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3、死闘

 高層ビルの立ち並ぶ駅前の商業地区にいかにも場にそぐわない男がいた。


マツダカズトという男だ。


年齢は20代後半で仕事をしておらず、今までためてきたわずかな貯金だけで生活をしていた。


社会に出てから人付き合いが苦手で、ついに自ら社会と断絶して生活をする事を選んだのだった。


食事は数日に一度閉店間際にデパ地下の半額弁当を買い、水はデパートのトイレの洗面所の水を下穿きの後ろポケットに忍ばしたペットボトルに補給する。


弁当を買っているのだから水くらい良いだろうと考えてのことだった。


水を無料で補給することができるのでコンビニで弁当と水を買うよりも安く済む。


弁当を買って水の補給を終えたら逃げるように外に出た。


自分の格好がお店に合っていない事くらい十分に分かっていた。


 駅前の大きなモニターに映る映像が唯一の娯楽でニュース速報やCMが遅くまで上映されている。


いつものように一番人通りの少ない花壇の脇に腰掛け、弁当を食べながらニュース速報に目をやった。


「たった今入ったニュースです。東大通駅周辺で無差別殺人犯が現れました。現在軍が行方を追っていますが北居住区方面に向かった模様。駅前の繁華街など人の多い場所が狙われる可能性があるため、直ちに屋内等に身を隠してください。繰り返します、、、」


「チャンスだ、、、」


マツダカズトはこの時を待っていた。



 5年ほど前から日本国内に無差別に人を殺害する殺人鬼が現れ、数十人、数百人と大量殺人を繰り返していた。


殺人鬼は全世界にも同時に現れ、みるみるうちに世界の人口が激減していった。


人々は少しでも寿命を延ばそうとかろうじて殺人鬼の襲撃から生き残った人間に機械による義足、義手を施すようになった。


技術の発展はめまぐるしく、家庭用や軍事用に開発が進み、人類の健康寿命が著しく向上した。


そのおかげもあってか街中には四肢の一部を機械化する人が多くみられる。


正体不明の殺人鬼は警察では手に負えず軍によって捜索される事となったが神出鬼没な奴らを一人も捉えることができず、殺人鬼1体当たりに高額な賞金がかかった。


 仕事がうまくいかず、希望をなくしていたマツダカズトは殺人鬼を捕まえて賞金を貰おうと企てていたのだった。


どうせ貯金が尽きた所で飢え死にするくらいなら命がけで一攫千金を狙っても結果は一緒だろうと考えていた。


そこに転がり込んできたチャンスだった。


日本中無作為に現れる殺人鬼がいつか現れるであろう人が集まる商業地区に根城を構えて虎視眈々と待ち構えていたのだ。


マツダカズトは宿泊先である裏路地に隠していたサバイバルナイフを取りに向かった。


勢いよく走り出し3年間待ち続けたターゲットの出現に自然と口角が上がるのだった。


伸び切った髭面に隠れているためすれ違う人にはわからない。



 いつもの裏路地に向かった所、ちょうどその裏路地の表、人通りの多い所で既に殺人鬼が暴れまわっていた。


このままではナイフを回収する前に自分がターゲットになる可能性があった。


逃げ惑う人の群れに肩を取られながらようやく路地に辿り着いた。殺人鬼は目前だった。


路地に入ると壁に並んだエアコンの室外機の裏に隠してあったナイフを取りすぐに路地から出た。


路地に入ってから出るまでのほんの少しの間に路地の外でにはすでに沢山の人が倒れていた。


「遅かったか。」


思わず声が漏れたその時、その声に気付いたかのように殺人鬼が向かってきた。


先程までの素早い動きではなく、体をこちらに向けてゆっくりと歩み寄ってくる。


思わず後ずさった。


自分に向かってこんなにもゆっくりと迫ってくるとは思ってもいなく、その大きさ、迫力に完全に気圧されてしまったのだ。


利き手にしっかりとサバイバルナイフを握ったまま裏路地の奥まで追い詰められた。


「くっそう!」


目の前に迫りくる大男の脇を抜けて振り返る。


ここでやらなければ無駄死にするだけだったからだ。


マツダカズトは今までの人生にないくらいの勇気で勢いよく殺人鬼にとびかかった。


もちろんナイフを強く握りしめて。


「おぉぉぉぉらぁー!」


大きな声を上げて逆手に持ったナイフを殺人鬼の頭部に打ち付けた。


その瞬間、自らの腕が肩の付け根から弾け飛んだのだった。


ナイフを突き刺した瞬間を殴られたのか撃たれたのか分からなかったが一瞬の出来事だった。

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