ウィルゴ その4
打ち切りにするとかいってましたが結局続きます
ジョンがポイントに着き、狙撃のための準備を始める。相手は年端もいかぬ少年だが、一方的だった戦争を簡単にひっくり返したような人物、念には念を入れて準備する。日の光が差し込まないような薄暗い場所なのでスコープが太陽を反射しないような仕込みをしなくてもよく、さらに茂みなど隠れる場所が豊富なため多少手を抜いて時間を短縮することができた。銃口を標的が出てくるであろう予想ポイントに向ける、予想対象距離約200m。
準備のできたジョンはクロードにハンドサインで合図を送る、始終を見ていたクロードはそれを確認し、ジョンから手渡されていた手榴弾のピンを抜き遠くへと投げる。少ししてから爆発音が響き、その音にびっくりした鳥達が一斉に飛び立つ。
しばらくしてから轟音とともに上空から二つの人影が降りてくる。それは大きな音と衝撃とともに地面に着地した、いわゆるヒーロー着地というもので。無駄に装飾された剣、露出度の高い鎧、先日見た二人組だった。
「生きてやがったのか・・・クソエルフ・・・っ!」
男の方が顔を怒りに歪ませながらクロードを睨みつける
「すまないが悪運は強い方でね」
腰から短剣を取り出し構え、クロードは答える
「じゃあ今度は確実に殺してやるよぉ!」
男が剣を取り出しクロードへと向かおうとする、その後ろにいた女も男に続くように武器の剣を取り出し向かおうとするがその瞬間、放たれた弾丸が女の頭にヒットする。弾丸を食らった女の頭部は原型もないほどに粉砕され地面に崩れていく。それに気をとられて男の方は後ろを振り返ってしまう、その晒した隙を逃すことなくもう1発の弾丸が男の胴体を襲う。たとえ腹部とはいえTAC-50という対物ライフルから放たれた弾丸は男の体を粉砕、上半身と下半身が永遠に別れてしまった。
その光景を見ていたクロードは言葉を失ってしまった。そこに対物ライフルを背負ったジョンが寄ってくる
「ボルトアクション式を使ったのは久しぶりだったが、上手くいったな」
「・・・あんたの世界の武器はこれが標準なのか?」
「まさか」
そんな会話をしていると、ガサリという音が聞こえてくる。反射的に懐から拳銃を出し構えるジョン、音が聞こえたのは足元、よく見ると殺したと思った男がまだ生きていたのだ。しかし息をするのが精一杯といった様子で攻撃してきたりといった様子は一切ない。だが、その目は未だ闘志と憎しみを持って狙撃してきたジョンではなくクロードを睨みつけている
「くそ・・・、・・・エルフが・・・国を・・・腐らせ・・・るんだ・・・」
息も絶え絶えな様子の男にジョンは歩いて近づき頭に自分の拳銃、コルトガバメントを頭に突きつけ発砲する。発砲音がこだまし、周囲に静寂が訪れる。
「すまないがこれも仕事でな、許しは請わん、恨めよ」
事切れた男にジョンが語りかける、その後マリアに勇者のひとりウィルゴを殺したことを報告する。
〈・・・ええ、確かにウィルゴ、早乙女貫太の生体反応が消失しています。ありがとうございました。今後のプランは後ほどお伝えしますので今は疲れを癒してください〉
「了解した」
「・・・なああんた、誰と話しているんだ?」
「依頼人だ、気にするな」
会話の後にジョンは穴を二つ掘りそこに2人の遺体を入れて埋葬する、墓石の代わりにそれぞれが持っていた剣を十字架に見立てて突き立てる。
「何やってんだ?」
クロードが素朴な疑問をぶつける
「いや何、自分で殺したとはいえそこらへんに転がしとくのはな。せめて人間らしく墓にとでも思って」
最後に生えていた花を摘み取り添える。ふと男、もとい勇者が倒れていた所に目をやると1冊のメモ帳のようなものを見つける。興味本位でそれを見てみる。
「なあ・・・なに見てるんだ?あんた」
「ああ、なんてことはないこいつが見て来たものだ。どうやら国に従軍しているエルフたちが立場を利用し戦争孤児やらを集め残虐な行いをショーと称して楽しんでいたようだ。それをかつての自分の境遇と重ねてしまったらしいな。一緒にいた女はショーから助けられた唯一の人間だそうだ、言語能力を失ってしまったようだが」
「・・・・」
「戦争は人を狂わせる。こいつも、エルフも狂っただけさ」
クロードは複雑そうな顔を墓に向け拳を握る。そんな彼の肩をポンと叩きジョンは歩き出す
「悪いが里まで案内してくれ、お互い疲れただろ?」
「しばらくして〜」ってところから「ドクハク」を聴きながら読むとなんかそれっぽく感じると思います。
ヒーロー着地するところですね