第五話 会話
遅くなってすいません
「うまい」
味がする、味がするのだ。
ここ数年間味のする食事をとってなかった。
だからだろうかとてつもなく薄い味なのにとても美味しく感じられた。
いやそんなことよりもただ味する食事と言うだけで自分の声が出たことに驚いた。
(声なんていつぶりに出しただろうか。)
出会って一週間初めて言った言葉が「うまい」だなんてなんとも間抜けな話だがそんなことよりもティアがどんな顔をしているのかが気になり顔を上げる。
ティアの顔は驚いたような唖然とした表情をしていた。
でもすぐに気を取り直しこの期を逃しまいと話かけてきた。
「えっと、ああなたのご飯だけ味がなかったから」
(当たり前だ、俺の食事は栄養源を最大限取れるように作られている。いわば薬のようなものだ味なんてする方が怖いな。)
「だから、私のと交換したの。」
(!!)
驚いた、何故こんなことをするのか理解できない。それに交換したと言うことはあれを食べたことになる。
「よくあんなもの毎日食べれるわね。」
大人びた口調で困った顔の笑顔で言う。
が、続けて真剣な表情で質問をしてきた。
「何故ずっと黙っていたの?」
「・・・・」
「何故。」
今度はとても強い口調で言うそれはまるで子どもを叱りつける母親のように。
「ハァー」
深くため息をつく。
「関わりたくなかった」
「どうして?」
こうなっては全部言ってしまった方が楽そうだ。
「いづれ死ぬはずの人間と関わろうとする奴なんていないだろう。仮に関わったところでむなしくなるだけた。特にここではな。」
「死ぬはず?」
ティアは意味がわからない様子である。
(わからないなら教えてやる。)
落ち着いた声で圧し殺していた感情を吐き出すように語る。
「ティア・ライト・クローバー、君がここに来たのが最初だとでも思ったか。ここは常に魔力を奪われる部屋だ。大人でも一週間持たない。子供なら尚更だ。しかもそれは俺の中では日常になってしまつている。これなら関わろうしないのもうなずけるだろう。言ってしまえば大人でも持たない一週間を生きていられる君が異常なんだ。」
そうだこれはただの八つ当たりだ。
(最低だな)
自分への自己嫌悪が増えた。
そんなことを思いつつティアの表情を確認する。
真剣な表情だった。
そのまま口を開く。
「あなたは、それで私と口を聞いてくれなかったんですね。でもそれ私には関係ないと思うのだけど。」
「な!!」
少し怒りを覚えた。
ティアは話を続ける。
「それと私がここで死なないのは多分私がどっかその辺天才魔道士よりも魔力量が多いからだと思うけど。」
考えるまでもないかのように平然と言ってのけた。
ただそんなことは百も承知だ俺が異常だと言っているのはその魔力量だ。
「あなたいつからここにいるのかは知らないけれどもしかしたら聞いたことぐらいあるかも英雄の一人【黒炎の魔女】シア・ライト・クローバー、私はその娘なの。理解しました?」
愕然とする、知らない訳がないここにくる少し前に確かにこの目で見たのだから。
更にティアは追撃をかけるかのように言う。
「そもそも私からしたらこの部屋で何年も過ごしているあなたの方が異常だと思うのだけど。」
(!!)
思わす顔に出る。
「どうしたの?」
(こいつ・・・まぁ確かに自分のことを差し置いてティアのことは、言えないな)
「フッ、いや何でもない。」
「ねぇ、今笑った?」
「気のせいだ。」
「本当に。」
「勘弁してくれ。」
「そう。」
心なしか・・・・いやとても嬉しそうな表情をしていた。