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セミといっしょ♪

思い付いたので第二話です。


それではまたー♪

  セミといっしょ♪



 オレはセミだ。しかもヒグラシだ。卵からかえって数年、この汚い住宅のトイレの真横に植わっている木の根っこにかじりつきながら、これまで樹液を吸って生きてきた。


「しかしこの根っこトイレもそばにある所為か、妙に樹液が臭う。うつ、くっさ!臭くて飲めんわ!くっさ!なんだこれ!」


 生まれたばかりの頃は味覚も未発達で思考も喰う寝るあs…。土の中じゃ遊べないから寝て喰ってばかりだったけど、ここまで大きくなってくると、もうトイレの激臭とクソ味に耐え切れなくなってきた。ちきしょうめ!


 だが、だがあと少しの辛抱だ。 今夜オレはこのくっさい木に登り羽化をしてもっといい木に取り付いてやる。そしてイイ(めす)見つけてセ〇クス三昧の毎日を送ってやるぜ!うっひょー♪


「君はそんな管みたいなのから毎日汁ばかり吸って大変だね。おいしいかいそれ?」

「いや、全然うまくないよ、なんせ臭くってな。なんなら一口どうだい?羽がある黒い虫さんよ」


 くそ、また現れたな自由な奴め! コイツには俺が長年にもわたって手にすることが出来ず、やっと今夜手に入れることが出来る羽がとっくにあるだけじゃなくて、食い物が樹液だけのオレと違ってコイツはなんでも食べれる羨ましい奴だ。


「ああ、いらないよそんな臭いモノ。お金くれるって言ってもいらない」


 こ・い・つ・は!


 てか、虫なのになんで金⁈


「フフフ。別にかまわないさ!オレだって夜には羽化して成虫になって美味い樹液とメスまみれの生活を満喫できるんだからな。フフフフ♪」

「わあー…。どんだけ欲求不満がたまってんだぁ…」

 

 うん、しかし何やら身体がムズムズしてきたな。ま・さ・か!


「おい、そこの平べったくて黒いの!今は何時だ?」

「何時って、お前虫だろ?何聞いてんだ」

「お前だってさっき金とか言ってたじゃねーか!」

「金は美味いんだよ!表面にこびりついた皮脂とかが!」


 どうでもいい言い合いをした挙句にコイツから教えてもらったのは、もう世間は夕方だという事だという事実だった。


「くそ!こうしちゃいられない、早く木に登らないと!」

 

 オレは臭い樹液ばかりがにじみ出て来る根っこから口を放して、一路地上を目指す。


「ちょっ!くっさい液がこっちにもかかるだろ、気を付けろよ!」


 そういって悪態をつくコイツに…。


「長い間、世話になったな♪」


 と言い残して、長年住み慣れたねぐらを後にする。


「おい、ちょ、待てよ!」

「なんだよ。オレは忙しいんだ」


 黒くて少しトゲトゲしい前足をオレの足の関節にかけ、コイツは待ったをかける。


「俺も一緒に行くぜ!友達だろ?」


 奴の(あご)がキラッと黒く光る。


「お、お前…」

「おまえの新たな旅立ちを見守らせてくれよ。そして羽化したら、一緒に大空を羽ばたこうぜ!」

「あ、ああ…。ありがとうな」

「いいってことさ♪」


 くそ!ちょっとウルっと来ちまったじゃねーか


 そうして肩を組んだオレたちは、木の一番てっぺんを目指して地上に出る。


 なんでてっぺんを目指すかって?そりゃ男ならてっぺんを目指すものだからさ!


「なんだって外ってやつはこんなに明るいんだ!」

「へへ、月明かりくらいで音を上げてたら、明日になったら明るすぎて死ぬんじゃないか?」

「ぬかしやがれ!」


 ガサガサ


「くっ!人間が(あらわ)れやがった!」

「にんげん?」

「ああ、俺たちの天敵だ!ジッとしてろ、見つかったらやられるぞ!」

「なっ!」


 絶句するオレをよそに、コイツは息をひそめ身動きしなくなった。オレもこんなところで死んでは堪らないと、一緒に息をひそめる事にする。


 じょぼぼぼぼ。


「なんてこった、あの人間め。こんなところでおしっこしやがった」

「おしっこ?」

「ああ、見ろよあの量を、まるで滝みたいだぜ」


 確かにオレからしたらありえない位に巨大な生物である人間とやらは、トンデモナイ勢いで物凄いおしっこをしてやがる。


 しかも臭い。ん?


「どうもここいらが臭い臭いと思っていたら、あいつの仕業だったのか」

「なに⁈という事はココはアレのトイレだっていうのか」


 くそ!おれの木が臭かった理由がわかったぜ。全てアイツの仕業ってわけか。


「んん? おまえ何言ってんだ?これ木なんじゃないぞ?」

「あ?」


 何言ってんだお前は…。


「今、俺たちが必至こいて登っているコイツは木じゃなくて電信柱ってものなんだぜ?」

「えっ?だってお前、根っこだってあるし…」

「ああ、アレか。お前がいつも吸い付いてたアレは朽ちた針金ってやつさ。悪いとは思ったんだがお前が毎日アレをチューチューやってたから言い出しにくかったんだ。すまないな」


 な・ん・だ・と。


「という事はナニか、オレは樹液だと思って何年も吸ってたアレは、人間の小便だったとでも云うのか⁈」

「まあそうなるな。恨むんだったら電信柱を樹木だと思って卵を産み付けた、お前の母ちゃんにでも云うんだな」


 おふくろぉォオオオ!!


「ちょ、おま、暴れんなって!バレちまうだろ!」


 ガサゴソ。


『おっ!ゴキブリ』


 しゅーーーーーーーっ!!


「ぐぁあ!!」

「がはぁアア!!」


『父ちゃん!こんなところで何やってんだよ!』

『なにってお前、ゴキブリ退治だよ』


 ぼろすぎる家から現れた小さな人間は、小便をしていた大きな人間に話しかける。


『嘘ばっかり!いくらうちのトイレが近所の公園だからって、こんな隣の電柱でおしっこしなくてもいいだろ?』

『バカ言え、いくらパパでもそんなことする訳ないじゃないか。ははははっは♪』


 なにやら行動がぎこちない大きな人間が、ここでおしっこをしたことを誤魔化しているようだ。


『あんた!またこんなところで小便して、何度止めろと言ったらわかるんだい!』

『いえ、ちょっと一寸の虫にも五分の魂がある事を実践で教えていただけ…あだだだだだ!!』

『嘘ばっかり。一匹はゴキブリだけど、もう一匹はセミの幼虫じゃないか。この無駄飯喰いの虫殺し』


 オレは薄れゆく意識の中で、股間の短い管を引っ張られ引きずられていく大きな人間と、それをバカにしている小さな人間の後姿を見ながら息絶えた。


『父ちゃんのとれたよー』


 という、どうでもいい声を聴きながら。


ここまで頭の悪い話を読んでいただいて誠にありがとうございます。


では、また♪

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