42、マツダと一条
病室には先程と同じ格好のままで寝ている一条がいる。
俺はベッドに腰掛け、一条の頭を撫でた。
「ありがとう」
夢の中だとはいえ俺の味方になってくれ、現実に戻ってもこうしてそばに寄り添ってくれ、体まで直してくれている。
こんなに疲れ果てるまで。
「おはようございます」
義手の肌触りが悪かったのだろうか、一条を起こしてしまう。
「おはようございます、一条さんのお陰で足を失ったのに元気ですよ」
「そうですか、安心してください、足は失っても生殖機能は無事でした」
一条は起き抜けから恥ずかしくなるような事を言う。
「もし次、右足を失う事があったらその時は生殖機能も失うかもしれませんね」
楽しそうにピースサインをする一条に、恥ずかしさを紛らわすように冗談を言って返した。
「そうですね、次はきっと無理でしょう。なので次の討伐前までに私は赤ちゃんが欲しいと思っています」
完全に目が覚めたのか、大事なことを言っているからなのか、一条は急に真面目な顔をする。
「赤ちゃんですか、まだ結婚もしていないですよ?」
「結婚していなくても妊娠はできます。あれ、もしかしてマツダさん、赤ちゃんの作り方を知らないんですか?」
一条がからかうような悪戯な顔をしながら指で突いてくる。
「知ってますよ!じゃあ、今度家で」
女性との関りが殆ど無かったため一度もそういった行為を行った事が無く、一条の挑発に乗った形になってしまった。
男として興味が無かった訳ではなく、それに付随する様々な行動を考えると面倒だった。
俺は立ち上がると今まで通り用意されているいつもの服を取り、その場で着替える。
もう何度も手術をしてもらっているのだから目の前で裸になった位どうという事もないだろう。
「今日はこれからどこへ?」
着替え終わるのを待っていた一条が起き上がりベッドに腰掛けている。
「訓練場に行って足のリハビリをしようと思います。腰から足にかかる重みにまだ慣れなくて」
「それは良い心がけです。ただ、あまり張り切り過ぎて施設を壊さないように気を付けてください」
俺は苦笑いで頷き、一条は笑顔で手を振り送り出してくれた。
訓練場に行こうと外に出ると既に空が薄らと赤く染まり、日が落ちる準備を始める。
中に入ると誰もいないようで明かりもついておらず静寂に包まれていた。
誰もいないリングに上がると戦闘態勢を取り、ステップを踏むが生身の足と義足の踏み込む力が僅かに違う。
義足は義手同様思い通りに動かすことが出来、足先の向きだけを変えたりつま先立ちをすることもできる。
少し体を動かすと生身の足と義足も同様に分散して腰に重みを感じることが出来る。
今まで意識せずに動いていたが腰で支えている状態の重みがかなり重いものだと感じられた。
路上生活の時のひ弱な体じゃ堪えられなかったんだろう。
一条には感謝しなくてはならない。
自分でキラーを発生させて、自分で討伐した事の尻拭いをさせているようなものなのだから。
先程の一条の言葉を思い出し下穿きのファスナーを下ろして下着を引っ張り下半身を確認する。
まだ一応付いているようだが周囲の皮が義足の金属質の筋に張り付いて見栄えの良いものではなかった。
俺は溜息を吐きながら下穿きのファスナーを上げてリングを降りた。
未だ一条の言葉が頭から離れず冷蔵庫から水を取ってベンチに腰掛けた。
近いうちに一条と体を重ねる事になるだろうと思うと落ち着かなくあれこれと想像してしまう。
一条も似た者同士と言うのだからそういった経験はないのだろうか?
大人とはいえあのような小さい体で大丈夫なのだろうか?
想像を膨らませれば膨らます程に卑猥な妄想が膨らんでいき、次第に股間が勃起していく。
一人暮らしで働いていた時はよく一人で自慰もしていたものだが、路上生活から今日に至るまで勃起するような生活をしていない。
下穿きを浮き上がらせる程の勢いに困惑し先日のキラーとの戦闘や前の職場での嫌な事などを思い出して気を紛らわせようとするが一向に収まる気配がない。
このままでは自宅に帰る事も出来ないだろうと仕方なく便所で処理を行おうと立ち上がった時、訓練所の扉が開いた。
「マツダさん、言い忘れました」
一条が入ってきた。
俺は出来るだけ股間の膨らみがばれないように椅子に座り、前屈みになるなどして誤魔化す。
「変な妄想をして勃起してしまったらなかなか収まりません。今まで体全体を巡っていた血液の循環が義足によって大きく変化しているので心臓から送られる血液の圧力がかなり高めになってしまっています」
「へー、そうなんですね」
上の空で返事をするが一条がこちらの心配をよそに近づいてくる。
そして隣に座ると俺の右太腿に右手を置き、耳打ちする。
「今ここでしてしまいましょう」
「えぇ!?」
俺は前屈みのまま驚く。
「今日は大塚さんももう帰っていますし訓練所を使い人もいませんし、鍵もしました」
そう言ってベンチに訓練所の鍵を置く。
外から開けられないようにわざわざ持ってきていた所を見ると俺がこのような状況になるのをモニターしていたのだろう。
「いいんですか?こんな場所で」
「いいですよ。初めての場所がベッドでは無いのが残念ですがベッドはまた今度にします」
そう言って顔を赤らめた二人は口付けを交わしそのまま体を重ねていった。




