地から遠い場所にという理由で一番東にある居住区の方で宿を探す事にした。


このあたりならば大型テーマパークの近くという事もあり宿泊施設に困る事はなさそうだ。


世界中のどのテーマパークでもキラーが発生した事例がないという事もあり、休日には連日多くの人が列を作っているようだった。


当然周囲の宿泊施設にも人が流れる為、予約状況によっては長期の宿泊は難しいようだった。


駅を降りると周りにはデパートのようなものは何もなく、様々な種類のコンビニが密集している。


駅から五分程歩いた所に生地にこだわった世界的に有名な衣料量販店を見つけた為そこで無地のバッグパックと手袋、替えの肌着を買った。


携帯電話で予め予約していたホテルのチェックインの時間にもまだ早い為、地図アプリで偶然見つけた動物園に足を運んだ。


都市部の動物園という事もあり、肉食の動物や大型の動物は飼育されておらず、鳥類や爬虫類、ふれあいコーナーに兎や羊がいる程度だった。


一通り見て回るがどこで立ち止まるという事も無く、ベンチに腰掛けて時間を潰す事にした。


暫く経った後携帯が震える。


画面に一条の名前を確認して通話ボタンを押した。


「もしもし」


「マツダさん、随分遠くまで行ったんですね」


「ええまぁ、赤石さんがキラー対策の兵器を開発したと言っていたので、広範囲をカバーできるように少し遠くで待機することにしました。キラーが発生したら電話でナビしてもらえると助かります」


「それは構いませんが、私が一人で寂しくはないかな?とか思いませんでしたか?」


「思いましたが、最後に言葉を交わすと別れが惜しくなってしまいそうなので声を掛けずに出てしまいました。すみません」


「キラー対策はマツダさんが生き延びられるようにと思って開発した兵器でもあります。マツダさんが最後の一体を倒した時に命を落としてしまうような事があれば私達の子供の世話をする人がいなくなってしまいます」


「それじゃあ一条さんが子供の世話をしないみたいじゃないですか」


「私が子供の世話を出来るような性格だと思っていますか?」


「できないかもしれませんね。でも、あなたは優しい人です。優しい人なら不器用でもちゃんと子供の世話を出来ると思っています。それに、その子の未来の為にもキラーの討伐をしておかなければならないでしょう?」


「そのための兵器です。マツダさんの体に被害が出ないようにマツダさんのDNAと疑似的な脳波を発生させる人形にキラーを討伐させキラー討伐時の生体破壊をその人形に向ける事が出来るはずです」


「そんな物まで作っていたんですね。ですが、これは俺の生き甲斐なんです。もしもその人形に生体破壊が起きずに遠くでやられたキラーによって死んでしまうような事があったら死んでも死に切れませんよ。俺は自分の意志ではなくその人形に殺されたと感じてしまいます」


「でも・・・」


「残り一体です。そう簡単に近くには現れないでしょうし、俺も怒りを溜めないようにあまり外に出ないようにしますから」


「頑固ですね。では、今度そちらに遊びに行っても良いですか?」


「もちろん、どうせ暇ですから。今だって時間を持て余して動物園に来てしまいました」


「マツダさんに動物園は似合いませんね」


「はははっ、でも、二人なら楽しかったんでしょうね」


「そうですね、誘って欲しかったです」


「今度は誘いますよ、では」


少し長めの電話を切ると空を見上げた。


雲一つない冬の空は吸い込まれるような深い青で、涙が頬を冷たく撫でて落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