35、キラー発生源
マツダが基地を出た後赤石を含む討伐軍の一員は今後の方針を決めるべくミーティングルームに集まっていた。
今回キラーが今までよりも早く消失してしまったという事もあるが、キラー発生に関する重要な手がかりがあると高城から報告があったからだ。
関係施設への状況報告を済ませた高城と一条が席に着くと赤石が口を開いた。
「では高城君、報告をお願いします」
赤石が教壇から離れ端の席に移ると高城が皆の正面に立つ。
「先日一条大尉からの助言通りマツダカズトの行動予測を元にスーパーコンピュータを使用し導き出された答えがこちらです」
高城が用意していた資料を配布する。
数字がグラフが紙一杯に記載されており一同目を通すが、大塚はいち早く資料を手放した。
「で、あの兄ちゃんがどうしたって?」
大塚が我慢できずに口を開く。
「大塚さんにわかるように言うと、マツダカズトの精神状態にキラーの発生が関与しているという事です」
大塚が<ドン>と机を叩き立ち上がる。
「じゃあ、アイツが犯人だっていうのか!?」
「彼は犯人というわけではありませんが、彼がキラー発生の鍵となっている、という事です」
高城が静かな口調で大塚をなだめるが立ち上がったまま拳を握り、肩を震わせている。
続けて高城が詳細の説明を始めた。
「当初人口分布や気候、各所で開催されているイベント等様々な要因を元に発生原因の割り出しを行っていましたが、一条大尉の助言の元マツダカズトが路上生活をしていた時に見ていたであろうと思われる商業区の駅前モニターに映し出されていた様々なニュース映像の現場とキラー発生位置が概ね一致していることがわかりました」
大塚も半ば理解したようで椅子に腰かける。
他のメンバーは資料の内容を把握できているようでページをめくりながら高城の話を聞いている。
一条だけは何か確信を得ているように資料に目を通さずに黙って高城の話を聞いていた。
「それに加えて1体目のキラー討伐後マツダカズトが義手の手術のために昏睡状態だった時にはキラーの発生がありません。逆に彼の脳から大量のアドレナリンが発生が発生されると間もなくキラーが発生している事がわかっています」
「では、彼をずっと昏睡状態にしておけば良いのではないか?」
斎藤が意見するがその後すぐに一条が反論する。
「それは人権侵害でしょう。それに、この資料だけでは彼が何らかの手段でキラーを操っていた証拠がありません」
「そうですね。それに彼の生命活動とキラーの関係を明らかにしなければ彼を殺してしまったとしてもキラーが消失するという確証がない以上下手に動くわけにはいきません」
赤石も一条と同じく慎重な意見で、高城もそれに頷いている。
「じゃあどうしようって言うんですか?」
大塚は部下を多く無くしている無念がある。
先程よりも落ち着いているが苛立ちを隠さないまま赤石に食って掛かる。
「ひと先ず彼が我々に協力してくれる意思がある以上は協力してもらいます。現状では彼にしかキラーを討伐できていませんからね」
「マツダさんに関しては暫く私に一任して頂けないでしょうか?」
一条が立ち上がり赤石に訴えかける。
「一条君では私情が入ってしまう可能性があるのではありませんか?」
「私情が入るのであれば高城少尉に助言などしません。それに私だからこそ彼から聞き出せる事があるはずです」
「では、マツダさんの情報を包み隠さず報告してもらう事を約束してもらえますか?」
「もちろんです。義手に様々な観測装置を設定したのも私です。なにより私自身が彼がキラー発生の要である事を知りたいと思っています。科学者として、恋人としてです」
一条の力の込められた声に一同が静まり返り、一条は立ち上がったまま赤石から目線を逸らさない。
「わかりました」
赤石は目を瞑って頷き、言葉を続ける。
「ただし、今まで通りマツダさんにはキラー討伐に参加してもらいます。これは本人の意思でもあります。また、彼が原因だと明らかになったとしても彼が自らの意思でキラーを操作しているという確証はありません。くれぐれもこれまでの態度を改め、彼に感付かれないよう諸君には気を付けてもらいます」
「了解です」
赤石の言葉が締めとなり、一同立ち上がる。
一条の顔にはわずかに笑みが溢れていた。




