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36、確信、葛藤

 基地から自宅へ戻った俺は直ぐにテレビを付けた。


大型の高級機があったお陰で9チャンネルまで同時に表示することが出来る。


昼時のバラエティ番組が殆どで通販専門チャンネル以外のチャンネルを表示するが、ニュースを行っているのはせいぜい国営放送だけだ。


キラーが出始めた頃は被害が出る度に臨時ニュースとして取り上げられていたがほぼ毎日繰り返される被害に視聴者から苦情が多く寄せられた為、臨時ニュースとして通常の番組を中断する事が無くなっていった。


ニュースの時間帯にも被害の場所と人数が端的に説明がある中でとりわけ著名人が被害にあった場合のみ個人名が公表される程度だ。


かといって先程見た低俗な内容を垂れ流していた動画配信者が国営放送で取り上げられる事などないのだろう。


落ち着かず、まだ昼だというのに冷蔵庫からジンを取り出しタンブラーに注ぐと氷も入れずにサーバーから炭酸を注いだ。


ソファーに戻り再びテレビに目をやるが相変わらずバラエティ番組ばかりだった。


もしかすると自分の考えすぎなのではないだろうかと現実から目を背けるようにソファーに浅く座り天井を眺めた。


だが、考えれば考える程悪い方向に考えてしまい考えなくて良い事も考えてしまう。


一条はなぜ俺が発生源だと考えつつも交際を希望したのだろう。


テレビ番組が一向に変わらない事に苛立ちを覚えるが自分自身が苛立つ事に対して恐怖心が芽生えていた。


一度気持ちを落ち着かせる為テレビを消し、後ろポケットに入れていた携帯端末を取り出て先程のキラー発生に関する情報が無いか検索をする。


テレビでは放送ていない情報も個人の投稿によりいくらでも手に入れることが出来る。


<キラー 被害>で検索を行うと直ぐに今日の被害が出る。


直ぐに消失した事が珍しい為情報が画面いっぱいに羅列された。


被害者は10名程度と過去最低、発生時間は2分と過去最短という見出しが多かったが、<人気動画配信者犠牲に>という見出しに鼓動が高鳴った。


恐る恐る見出し文字を指で触れると詳細な記事が表示され、配信動画の一部も公開されていた。


動画の見出し画像には周囲の風景が映っており、先程見たキラー発生現場に向かう動画の始まりと似たような雰囲気だ。


見出し動画に触れると動画の再生が始まり、やがて聞き覚えのある不快な声が聞こえる。


声を聴いた瞬間鼓動はさらに早くなり額から汗が滲み出てくるのを詳細に感じられた。


(あの時、こんな奴から真っ先に死ねばいいと思ってしまったからなのか)


動画を止める事も出来ずにただ固まって見ていると動画後半になると人々の誘導や転んで怪我をした人の介抱を行っている。


前に見た時は半笑いな不快な口調に苛立ち途中で消してしまったが、どうやら動画を配信しながら避難路の指示や怪我人の救助を行っている人物のようだった。


コメント欄には動画配信者の死を悔やむコメントが多く、<逃げる人の誘導を行っていた為に狙われた><被害者の少なさを見ると焦点を絞って狙われた可能性>等のコメントが目立つ。


ここでようやく俺がキラーの発生原なのではないかという疑問が確信に変わった。


変わったというより、罪悪感で自分が発生源でなければならないという半ば強制的な既成概念が必要な精神状態に陥ってしまった。


また、早朝に行った大塚との訓練の時も思うように体が動かずに苛立っていた。


その結果一度キラーが発生している。


その前の川野が殺された時も直前に電話で口論になり心底怒りが湧いていた事、今までに屋内にキラーが発生したことが無いという事も俺が発生源ならば頷ける。


思い返せば路上生活をしていた時も駅前のモニターを眺めては苛立っていたものだった。


だが、一番問題なのは一条の言っていた通りならば次キラーを討伐した時に四肢のいずれかを再び失う事になる。


両腕の時も大概痛かったが次は足が切れるのか首が飛ぶのか胴から千切れるのか、考えただけで胃から喉に込み上げてくるものを感じ、便所へ走った。


朝食に摂ったサラダの残骸を出し切るが一向に吐き気が収まる事が無く、暫く便座を抱え込むことになった。


暫く経って落ち着くと一度リビングに戻り先程作ったジンを飲んだ。


氷の入っていなかったジンは元々温かったようで不味かったが構わずに一気に飲み干す。


すると案の定再び喉に込み上げてくるものを感じ便所に走る。


そして再び便座を抱え込みながら(次のキラー討伐で火器を使い、四肢が吹き飛ばなければ俺の勝ちだ)と瞳に力を込めた。


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