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4/5

惜しいだけだ!


■導入部分はラノベであれ。


 各論の最後は、導入部分についてです。

 導入部分は、ここでは長編のはじめ、1・2話辺りのことを指します。

 プロローグにしている方も多いのではないでしょうか。


 ちなみに、このプロローグも意味深ワードのオンパレードで、読者が置き去りになってしまっている作品も多く見られます。

 やりたくなるのは分かるんですけど、それを読んでも読者は基本的に楽しくないです。


 ちなみによくあるプロローグの失敗例は、


・読者が知らない人同士の戦闘シーン

・唐突な設定の羅列

・主人公の長々とした独白


なんかがあります。

 そんな作品の中には、書いている人が豊富な語彙力と高い描写力をお持ちだということがよく伝わってくるものがあります。

 が、読者が求めているのは語彙力でも描写力でもなく、エピソードです。


 どんな話か分からない状況で重厚な描写を読み込むのは。なかなか集中力のいることです。

 まずは話を展開しましょう。



 例えば失敗例のうち、戦闘シーンでは「ド迫力でスゴい敵と戦っているみたいだけど何の話をしているか分からない」ことがあったり、設定の羅列は「で、それが何なの?」と言う気持ちになったりします。


 何の役に立つのか分からない知識ほど、読むのが苦痛なものはありません、

 例えるなら、「三角関数が何の役に立つんだ!」と高校生が憤るのと同じことです。

 話が進んだときに振り返た時に、それがいかに大切かが分かっても、最初はその重要性が分からずに、いやになった経験はありませんか?

 設定を羅列しているあなたは、それを読者に押し付けているのです。


 主人公の独白も似たようなものです。

 それらは多くが、明るい内容ではありません(僕もやったことがあります……)。

 あなたは知らない人がいきなり延々と、それも低いテンションで自己紹介してきたら「え、何この人怖い……」と思い、距離をおこうとしたくなりませんか?

 読者から見て近づきたくないキャラクターは、主人公失格です。

 読者は彼、または彼女の物語を追おうとはしないでしょう。


 書く側からすれば、この独白が後に主人公の行動の動機付けになることを狙っているのかもしれません。

 ですが、そうでもしないと説明できない動機付けは掴みとして弱く、また読者も共感しにくいです。

 ふらっとやって来た読者に、そんなにヘヴィな感情への共感を求めるのは酷ってもんです。

 まずは話を動かしましょう、さもなくば読者が逃げます。


「そうは言うけどさ、どうすればいいわけ?」


 簡単です。

 簡素な言葉でテンポ良く、かつコミカルにストーリーを描けばいいのです。

 ポテンシャルのある作者は、会話も楽しく書けます。

 これを冒頭でやりましょう。


 楽しそうな会話をしている部屋と、誰がいるのかも何が起きているかも分からない部屋、あなたが入って生きたいのはどちらですか?



「でも、俺が書きたいものはもっと別にあるんだよ! 重厚な戦闘シーンとか、緻密な設定とか!」


 ええ、ええ。わかりますよ。

 ですがそれは、ふらっと来た読者には重くないですか?

 あなたが「絶対美味しいから!」と言われて、何か良く分からない食材をドカッと出されたら、買いますか?

 まずは試食させてくれ、そう思わないでしょうか。


 タイトルとあらすじが看板なら、導入は試食です。

 「この作品は楽しいよ」「読んでいたらいいことあるよ」ということを、読者に知らしめる場なのです。

 あなたの腕によりをかけたメインディッシュを振舞う場ではありません。

 あなたが本当に書きたいメインディッシュは、ストーリーが進むにつれて少しずつ混ぜ込んでいきましょう。



 これは一般論ですが、人は自分の費やした時間や費用が大きければ大きいほど、それを心理的に捨てにくくなります。

 UFOキャッチャーやソーシャルゲームのガチャ、あるいは駅前の脱法ギャンブルなんかはこの心理を良く利用していて、一度足を踏み入れたら最後、成果が出るまでなかなか抜け出せません。


 わたしたち書く側の人間も、これを利用しましょう。

 読者に「ここまで読んだんだから、もう少し読んでみよう」と思わせられれば勝ちです。


 逆に、時間やお金など、何も費やしていない「はじめまして」の状態では、人はいとも簡単に見切りをつけます。

 それはあなたの作品も例外ではありません。

 あなたにとっては唯一無二の力作かもしれませんが、読む側には数あるうちの一作に過ぎないからです。


 もう一度言います。

 あなたの書きたいことはあとに取っておいて、まずは楽しげな当たり障りの無い内容で読者を引き込みましょう。

 話が進めば、あなたが書きたいものがどんなドギツイことであっても、意外と読者は離れていきません。


 しかし最初で読者が離れていけば、あなたの持ち味を出すことは永久に出来ません。

 持ち味を出せなければ、人気が出ることもありません。

 とにかく、まずはあらすじを整備して、次に導入をライトに綴り、そしてクライマックスを重厚に仕上げる。

 これが目指すべきカタチです。



 言葉は悪いですが、あなたの作品は現時点では「あらすじとタイトルで読者は呼び込みにくいし、残った読者も冒頭で帰っていく」というのが実際のところではないでしょうか。

 これではいくらウリがあっても、そこまで読者はたどり着けません。

 もったいないです。

 出す順番を考えましょう。

 才能溢れるあなたなら、それができるはずです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「うんうん、ふむふむ」と思いながら読ませていただきました。 冒頭って確かに一つの勝負所であり、同時に難しい所でもあるんですよね。 私も、冒頭は特に何度も推敲します。 しかしその度に「うー…
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