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雪下の奇石とウロボロス  作者: 古城 京介
2/3

一話 目的

 

 辺り一面白亜の色に包み込まれ、常に氷点下の気候が続く銀世界が誕生したのが、シルヴァーの物語の始まりであった。


 魔物を駆逐するための人類最後の希望であり、魔法という奇跡の出来事を起こす「奇石」と呼ばれる石が、この世界には存在する。



 しかし、奇石は人類最後の希望であると同時に、惑星一つを真っ白に包み込んだ全ての元凶でもある。 


 この世界には奇石の力を自らの体内に取り込む

「変異種」と呼ばれる魔物が存在する。


 その変異種の中で、最も人類に恐れられた魔物が「ウロボロス」と呼ばれる「吸収」の奇石を取り込んだ魔物である。


 「吸収」の奇石は、その名の通り周囲にある全ての奇石を取り込む力を持っており、ウロボロスに戦いを挑めば、奇石を奪われ逆に殺されてしまうため、人類は手も足も出せなかった。


 いずれ、無限の奇石を取り込んでしまうのではないだろうか?と人類は思っていたが、悪循環は止まること続いていく。


 ある冬の時期を境に、世界の季節が変わらなくなった。


 日に日に気温が下がり、世界は真っ白な雪で包まれていく。


 凍てつく吹雪きの中で、動植物は大量に絶滅し、人類はさらなる危機を向かえる。


 止まることを知らず、永続的に続く冬の季節から、ウロボロスの新たな「奇石」だろうと、人類は確信する。


 人々は、その奇石を「永久凍土」の奇石と呼んだ。


 これが銀世界が誕生した理由である。


 シルヴァーの目的の「一つ」はこのウロボロスを討伐するための奇石を集めることだが、避けてはならぬもう一つの目的がある。


 シルヴァーは過去の記憶を遡る。



 ーーシルヴァーには一人の肉親である父親がいた。


 名前はゲーグリフという。シルヴァーと同じ白銀の瞳に、首もとまで伸びた銀髪と背に背負う奇石の大剣が特徴的な男だ。


 人類がウロボロスの絶対の力に恐れをなしている間、ゲーグリフは常に雪下のもとで魔物と戦い続ける「表向きは」勇敢な男だった。



 ゲーグリフの強さと人徳に魅せられた者達は、彼と共に戦い続け、魔物を次々と駆逐していった。



 もちろん、シルヴァーもその一人であった。


 しかし、ある日を境にシルヴァーはゲーグリフと決別することになる。


 普段より、激しい吹雪きが吹いていた日、シルヴァーはゲーグリフの目的を聞かされていた。



 「なぁ、シルヴァー。俺は今、このつまらない世界から脱却するために、とある組織を作っているんだ。」


 シルヴァーがいつも通り雪山の外れにある修練場で剣の稽古をしていると、唐突にゲーグリフが話を持ちかけてきた。  


 「……組織?」


 シルヴァーが短く聞き返す。


 「ああ。ウロボロスを討伐できるほどの強力な奇石を集め、その力で魔物と人間の両方を支配し、俺の理想的な世界を創世する組織さ。」


 この男は何を言っているのだろう?


 「……話はわかった。……だが、なぜ同じ人間を支配する必要があるのかが、わからん。」


 シルヴァーは当然の疑問を聞く。


 「シルヴァー。お前は視野が狭いんだよ。

ウロボロスを倒して人類に平和が戻ってほしいだ?ハハハッ、俺はそんなつまらない平和なんかいらねぇんだよ!真の革命者はな、ウロボロスを倒したその先のことまで考えなくちゃならんのさ。」


 この男は狂っている。


 表向きは世界のために戦い、努力する救世主のような存在だったが、それらは全て、この男の自己満足だったのだ。



 「だから、俺と共に来いシルヴァー。共に世界の頂きに立とうじゃないか。」


 ゲーグリフがシルヴァーに手を差し伸べる。


 しかし、シルヴァーはその手振り払った。


 「……生憎、そんな下らない話に協力する気はない。お前が世界を支配しようと言うのなら、いつか俺がお前を殺してやる。」


 シルヴァーが怒気と殺意を滲ませつつも、冷静にゲーグリフにいい放つ。


 「……そうか。残念だシルヴァー。ククク、だが面白くなってきたなぁ!」


 ゲーグリフが狂ったように吠える。


 「いいだろう。殺せるものなら、殺してみろよ。俺の組織「ガルゲイン」とテメェと魔物共の頂上決戦といこうぜ!ククク、その方が面白ぇしなぁ。」


 

 ーーそれがシルヴァーの旅の始まりであった。


 今は傭兵として魔物を駆除し、鍛練に励んでいたが、そろそろ本格的に旅を再び始める頃だろうーー。

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