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最後の談笑

ツクモが人の姿をしていたのはほんの10分ほどだったろうか?

人になった時と同じように光が全身を包むと元の白猫へと姿を変えた。

3人の老人たちはツクモのことを前山の主と認めたようで、額を地面に付けしきりに手を合わせて祈り泣いていた。

その口からはもうしわけねぇと言う懺悔の言葉しか聞こえてこなかった。

ツクモは彼らのそんな姿を悲しみ慈しむように黙って見舞っていた。


ひとしきり彼らが泣き収まるとツクモは彼らに自分たちのすることを説明した。

これから現山の主と話し合いをしに行くということを。

そして3人に対して5つの村へとそれを伝え、ミギテを奉ることを止めるよう説明することを提案した。

彼らは村人を集め会議し説得することを了承した。

そしてしきりに名残惜しむ彼らとはそこで分かれた。

見送るツクモの顔も寂しそうであった。


「なぁ、俺達がすることはいいことなんだよな?」


3人の老人とツクモのやり取りを黙って見守ることしか出来なかったタイヨウは胸にできたしこりを口にせずにはおれなかった。


「ええ、あなたと出会った時に話したと思うけど、この山の【流れ】は滞っているわ。例えそれを臨む人がいたとしても、流れを生じさせる術があるのならしなければならいわ。そうしなければ健全でいられないもの.....」


「はい、ウロもそう思います。タイヨウ様。結果的に自然の厳しい力に膝が折れる時もあるかもしれません。それでも前を向けるのが我々生き物です!!」


「......二人とも本当に逞しいな。俺のいた世界はここに比べれば随分と平和なんだと思ったよ」


「それは違うわ!!どんな環境でも何かと戦うことがあるはずだもの。今のあなたなら元の世界でもしっかりと戦えるはず!!」


少し弱気になったタイヨウにツクモが力を込めて説得する。

その小さな体に似合わない迫力がタイヨウは可愛いと思えてしまう。

そしてあることを思い出す。


「......そう言えば......さっきの姿が本当のツクモの姿なのか?」


何気ない風を装ってツクモに聞いてみる。


「タイヨウ様!?まさかウロというものがいながら浮気ですか!?」


タイヨウの微妙な変化に目敏く気付くウロ。

タイヨウの方からキーキーと抗議する。


「ばっ......浮気ってなんだ!!勝手なことを言うな!!」


ウロの突飛な発言に目を白黒させるタイヨウ。


「そう、私のことが気になってしょうがないのねあなたは?あれが私の本当の姿よ。よく目に刻んだかしら?.....そうね、さっきのあなたは確かに格好良かったわ。けれど、私は元山の主よ。あなたとは超えられない壁というものがあるわ。それでも良いと言うのなら私は........」


「ツクモ様何を言ってるんですか!?タイヨウ様は渡しませんよ!!」


先程まであれほど慈愛に満ちた表情をしていたツクモは猫のくせに頬を赤らめだらしなくニヤニヤしながらごちゃごちゃと言っている。

ひょっとしたら悲しみを誤魔化したい気持ちがあったのかもしれない。

そうタイヨウは思いしばらくの間、ツクモとウロの言い争いを聞いていたのだった。

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