22、キラー討伐計画前
作戦室に入った俺は一条の手を握ったまま一条と向き合う。
「あの、一条少尉殿?」
「大尉殿ですが何か?」
「それは失礼。この手はいつまで握っているおつもりです?」
もう片方の暇を持て余した手で指を指す。
失言をしてしまったようで一条が口を尖らせて明後日の方を向いた。
「私の気が済むまでです。家を出るときに約束しました」
「確かに約束はしたんだけどさ、、、」
軍の基地内でこういった姿を晒すのは良くない。
ましてや上官である赤石にまでわざわざ見せつける始末だ。
「基地内ではさすがにまずいんじゃ?」
「いいえ、この姿を全員に見せつけるまで放しません。理由は皆に見せる事で証明できます」
一条に一層強く手を握られ大人しく言う事を聞くことにした。
間もなくしてオペレーターの高城もやってきた。
「一条ちゃんおは、、、、えぇ!?」
高城は扉を開けて中に入るやいなや軍の施設に似つかわしくないカップルを見て驚いた。
(普段は一条ちゃんって呼ばれているのかな?)
「おはようございます」
俺もこれからお世話になるであろう人に挨拶をする。
高城は背の高いミディアムヘアーのちょっときつそうなお姉さん風の女性だった。
髪形が後ろで一つ結びをしているのは制服を着ているからだろう。
一条も結び目の高さを除けば同じ髪形だ。
「一条ちゃん!彼氏なのよね!?手、繋いでるもんね!?」
「ハルさん、私もとうとう彼氏が出来ましたよ」
一条は赤石の時と同じく高城にブイサインをして見せる。
「よかった!一条ちゃんがずっと彼氏が出来なくってそのまんま干乾びていったらどうしようって本当に心配だったんだから!」
高城は涙目になりながら中腰になって一条を抱きしめた。
もちろん手は強く握りしめられたままだ。
「マツダです。今後お世話になると思います。よろしくお願いします」
「え!?あのキラー殺しの!?」
キラー殺しという表現に疑問を感じつつ黙って頷いてみせた。
「一条ちゃんまさか、この人に協力させるために色目使ったんじゃないでしょうね!?」
「違いますよ。お付き合いする事が決まったのはマツダさんが軍への協力を了承してもらったあとです。体も張ってないので安心してください」
「じゃあちゃんとしたお付き合いなのね?安心したわー。今日はお寿司の出前取るわよ!」
そういって一条にウインクすると普段座っているであろうモニターが沢山並んだデスクに座り操作を始めた。
「高城さんは私のお姉さんみたいな人です。いつも彼氏を作れと急かされていたので報告したかったんです」
一条は繋いだ手を引き寄せ顔を近付けて小声で言う。
初めて出来た彼氏を家族に紹介する少女のようだった。
その後研究所主任の斎藤が出勤した時も同様に繋いだ手を見せつけ交際の報告を済ませ繋がれた手はここで一旦放される事になった。
主要メンバー全員がそろった所で高城が赤石に内線を入れた。
そのまま赤石に呼び出された俺達は同じ階の端にあるミーティングルームへ入った。
中には大学の講義室をとても小さくしたような施設があり、教壇に当たる所に赤石が座っていた。
席には既に軍服を来た男が一人座っていた。
先日呼び出された時にいた腕を負傷していた男だったが今は一条が作ったと思われる義手を装着していた。
作戦室から向かった者はもれぞれ決まった席があるようで何も言わずに席に着く。
俺があらかじめ一条に言われていた通りに赤石の横に立ち一同に会釈をすると赤石が話を始めた。
「諸君、既に耳に入れている者もいるとは思いますが、先日キラー討伐に成功したマツダカズト氏が我々へ協力していただける事となりました。銃弾も効かない相手に唯一刃を打ち込む事が出来た唯一の成功例です。その甲斐あって世界同時発生数も5体から4体に減っています。これは紛れもなく我々の勝利へ一歩近づいたと言えます。残り4体を討伐するために全世界からの支援を既に約束されています。衛星、航空機、兵器、兵隊までもが我々の要請によって動かす事ができます」
全世界の厚い支援があると聞き沸き立った。
ただ、一度負傷している大塚だけは冷静だった。
「どれだけ支援があった所でそこの兄ちゃんが役立たずだったら奴に傷一つ付けられないのでしょう?これまで訓練も何もせずに髪にパーマをかけて遊んでたような軟な一般人にまた奴をやれるか疑問ですねぇ」
口調は柔らかいが露骨に敵視を向けて俺に視線を向けてくる。
髪がパーマなのは理髪店の店主に任せたからで自分から望んだわけじゃない。
ただこの場でそんな事を言っても仕方がないので目線を少しそらして静観する。
「大塚君の言う通りです」
赤石は軍服の男、大塚の意見を肯定し、続けて打開策を打ち明ける
「うちの研究チームの予想ですが、キラーはマツダさんの生体反応か脳波等に反応して動きが鈍くなったと予測しています。相手の科学力やどのような生物なのかも未だ不明ですが、マツダさんと接触したキラーが動きを鈍らせ、当時訓練もしていなかったマツダさんの運動能力でもナイフを突き立てるに至っています」
「じゃあ、例の〈魔剣〉ってやつが必要って事ですか」
再び大塚が赤石に突っかかる。
「いえ、大塚君も先日マツダさんが使っていたナイフだけでは効果が薄いとわかっているはずです。先日聞いたマツダさんの話ではミリタリーショップで買ったナイフをおよそ3年間ずっと隠し持っていたそうです。念、のようなものが込められていた。もしくは暫く所持していた為マツダさんのDNAが付着していた等が考えられます。少しでもマツダさんの要素が残っていた為即死を免れた」
「逆にそのDNAのせいで奴を引き寄せてしまったという事は?」
「そのせいで自分の部隊は俺を残して全滅してしまっています」
「ですが、少しでも可能性の高い方法を試すしかない。我々は今まで何の成果も残せていなかったのですから」
何も成果が残せていなかった、という赤石の言葉が刺さったのか大塚は腕を組み、黙り込んだ。




