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血の契約

ツクモを落ち着かせるのにしばらく時間がかかった。

ウロと力を合わせて言いなだめようとしたが、返ってツクモの反感を買う結果になってしまったからだ。

ウロに協力を求めたのも悪かった。


「私よりウロの方が大事なんでしょ!?」


「それは当たり前のことでしょう、ツクモ様。私とツクモ様では一緒にいた時間が違うのですから」


などとツクモが訳の分からないことを言えば、ウロもさらに怒りを煽るようなことを言う始末。

タイヨウはほとほと困り果ててしまっていた。

そして次第に呆れ、怒りが爆発した。


「おい!お前らいい加減にしろ!くだらない言い争いが続くようなら俺はお前らを軽蔑す!」


そんなつもりは端からタイヨウになかったが、これ以上の喧嘩を見ていたくはなかった。

「「!?」」


効果は覿面(てきめん)だった。

2人ともショックだったようでビクリと体を震わせると、口を噤んで大人しくなる。


「ツクモ!何か言うことは!」


これはいい機会だと思い、タイヨウはツクモに詰め寄る。

名前を呼ばれたツクモはまたもビクリと体が反応しにゃあと間の抜けた返事をする。


「あの・・・ごめんなさい。見苦しい所を見せてしまって。ちょっと我を忘れていたわ。元山の主として恥ずかしいわ。反省します」


「よし、じゃあウロは!」


ウロもツクモと同様ビクリと体に電流が走り、コロンとひっくり返ってしまう。

こいつよくひっくり返るなと思いながらも、険しい顔を崩さずにウロを睨む。

居住まいを正したウロはキーキーと叫ぶ


「タイヨウ様申し訳ありませんでした!!ウロ様も申し訳ありませんでした!つい張り合ってしまいました。猛省いたします!!」


タイヨウは大きく頷き分かったと告げる。

まるでできの悪い子分を持つ親分みたいだなと思いながらも、2人のために演技を続ける。

「2人とも仲良くして欲しい。ツクモはここで初めてできた仲間だ。ウロはここに連れてきてくれた恩人だ。そんな2人が喧嘩をする姿を俺は見たくないんだ」


本心だった。


「「もう怒ってない?」いませんか?」


ツクモもウロも相当ショックだったようで、口を合わせて確認を取る。


「もう怒ってないよ、仲良く協力していこう」


場がまとまった。


「それで契約ってどうしたらいいんだ?」


なかなか話が先に進まないなと内心思いつつツクモに質問する。


「そうね、契約と言っても大したことじゃないの。要は私とあなたの絆をより強固なものにすればいいだけなの」


ツクモは先程の暴走が余程恥ずかしかったのか2本足で立ったまま、両前足で顔を隠しながら話す。

こちらは見ていない。

その仕草は流石に可愛く見えてしまい、ついつい口元が緩みそうになったが、また話が脱線してしまうので、タイヨウは必死で耐えた。


「絆をより強固にって例えば?」


「う~ん、あなたがウロにしたように【名前を与える】って言うことも一つの例なのだけど、私はツクモって名前があるから・・・・・手っ取り早くするなら・・・あなたの血をいただくことかしら」


「!!」


気まぐれでウロと名付けたことが絆を強くすることだと告げられて驚いた。

が血をいただくというセリフにもっと驚いた。


「冗談半分で聞くけど、お前は吸血鬼じゃないよな?」


「もちろん違うわよ。だから、あなたが吸血鬼になる心配はないわよ」


そろそろと前足を下げ、チラリとこちらを盗み見るように答える。

本人は羞恥でやっていることだろうが、いちいち可愛くて集中していないと話が頭に入ってこない。


「さっき言ったけど【慈しんで与える】という行為が大切なの。それは角砂糖などの物じゃなくてもいいの。名前でもね。そしてより絆を強固にするためにはあなたの身近な物であればあるほど、効果があるわ」


「【手放したくない】って気持ちと【それを差し出す】って気持ちが大事ってことか?」

タイヨウは高校受験前に神社の賽銭箱に500円を入れた時のことを思い出していた。

あの500円の出費はタイヨウの中で大きな出来事そして記憶されていた。


「あなたって妙に鋭いのね。その通りよ」


驚き関心した風にツクモは言う。

その拍子に前足を下ろしていた。

タイヨウはちょっと残念に思った。


「・・どのくらいの量が必要なんだ?」


「心配しなくても大丈夫よ。ひと舐めで十分よ」


何でもないように白猫は呟く。


「お、おう。それは安心したよ。」


「それじゃあ、都合よく足を怪我しているのだからそこからいただこうかしら」


ツクモはのそりと立ち上がるとタイヨウに歩いてくる。


「え、足の傷口をペロペロするのか!?直接!?」


タイヨウは体育座りの姿勢から、ザッと足で蹴ってツクモと距離をとる。


「?、私と契約するのが嫌なの?」


「いや、そうじゃないけど。なんか元山の主に足の血を舐めさせるって罰が当たりそうでさ。指ですくうからそれを舐めたらいいよ」


苦笑い気味にタイヨウはさらにジリジリと距離をとる。

自分の発言も相当に変だと自覚していた。


「わざわざ手を汚すよる必要はないわよ。私は気にしないもの」


ツクモもテチテチと距離を詰めてくる。

本当に気にしていないらしく、表情も真面目だ。


「いやいや、なんというか俺が気にするよ。大切な仲間になんか申し訳ないよ。指を鎌で切るからそこから舐めなよ」


ドンと勢いよく壁にぶつかりこれ以上下がることができない。

足の血を舐めさせるなんて色んな意味で刺激が強い過ぎる気がした。


「・・・・・タイヨウ」


ツクモは顔を下げて少し震えている。

あれ、ひょっとしたら分かってもらえたのかな?とタイヨウは思った。

それは間違いだった。


「こんな落ちぶれた私のことを敬ってくれるのね!!でもそれ以上傷を作るのはおすすめしないわ!あなた見るからにもう空腹と飢えで限界だもの!」


(いや、そんなつもりじゃないんだけど!・・・あれ・・・そう言えば俺ずっと喉が乾いてたんだっけ・・・)


タイヨウは忘れていた飢えを思い出した。


「・・そんなの・・関係・・・ない・・だろ・・。俺は・・・舐められ・・・たく・・な・・い」


意識してしまったせいなのか、それとも限界だったのか、急に力が抜けて意識が朦朧とする。


「時間もないからね。それじゃ・・・いただきます」


ツクモはグッと身を低くする。

まるでネズミに襲いかかる直前の姿勢だ。


(やめろ~~~~~)


霞む目で声にならない悲鳴を上げる・

タイヨウが最後に目にした光景。

それはツクモがジャンプしてこちらに向かってくる映像だった。

妙にスローモーションで迫りくるツクモの表情は何故か嬉しそうに見えた。

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