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25、義手の力

 射撃訓練場に現れた一条は両手を腰に当てて得意げになっていた。


「マツダさんの義手には討伐隊正式採用銃の基本動作がメモリーされていてグリップを握ると自動で照準を合わせる事ができます。自動といっても腕が勝手に動くのではなく目で照準を見た情報が腕に伝わると微調整をして狙い通りにサポートする動きをすることが出来ます」


片手を腰に当てたまま、もう片手で人差し指を立てている。


見るからに得意気だった。


「一条大尉殿、ちょっと兄ちゃんに肩入れし過ぎなんじゃないですかねぇ?」


大塚がやれやれといった感じに顔を振りながら言う。


「それは、愛ですよ」


「はぁ?」


一条の突飛な台詞に大塚も呆れた様子だ。


「マツダさんには既に言いましたが、色々考えていたら勝手にオプションを追加してしまっていました」


新車を買う時の追加装備のようなノリだった。


ただ、先日の一条の告白を聞いている俺には微笑ましく思える。


「先程もお伝えした通り、サポート機能が充実しているので壁に掛けてあるどの火器を使っても狙った所にピンポイントに当てる事が出来るはずです」


「他にはどんなオプションが?」


つい興味本位で聞いた事がとんだ藪蛇だった。


「よく聞いてくれました。射撃のサポートの他には投球サポートです。狙った所にものを投げる事ができます。私は野球を知らないので変化球はできません。あと、針金一つあれば解錠もできます。あと、万が一の時の為に私の生体情報を、、」


「もうわかったありがとう大丈夫!」


変な事を言う前に遮る。


「はっはっは!じゃあ試しにこれを投げてみてくれ」


大塚はそういうとを野球の球一つ取り出した。


「そんなボールがなんでここにあるんですか」


一条が呆れた顔をする。


「少佐には内緒な」


大塚は顔の前で手を合わせてばつが悪い顔をした。


「じゃあ投げますよー」


野球ボール一つで色々あるだろう軍人達を横目に投球フォームを始めた。


「マツダさん、全力で!」


一条にエール?を送られ、ありったけの力で人型の的のど真ん中目掛けて投げつけた。


ボールが手から離れた瞬間に的が粉々に弾け飛んだ。


「こりゃ拳銃撃つよりも強いな、、、」


大塚は呆気に取られているが一条は再び両手を腰に当てて得意げな表情を見せる。


「ただし、義手以外のパーツは生体なので今のように強い力を使い過ぎると本体が壊れてしまう可能性があります」


「えっ、じゃあ今のは大丈夫です?」


「はい、今のような軽いボールを高速で投げる程度なら影響は少ないですが破壊行動などで生体の骨格よりも強度の強いものを破壊しようとした場合骨格が破損する恐れがあります。その場合、とっても痛いですよ」


一条が腰に手を当てながら近づいてきて指先で小突いてくる。


「今日はもう上がりだな。兄ちゃん、明日空いてたら朝7時にここにこい。戦闘訓練を行う。射撃訓練は必要ないだろう。」


大塚が階段へ向かいながら明日の指示を出す。


「了解です」


明日も特に用事はないだろうから戦闘訓練に参加することにした。


「あと、いちゃいちゃするなら帰ってからにしてくれ」


そう言い残し手を振りながら階段を降りて行った。


 

 大塚に置き去りにされた俺はこれから特にすることもなく壁際の銃を眺めながら一条に話しかけた。


「所で、移送する機械の開発はいいんですか?」


一条が移送機の開発をすると言ってからさほど時間が経たないうちに訓練場に来たことが気に掛かっていた。


「もちろんです。マツダさんの義手を作っている最中に既に設計は終わっているので部品の発注をしただけですので」


「そこまでしておいて俺が手伝わないって言っていたらどうするつもりだったんですか?」


「マツダさんは優しい人です。とても困っている私達を放っておくわけがないと信じていました」


一条が近づいてきて抱き着いてくる。


「今日の業務が終わったらマツダさんの部屋にお邪魔しても良いですか?」


腰に手を待たした状態で顔だけを向けてくる。


下から見上げるいわゆる上目遣いのような目線が艶めかしかった。


「いいですよ。じゃあ晩御飯作っておきますね」


「やった、じゃあ5時10分にお邪魔しますね」


よほど嬉しかったのかスキップで階段へ向かい小走りで階段を駆け下りていった。


(わざわざ聞かなくても今まで勝手に入って来ていたんだよな・・・)


俺は拳銃を元の位置に戻し、粉々になった的をゴミ箱に捨ててから家に帰ることにした。


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