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1、プロローグ
人の多く集まる商業地区の高層ビルが立ち並ぶ裏路地にうずくまった男がいた。
髪は肩よりも長く髭も伸ばしたまま手入れもされていなく、格好といばひどく汚れた半袖シャツに、下穿きは破れた綿のパンツで履物も衣類同様使い古されたスニーカーといった様子。
時折「うぅっ」と声を上げ、息を荒立てながら震えている。
彼の腕は脇の下から丁度真上に引き裂かれたかのうように腕がなく、辺りには血だまりが出来ている。
路地の奥には大柄な男にうずくまった男のものだろうと思われる腕が頭にぶら下がっていた。
正確には、頭に刺さったナイフを握った男の腕がぶら下がっていた。
男は立ったまま倒れる事無く、また、動くこともなかった。
体格は人間と思えない程大きく真っ黒なボディースーツが頭からつま先まで覆っていた。
路地の外には沢山の人が横たわっており、辺りは血の海となっていてここで悲惨な殺戮が行われていた事が一目でわかった。
救急車の赤灯の明かりがサイレンを鳴らしながら近づいていた。