ウィルゴ・その1
ポケモン楽しいです
稚拙な文章ですが見ていただけたら幸いです
男が気がつくと森の中に立っていた、例えるなら原生林の中のような場所で、神秘的なものさえ感じる。森の中は適度に光がさし、小鳥は歌い花は咲き乱れておりこの上なく平和である。
「・・・てっきり街のはずれにでもワープするのかと思ったが。しかし森の中とは・・・」
そんなことを呟いていると頭に先ほど聞いた声が響く。
〈聞こえていますか?私です、マリアンヌです〉
「・・・通信できるものが欲しいといったがまさかテレパシーとはな、これも魔法の類か?」
〈そうです。ちなみに話す時はあなたは念じるだけでいいですよ、こちらに向けられたものを勝手に拾います〉
「なるほど、傍受されなくて便利だな、だが俺に魔法をかけていいのか?任務に影響は出ないのか?」
〈魔法をかけられたくらいで魔力は体内に蓄積されません、たとえ魔力のこもった食材を食べても蓄積されないので大丈夫です。他人にあなたの武器を触られるのは致命的ですが〉
「なるほどな・・・それで・・・」
〈武器ですね、まずあなたの欲しがっていたスナイパーライフル「マクミランTAC-50」というものを用意しました。そして爆弾、手榴弾を5個とリモコン操作のクレイモア地雷を5個用意しました。続いて弾薬です、.50BMG弾を30発、あなたの持っているコルトガバメントの.45ACP弾を50発用意しました。それと銃のメンテナンス道具も用意しておきました、ショルダーホルスターはお持ちのようでしたので用意はしませんでしたが〉
「よく俺の使っている銃がわかったな、てっきりそう言うものには疎いと思っていた」
しかし目に見える範囲に武器のようなものはなく、代わりに森の中には似つかわしくない大きなギターケースが地面にポツンと置かれていた。
「あれの中に入っているんだろうがなぜギターケースなんだ?」
男が素朴な疑問をぶつける。
〈どうやらあなたは素性がバレるのが嫌なようなので、バレないよう私なりの配慮のつもりだったのですが〉
「・・・」
男の現在の服装は黒い中折れ帽に黒いスーツ、ビジネスシューズに黒いサングラスをかけている。生き返った時の服装ままなので当たり前ではあるがこの場所では違和感の塊である。
(それなら服の方にも配慮は欲しかったが)
〈それと標的の情報です、ウィルゴは勇者の中でも万能型といいますか突出したものはないもののそれゆえできることの幅が広いのが特徴です、現在はその森「原初の森」の北部に拠点を構えています、場所や情勢の詳細はわからないので十分注意してください〉
「なぜ場所の詳細はわからんのだ?」
「こちらの都合で大まかな情報しか入手できないのです」
「そうか、情報感謝する。ついでに頼みたいことがある」
男がギターケースを拾い上げながら言った
〈なんでしょう、可能な限り応えさせていただきます〉
「この任務の報酬、俺の会いたい奴が生きているか確認してくれ。おそらく生きているとは思うが」
〈わかりました、しかし疑問です。なぜその人に会うということだけで依頼を受けてくれたのです?〉
「・・・俺の妻を殺した奴だからだ」
〈・・・〉
「俺はそいつに復讐したい」
〈・・・そうですか〉
そんなやりとりをしていると突如周囲に殺気が満ちる
「早速お出ましか?」
姿は見えないが何者かが茂みの向こうにいる、そんな気配が漂う。
「ここは我らエルフ族の領域だ!場合によっては無事では済まさないぞ!」
若い男の声が森の中にこだまする。
(エルフか、正直ファンタジーすぎて夢ではないかと疑ってしまうな)
「おい!聞いているのか!所属と名前を言え!」
エルフの男の声だけが再び響く
「・・・名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀だと思うのだが」
男は皮肉を込めて答えながら服の内側に手を入れ、いつでも銃を抜けろ準備をした。
「侵入者に礼儀も何もあるか!早く答えろ!」
エルフの男はイライラしながら叫ぶ。
「名前は・・・ジョン・ドゥだ、頼むから警戒をといてくれないか」
(癖で偽名を使ってしまったがまあマイナスにはならないだろう)
相変わらず姿は見えないが何かを相談するような小さな声が聞こえる、おそらく男の処遇を決めているのだろう。しばらくして男の前に美男美女の4、5人の部隊が出てきた、皆目をみはるほどの外見だが耳は物語に出てくるように人間のそれとは大きくかけ離れている、いわゆるエルフ耳という奴だ。リーダーと思しきエルフが前に出て語りかける。
「ジョン・ドゥとやら、貴様の処遇が決まった。悪いが黙って返すわけにはいかない、貴様を捕縛させてもらう」
「正直殺されると思っていた。で、どこまで行くんだ?」
