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23、キラー討伐計画後

「少佐、提案があります」


一条が挙手をして立ち上がった。


「一条君、どうぞ」


赤石が発言を促す。


「はい、マツダさんはいわゆる我々の最終兵器です。まず我々で奴の出現場所まで速やかにマツダさんを移送する必要があります。今までのように車両で追っていたのでは到着前に消えてしまうでしょう。瞬時に空路を確保するためマツダさん移送専用機の開発を提案します」


「何か案はあるのですか?」


「あります、ドローン技術を応用したマツダサイクロン(仮)です」


俺はあまりのネーミングに思わず吹き出しそうになったが真面目な作戦会議中だという事もあり手で口を押え入り口の方を向いて肩を震わせた。


「一条ちゃんが変な名前つけるから本人がもうそろそろ笑い転げそうよ?」


高城が助け舟を出してくれたのだろうが余計に面白くなり「ぷぷっ」とつい噴き出してしまう。


「君達、真面目にやってくれませんか、今日はかなり重要な話をしているんですよ?」


この様子だといつもこのような感じなのだろう。


突っかかっていきそうな大塚も黙っている。


「とにかく、マツダさんをキラー出現場所に迅速に移送することが大前提です。今までに出現予測は行いましたが、完全にランダムな為に位置予測はできません」


「では一条君と斎藤君で移送に必要な機器の開発を行ってください。技術や物資の提供が必要なものがあれば各国に支援要請を行うので資料の提出をしてください」


「了解です」


一条と斎藤が同時に敬礼をする。


こういう所を見ると一応軍隊なのだと実感させられた。


赤石の腰の低さもあって皆好き勝手発言をしている印象だが、最終的な決定権はすべて赤石が握っているのだろう。


「あの、俺はどうしたらいいでしょう?」


今まで静観していたがせっかく協力することになったのだ、何かやれることがないか尋ねてみた。


「兄ちゃんは俺と戦闘訓練をしてもらう」


そういって大塚が立ち上がった。


先程向けられた敵視を思い出しつい体が強張ってしまう。


「少佐、構いませんね?」


その言葉と共に大塚と俺が同時に赤石に視線を送る。


大塚は肯定を求める勇ましい視線で、もちろん俺は否定を求めて懇願するような視線で。


「構いません。ただしマツダさんはあくまでも一般人です。怪我をさせる事のないよう注意してください」


散々痛めつけられるのだろうと考えを察してくれたかのような注意に心底感謝の念に堪えなかった。


「素人相手に本気は出しませんよ、安心してください」


大塚はにやりとこちらを見て指を鳴らす仕草をする。


ちらと一条の方を見ると目が合いわずかに微笑んでくれた。


俺の不安を感じ取ってくれているのだろうか、こういった場合の一条の心情は未だ掴みきれていない。


「少佐、私はスーパーコンピュータでのキラー出現位置の予測を再度行ってみようと思っています。先日の国内で同時出現した事象を踏まえると何かわかるかもしれません」


オペレータの高城た挙手をして発言した。


「そうですね。考えられる仮説を増やし、引き続きお願いします」


一通り全員の役割が決まると赤石が立ち上がった。


「では一条君と斎藤君は移送機の開発を、大塚君とマツダさんは戦闘訓練を、高城君は引き続きキラー出現位置の予測演算を、私は各国との情報共有を行います。では、解散!」


「了解です」


一同が同時に立ち上がり敬礼する。


改めてここが軍隊だという事を実感した。



 解散してミーティングルームを出ると一条に声をかけられた。


「マツダさん、ちょっといいですか?」


足を止め一条の呼びかけに返事をすると後ろから大塚が肩を組んできた。


「一条大尉殿、俺たちはこれから訓練なんです。いちゃいちゃするなら訓練の後にしてくれませんかねぇ」


大塚の階級はわからないが一条よりも下なのだろう。


年齢は40代といった所で俺と一条よりも一回り程年上のようなので一条に対する敬語も嫌味のように聞こえる。


「大塚さんも丁度良いので一緒に聞いてください。隣の研究室で説明します」


そういうと俺の手を一瞥してから白衣のポケットに両手を突っ込み隣の研究棟に向かった。


 先日入院していた病室のある下の階が研究室になっているようで渡り廊下を歩き隣の棟に向かうと階段を降り見たこともない機材が大量に置いている部屋に入った。


「まずはマツダさん。あなたに装着した義手は特殊な義手になっています」


「特殊?軍用の義手というだけではないんですか?」


今まで軍用の義手と思っていただけだったが、それがさらに特殊なのだろうか。


「俺の義手で手抜きしたって事かい?」


大塚も怪訝な表情をする。


「違います。まず大塚さん。あなたの義手は肘から先なので主に握力に大きく影響しています。ですので今までよりも強くものを握れるようになっているのは既に体感していると思います」


大塚が黙って頷く。


「そしてマツダさん場合は肩の付け根から腕が千切れていた為、右上半身の殆どが人口の筋で接続されている状態です。」


「それって、どういう事なんです?」


「簡単に言うと、右上半身が全て義手のようなものなので、コンクリート塀位だったら簡単に破壊することが出来ると思います」


「おいおい、俺の義手もそのぐらいにしておいてくれても良かったんじゃないです?」


大塚が不満そうに腕を組んで壁に寄り掛かった。


「先程も説明した通り破損した部位が重要です、大塚さんも肩から飛ばされてくれれば同じ処置が出来ました」


「物騒な事言わないでくださいよ」


強面な大塚も一条には敵わない様子で顔の前で手を振って見せる。


「大塚さんもですが特にマツダさんに注意してもらいたいのが、本気を出し過ぎないように注意してください。コンクリート塀が破壊できる程の力で拳を打ち出すと大塚さんが大変です」


そう言われると合コンでの騒動を思い出し、胸を撫でおろした。


一つ間違えると人を殺していた所だった。


「そういうのはもっと早く言ってくれないと危ないですよ」


「マツダさんなら人を殴らないと思ったので」


偶然に二人が見つめあう形になった。


「お前さん方、付き合ってるんでしょう?なんで敬語なんだ?」


大塚がもっともな指摘ををしてくる。


「これが私たちの形です。それでは訓練程々に頑張ってください。私はマツダサイクロンの開発を始めます」


照れ隠しなのか、言葉半ばで振り返って研究室のパソコン前に座り背中を向けた。


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