「我々の里だ、見たところ魔力も持ってないし危険は少なそうだからな。聞きたいこともたくさんある」
「それは大した歓迎だな」
「言っておくが変な真似をした瞬間貴様の首をはねるからな」
そうエルフの男が言いながらナイフをジョンの首元に当てる。
・・・
迷路のような森を長時間歩き里にたどり着いた。そしてなぜあそこまで部隊が苛立っていたのか理解した、エルフの里は爆弾でも爆発したのかと思うほどいたるところに穴が空いる、建物も一部崩れてる箇所もある。さらには怪我人も数人見受けられ、さながら紛争地域のような荒れ具合だった。突然の来訪者の噂はすでに広まっており、男を連れてきた部隊の雰囲気も手伝って里全体がピリピリとした空気に包まれていく。
「このまま族長の家まで行くぞ」
「・・・わかった」
族長の家まで行くと族長は家の外で待ち構えていた。見た目は妙齢の美しい女性だがその纏う雰囲気は抜き身のナイフのような鋭いものだ。
(族長というからにはどれほど歳のいった爺さんかと思ったら・・・)
「お待ちしておりました、ジョン・ドゥさま。私の名はエリューシア、ここの族長をさせてもらっております」
しかしその声はどこか無理をしているかのようなものだった。
「・・・どうして俺の名前を」
「伝令のものがおりますゆえ」
「迅速な情報伝達とは。優秀だな、その伝令役は」
「申し訳ないのですが私の家でしばし監禁させていただきます」
「それはいいがなぜあんたの家なんだ?」
「・・・比較的被害の少ない建物がここ以外にあまりないのです」
そうこう言う間にジョンは家の中へ通された、ここまで連れてきたエルフの男は他に任務があるらしく、家の前に警備の役のエルフをおきどこかへと向かって行った。族長の家の中はきっちりと整理整頓されており、作り込まれた装飾品が部屋の中を美しく演出している、壁には里を含めた原子の森の地図がかけられている、地図によるとどうやら里は森の中央に位置するようだ、座るように促され荷物を置き椅子に座る。
「それで、ジョン・ドゥさま、あなたはなぜここへ?」
「答えない、そう言ったら?」
ジョンがからかうように答えた。エリューシアから殺気が一瞬放たれた。
「私はあなたとお話がしたいのです、答えていただけないのなら・・・」
「悪いが仕事の都合上おいそれと話すわけにはいかない」
今度は真面目に答えた、相対するエリューシアの殺気が一段と強くなるのを肌で感じた。彼女はたった一言そうですかと呟く。彼女はお茶の用意がまだでしたねと一言いい席をはずす。その間にジョンは考える、エルフが勇者の味方かそうでないか、そして勇者の味方でない場合どうやって言いくるめ、こちらに有利につかせることができるか。
(この状況から考えればおそらくエルフは勇者と対立している、がこの「勇者と対立している」と思わせるこの状況そのものが勇者の「対暗殺者トラップ」の可能性もある。しかし・・・)
半ば賭けのようなものだが尋問のようなこの状況を打破できなければそれはそれで任務遂行の邪魔になる。
ジョンに選択肢はほぼないのも同然だった。
「お待たせいたしました」
そういいながら飲み物を持ってエリューシアは戻ってきた。
「粗茶ですが」
そう言って差し出されたお茶は見た目は紅茶のようで美味しそうな匂いを漂わせている。暖かそうに湯気を出すそれはこの状況でなければ飲んでしまいそうな不思議な色香を放っている。
(このタイミングの茶は露骨すぎるな)
ジョンは早々に勝負をつけるべく話を切り出した
「ところで、ずっと気になっていたことがあったんだ」
「なんでしょうか」
「俺があんたの部隊に拘束された場所からここはだいぶ離れていたんだ、なんであんなところまできてたんだ?」
「答える義理がありません」
無表情に事務的に彼女は答えた。
「それともう一つ、村の被害状況だ。なぜあそこまで荒れた?」
一つ一つ慎重に言葉を並べていく。
「ですから答える義理が・・・」
「おそらくどちらも勇者による影響だろう、違うか?」
「・・・」
「結論から言えば俺は勇者についてはいない、どちらが利益があるか考えればわかるだろう?」
エリューシアは男の言動を注意深く観察し、少し考えた後に喋り始めた
「私たちが勇者の仲間だとは思わなかったんですか?」
「そのセリフを言うってことはアンタがたは勇者の仲間じゃない」
なんとも言えない空気が流れる。
「及第点といったところでしょうか、あなたに一人見張りをつけますよろしいですね?」
彼女が微笑みながら言う
「それくらいなら安い、ただし俺の仕事の邪魔をしないやつを頼むぞ」
「・・・あなたの仕事とは?」
教えてくれないと見合った人材をつけれないぞと言う目で男をみる。
「・・・赤い花火を咲かせる仕事だ」
続く
何か変な場所があったらごめんなさい